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26.旅路-3

 翌日、街を発ってから早6日目だ。

 朝食を摂り出発したのが数時間前といったところだが、問題が発生してしまったのだ。


「さっきもここ通らなかった? お兄ちゃんたち」

「いや、進んでいるのだからよく似ているだけだろ」

「僕もあの岩とか見覚えがあるんですが…」

 合っているのか、それとも迷っているのかよく分からない状況に陥っている。

 

「次の目印まではこのルートで合っているはずだ、進むぞ」

 木の葉の陰から除く太陽の位置を基準に、地図と睨めっこをするダイモンさん。

 僕たちはダイモンさんの指示に従い歩みを進める。



「あれ? また同じような所に出たよ」

 霞の疑問も尤もだ、どう見ても先程通った場所だよね。

「やっぱりおかしいですよ、ダイモンさん」

「しかしなあ、偶然似ているだけかもしれんぞ」

「では、こうして目印を設けておきましょう」

 僕は近くの木の枝を折って地面に突き立てた。


 そうしてまたしばらく進むと再び同じような場所に出るのだが目印は無い、折った枝の生えている木も見当たらない。

「さっき立てた枝が無いな、よく似た地形なのだろう」

「絶対おかしいって、お兄ちゃん」

「でも、目印を作ったのに何もないんだよね」

 同じ場所だとは思うのだけど、本当に目印が無い。枝を折った木も見当たらないのだ。


「一先ず休憩だ、昼食にしよう」

 ダイモンさんの掛け声で昼食と摂りながら話し合うことにする。

「飽きてきたね、このご飯」

「わがまま言うなよ、食べられるだけでも十分なんだから」

「そう言うなアキラ、このパンは飽きるぞ普通」

 僕だって実は飽きているんだ、この定番3点セットにはね。


「ところで、今はどの辺りなのですか?」

「ちょっと待て、地図だとこの辺りだな。このまま進めば、今日中に次の目的地である大岩に辿り着けるはずだ。

 この大岩に関して結構な大きさだという話だからな、見失うこともあるまい」

 ダイモンさんが地図を広げ、大まかな現在地と進行するルートを示してくれた。

「じゃあ、大きな岩を見付ければ良いんだね」

「そういうことだ、大丈夫だとは思うが周囲に気を配っていてくれ。それじゃあ出発しよう」

 昼食を終え片付けを済ませると、もう一度目印を作ってから出発することにした。



 またしても同じような場所に出た、決して同じではないのだが非常によく似ている。

「さっきの場所とよく似ているけど、生えている木が異なりますね」

 微妙に違和感があるという感じだろうか。

「どうなっているんだ、この森は? 同じような景色ばかりというのは…」

「なんか気持ち悪いね」

 3人とも何だかよく分からないが気持ちは同じようだ。

「時間が勿体ない、暗くなる前に大岩を見付けてしまおう。行くぞ」

「そうですね、行きましょう」

 その後は同じような場所に出ることは無かった。しかし今度は大岩が見付からない、辺りはもう夕暮れでかなり暗くなってきている。



「どういうことだ、大岩は見落とすようなものでは無いと聞いているのだぞ」

 ダイモンさんは若干だが苛立っているように見える。

「もう日が暮れちゃうよ」

「仕方ない、今日はこの辺りで野営しよう。準備を頼む」

「わかりました」

 僕はテントの設営、霞は焚火の管理、ダイモンさんは調理といつもの分担作業に入った。

 食事中はもう無言だった、食べ飽きた3点セットにこの状況なので明るく会話できる余裕がない。

 食事を終え見張りの順番が来るまで一眠りする、数時間後霞に起こされ交代した。


 今夜は誰を呼ぶかなのだが、選択肢は少ない。森の中なので顕現がド派手なイフリータとジルヴェストは呼べない、大事になってしまう。

 比較的大人しい顕現のシュケーに登場願う、3点セットに飽きた僕にデザートの誘惑は強すぎた。

「シュケー来てくれるかい?」 『は~い』

 木の成長を見守る早送りの映像のように顕現するシュケー。

『はいコレ、食べて』 「ありがとう」

 前回と同じように自身の木に実る無花果を渡された。

「シュケー、この森おかしいところはないかな?」

 昼間に起きた理解不能な状況を、木の精霊であるシュケーに尋ねてみる。

『う~~ん、何もないよ』

 何かを探るような素振りをしたが、すぐに否定の言葉が返ってきた。

「そうか、ありがとう。このまま周囲の警戒を頼むよ」 『はーい』

 シュケーが何もないと言うなら、やはり気のせいなのだろうか? 交代する時にでもダイモンさんに報告しておこう。

 無花果を貪りながら、焚火に薪をくべる。手がべとべとだ、洗いたいけど水は貴重だしな、オンディーヌに頼むかな。

『あるじ~、水出してあげる』

「シュケー水も出せるのか? 助かるよ」

 木の枝を一本伸ばしてくる、その先からチョロチョロと水が滴った。このくらいでも十分だな。

「ありがとう綺麗になったよ、それにしても器用だね」 『んふふ』

 土の中から汲み上げたのかな?

 それからはしばらく考え事に浸った。昼間のこともそうだが、明日はまともに進めるのだろうかと。


「そろそろ交代だろう」

 没頭していて気付かなかった、ダイモンさんが交代に来てくれたのだ。

「ああ、はい。それでこの子に訊いたのですが、森には問題は無いようです」

「…そうか、明日はまず大岩を探そう。でないと現在地が把握出来んし、進行するルートが分からないからな」

「わかりました。それでは、おやすみなさい。シュケーもありがとう、戻っていいよ」

 顕現時の逆再生のようにシュケーは土の中に帰って行った、僕も報告が済んだので眠ることにした。


 翌朝は朝食を摂った後、予定通りに大岩の探索に入ることにした。しかし、昼時を過ぎても大岩を発見することは出来なかった。


「これは参ったな。どうやら遭難したらしいぞ、二人とも」

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