19.魔獣-2
僕たち3人は街にやっと辿り着いた。お昼少し前に出発し、魔獣を退治して戻る頃には夕方になっていた。
そして当然だが僕たちは冒険者ギルドのカウンターの前に、向かいにはアニタおばちゃんとギネスさんが構えている。
「順調に偵察を終えたようだなぁ、それでどうだったのだぁ?」
ほんの少しの間だが沈黙が生まれる。
「え、えっと報告します。情報通りに魔獣を発見しました、とても大きな肉食獣のような魔獣でした。
ただそれについてはもう警戒の必要はありません。そちらのカスミが討伐いたしました」
ダイモンさんがギネスさんに向けて報告してくれた。
「今、なんと言った? もう一度頼む」
ギネスさんは間延びした口調でなく、普通に喋っている。
「発見した大型の魔獣は、カスミが討伐しました。従って警戒の必要はありません」
ダイモンさんがもう一度分かり易く説明した、ギネスさんとアニタおばちゃんの二人は呆然としている。
「魔獣の討伐は叶ったのですが、解体する術がなく運搬も難しいので、人手を用意していただきたいのです」
必死に説明しているダイモンさんだが、ギルド側の二人はまだ再起動していなそうだ。
「ダイモンさん、恐らく聞こえてませんよ」
僕の言葉にダイモンさんはカウンターの先を見た。
「ふっ、そのようだな。マスターしっかりしてください! 人数を用意して頂きたいのです」
「あ、あ、ああ、すまん。人手が必要なのだな、わかった今から手配しよう。アニタ、アニタ!おい!」
「は、はい、お呼びでしょうか?」
「聞いていなかったのか?今日はもう出発できんだろう、明日の朝一で出発できるように、10人程頭数を揃えてくれ」
「今からですか?ギルドに残っているものから選抜しますよ」
先程まで固まっていた二人は慌ただしく動き出した。
「それでぇカスミが討伐したということだがぁ、どういうこったぁ?」
いつもの口調に戻ったギネスさん。
「はい、もうカチコチに凍っています」
「そ、そうか、わかった」
ダイモンさんの返答に対し、ギネスさんは諦めたように一言呟いた。
「明日この兄妹はどうしますか? 慣れない行程でしたので疲労もあると思いますが」
「そうだなぁ、お前たちへの依頼は完了としよう」
何やら僕たちはお役御免のようだ、別に同行しても良かったのだが言う通りにしよう。
「今回の報酬についてはぁ、魔獣を引き取ってからになるぅ。今日はもう帰っていいぞぉ」
「ダイモンさん、今日はお世話になりました。また何かあったら、よろしくお願いします」
「お世話になりました」
「何言ってやがる、お世話になったのはオレの方だ。だが、そうだな、その時は頼む」
僕たちはそれぞれ挨拶を交わしてから、家に帰ることになった。
リグさん宅に帰るとメーシェさんが駆け足で迎えに出てきた。
「………という感じで、遅くなってしまいました」
「もうそういうことだったのね、朝の予定と違うから心配しちゃったわ」
朝方に伝えた予定では昼過ぎに戻るはずだったので、メーシェさんを心配させてしまったのだ。
「次回からは一報入れて貰えるようにお願いしてみますね」
「それにしても、カスミちゃん凄いわね。その魔獣は明日持ってくるのでしょう?絶対に見に行かなくちゃ」
「朝一で出発するらしいので、早ければ昼過ぎくらいですかね」
「そう、なら一緒に見に行きましょう。明日はリグも非番だから4人でね」
「はい、一緒に行きましょう」
メーシェさんと霞で盛り上がり、一大イベントと化しているのだがどうしよう。リグさんが帰ったら相談してみようかな、でもあの人も話に乗りそうなんだよな。
その後に帰宅したリグさんも含め、晩御飯を食べながら明日の話をした。




