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21.冒険者ギルドからの呼び出し

 カチコチ魔獣騒動から数日経ったある日、僕たちは休暇としてリグさん宅でゆったりと過ごしていた。

 僕が朝寝坊をして布団の中で微睡んでいると、メーシェさんが呼びに来た。なんでも冒険者ギルドからの呼び出しだそうだ。

 折角の休日が台無しなのだが、呼び出された以上行かねばなるまい。急ぎ着替えて食事をしにダイニングへと向かった。

「お兄ちゃん遅いよ、ご飯冷めちゃったよ」

「いいじゃないカスミちゃん、お兄ちゃんもたまには休ませてあげないとね」

 霞の諫言を窘めてくれるメーシェさん、優しいお母さんみたいだ。

「そういえば、どんな呼び出しなんだろうね」

「理由は聞いていないけど、早めにギルドへ顔を出してほしいという話よ」

「何か面白いことでもあったんだよ、お兄ちゃん」

「絶対面倒ごとだと、僕は思うぞ」

 呼び出しについて色々と話しながら、食事を終えた。


「それじゃあ行ってきます」

「いってきま~す」

「気を付けていってらっしゃい」

 メーシェさんに挨拶をして、リグさん宅を出た。


「お兄ちゃんは何だと思う?」

「なんだろうな」

 そんな膨れっ面しても、わからないものはわからないよ。

「お兄ちゃん、あの屋台みてもいい?」

 そんなくだらない話をしながら進むと、冒険者ギルドに辿り着いた。



「おはようございます、なんか呼び出しを受けたようなのですが?」

 ギルドに入った時に近くに居たミランダさんに尋ねてみる。

「あ~聞いてるわよ~、アニタさんのところに行ってみて~」

 僕たちの担当はアニタおばちゃんなので、当然といえば当然か。言われるまま、アニタおばちゃんの詰めるカウンターへやってきた。

 冒険者ギルドの中は比較的空いている、時間帯の問題があるのだろう。

「あら? 早かったじゃない、あなた達。ちょっと待ってね」

 アニタおばちゃんはカウンターを離れ右の壁の方に消えて行った。と思ったら酒場の方から声を掛けてきた。

「こっちにいらっしゃい、中に行くわよ。次からこういうことがある場合は、酒場の厨房を通って中にいらっしゃい」

 中って冒険者ギルドの中ってこと?鉄格子の中に入るのは、ちょっと怖いな。

「こっちよ、付いて来て」

 冒険者ギルのカウンターの中を横目に見つつ、僕たちは階段を上る。

「ここは職員と選ばれた冒険者しか入れないのよ」

 よくわからない説明をされた。

 一つの扉の前にアニタおばちゃんは止まると、徐に扉を開けた。

 ギネスさんが居る、書類仕事をしているらしい。珍しい光景が見れた気がする。

「アキラ、カスミ、両名をお連れしました」

「ん? ああ、すまん、掛けて待ってくれ」

「じゃあ、そこに座ってもらえる」

 僕たちはギネスさんが仕事をしている真ん前のソファに腰掛けた。アニタおばちゃんがお茶を淹れてくれるそうだ。

 僕はなんでこんな所に連れてこられたのか、よくわからないので不安でしょうがない。



「すまん、待たせたな」

 ギネスさんは間延びした話し方ではなく、普通の人のように話し出した。

「こんなに早く呼び出しに応じてくれたのです、しっかりと説明してくださいね」

 アニタおばちゃんも何やら気を使ってくれているようだ。


「二人とも、突然の呼び出しで申し訳ない。

 先の魔獣討伐に関して、魔王都の冒険者ギルド本部より正式に召喚状が届いた。お前たち二人を参考人として招致したいとのことだ。

 恐らくお前たちの精霊絡みのスキルに対する興味も含まれているのだろう。

 俺としてはまだお前たちを手放したくはないのだ、こればかりは致し方ない。不甲斐ない俺を許してくれ」

 最後の台詞からして、ギネスさんは抵抗したような感じだな。

「僕たちは魔王都に向かえということですか?」

「そうだ、詳しい話は不明なのだが、ギルド登録時の問い合わせの結果もこちらには詳細が伏せられている。

 何らかの思惑があるかもしれんのだ。お前たちはまだ新米なのでな、いくらか踏ん張ってみたのだが駄目だった」

 ギネスさんはそう言うと頭を下げた。

「そんな謝らないでください。努力して頂いたようですし、それで駄目なら仕方ないでしょう」

「そう言ってくれると助かる」

「本当にマスターも懸命に抵抗したのよ。でも、どうにもならなくてね、ごめんなさい」

 アニタおばちゃんもギネスさんを擁護している、相当頑張ってくれたのだろう。

 魔獣解体の時に元気がなかったのは、このせいかもしれないな。


「魔王都への道のりは結構な距離があるのでな、ガイドを付けることにした。入ってくれ!」

 ギネスさんが合図をすると、ダイモンさんが扉からひょっこりと現れた。いつの間に。

「呼び出しを受けたんだが何用だ? 兄妹も居るようだが」

「今その話をしている」

「マスターがその口調ということは、真面目な話なのだな」

 普段の口調は不真面目なのか、確かに不真面目そうだ。


「話を戻すぞ、兄妹は魔王都の冒険者ギルド本部に召喚された。魔王都までの道程のガイドにダイモンを付ける。そういうことだ」

「ああ、わかった引き受けよう。無事に届けた後は勝手に行動してもいいんだな?」

「無事に本部に送り届けてくれればそれでいい。後は勝手にしろ、報酬は本部から支払われるだろう」


「しかし、本部からの召喚とはまた物々しいな」

「こいつらにはまだ経験を積ませてやりたかったのだがな」

 ギネスさんは色々と考えてくれていたのだろう、感謝で目頭が熱くなった。

「急ぐのか?」

「こちらとしても話が急でな、悪いのだが頼めるか?」

「明日、明後日は準備として、明々後日には出発できるようにしよう。お前たちも準備には付き合ってもらうぞ」

 そんなに急な話なの!?

「あ、はい、わかりました」

「うーん、明日準備を完全に整えるとして、明後日は休暇だな体を十分に休ませておけ、周囲への挨拶も必要だろうからな」

 リエルザ様はいいとしても、リグさん夫妻やデニス爺にはちゃんと挨拶しておかないとな。


「そういうことだ、アキラ、カスミ、それにダイモン。急な話で申し訳ないがよろしく頼む」

 ギネスさんは再び頭を深く下げた、この人こんな真面目な性格だったんだね。


 僕と霞は、明日の予定をダイモンさんと擦り合わせてからリグさん宅に帰ることにした。

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