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22.旅の支度

 旅の支度はダイモンさんに付き添う形で着々と進んだ。

 道具屋では薬をある程度揃え、水を入れる革袋、ロープ、寝袋やテントも購入した。これらは大きく嵩張るのでダイモンさんのリュックへ収めた。

 次に向かったのは食料品を扱う商店街だ。日持ちの良さそうな芋や小麦粉、硬めのパン等を少し多めに購入し僕のリュックに収めた。

 道中の地図や本部への書状は当日に手渡されるのだと、ダイモンさんは教えてくれた。


「こんなものだな、水は明日の朝に汲むとしよう。それと朝食はしっかりと摂っておけよ」

「魔王都への向かう馬車とかは無いのですか?」

「周囲の町を巡るものはあるのだが、急ぎということでな今回は直行する為馬車は無しだ」

 霞がホッとした表情をしている、酔うからな。

「そうすると徒歩で向かうということですか?」

「そうだ、一応ギルドの方で馬を一頭用立ててくれるそうだから、荷物に関しては大丈夫だろう」

 食料多めに買ったもんな。

「本部の都合にもよるがどの程度拘束されるのか分からんからな、ちゃんと挨拶廻りはしておけよ」

「わかりました。それでは今日はこれで失礼します」

 僕たちはダイモンさんに礼をして家路を急ぐ、荷物を置いて挨拶に向かおう。


「霞、デニス爺とリエルザ様、どっち先に行こうか?」

「リエルザ様の方かな、お昼ご飯食べられるかもしれないよ」

 おい、目的がすり替わってるだろ。

「いつもメーシェさんに怒られるって言うくせに」

「あそこのご飯、美味しいんだもん」

 うーん、どうしたものか?

 メーシェさんにお昼は外で食べると伝えてから、リグさん宅を出発した。



 先程も来た商店街を通り抜ける、美味しそうな匂いがする。露店で肉を焼いているのだ。

「我慢しなさい、もし領主館で食いっぱぐれたら露店でご飯だからね」

 僕もこの匂いは堪らない、早く通り過ぎよう。

 領主館の入り口に辿り着き、門衛の兵士さんに要件を伝えた。待っていると執事さんがやって来て案内してくれるという、何度か訪れているので慣れたものだ。

 執事さんは執務室の扉を開け、中に入れてくれた。相変わらず執事さんは用件を伝えたりしないんだね。


「おお、お前たち今日はどうしたのだ?」

「明日この街を発つことになりましたので、ご挨拶にと伺いました」

「なっなんだと!どういうことだ?」

 あれ~伝わって無いの?

「えーと、冒険者ギルド本部より召喚状が届いたそうで、ダイモンさんと共に明日魔王都へ向かうことになっています」

「そうか、急な話だな。ギネスが阻止できなかった事態なのだな…」

「そのように伺っています」

「致し方ないな。気を付けて向かうが良い、明日は見送りに行こう」

 執事さんが何やらリエルザ様に耳打ちをしている。

「そろそろ昼時だ、ここに食事を用意させる。一緒に食事にしようではないか」

 良かったな霞、執事さんにお礼を言わないといけないぞ。

「リエルザ様、執事さんも気を使っていただいて、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

 短いが霞も礼をした、リエルザ様は気にするなと手を振り、執事さんは首を振っている。

 相も変わらず、ここのご飯は旨い!餞別には最高だった。

 食後、軽く話をした僕たちは礼を述べてから領主館を辞した。


「次はデニス爺のところだね、霞まだ何か食べたいのか?」

「いい匂いがするから」

「さっさと行くぞ、後で焼き菓子でも買ってあげるからね」

「うん、行こう」

 現金な奴である。



 デニス爺の魔法具店に到着した。店先には誰も居ない、中を覗いても居ない、どこに居る? どこにいった?

「お爺ちゃ~ん、どこ~?」

「なんじゃあ?」

 上から聞こえた、外に出て屋根を見上げるとデニス爺が載っていた。

「何しているんです、危ないですよ?」

「雨漏りの修理じゃ、その梯子を起こしてくれ降りられんで困っておった」

 道に沿うように倒れている梯子を屋根に立て掛けた。

「おぅすまんの、今日は何の用じゃ?」

「明日街を発つので挨拶にきました」

「ぬあにー!そういうことは早く言わんか」

「昨日決まったんですよ」

「なんと!ならば仕方あるまい。それを貸せ二人ともメンテナンスじゃ」

 デニス爺はお皿を二枚受け取ると検め始めた。


「それで、どこに行くのじゃ?」

「魔王都です」

「それはええ話じゃな、くっくっくっ」

 何かまた企んでいるな、笑い方が変だ。

「よしこんなもんじゃろ、宣伝してきてくれよ」

「ああ、やっぱり」

「当り前じゃ、存分に頼むぞい。明日は朝一に発つのか?」

 全く仕方がないな、これを持っている限り付き纏う話だし細々と宣伝しよう。

「恐らくは」

「年寄りは朝が早いでな、見送りにいってやるわい」

「無理しなくてもいいんですよ」

「無理などせんわ、気を付けて行くといい」

 嫌いになれない爺さんだよ、本当に。

「明日、一応待ってますよ」

「お爺ちゃん、また明日ね」

 僕とデニス爺は揃って悪人のように笑い、霞の挨拶で帰ることにした。


 最後になったがリグさん夫妻だ、リグさんが仕事から帰るのを待って話さないといけないな。

 この世界に来てからずっとお世話になりっ放しのご夫婦だ、きちんと挨拶しないとね。

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