表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/186

18.魔獣-1

 僕たちは今、街の外は森の中に居る。

 僕もなんで?と問いたいくらいだ。薬草採取の依頼票を掲示板で発見し、カウンターにて受けようとしたところ横槍が入ったのだ。

 例によって例の如く、ギネスさんである。


「よう兄妹!すまねぇが仕事を一つ頼みたいぃ、ガイドも付けるぜぇ」

 何の仕事かは知らないがガイドが付くというのは魅力的だ、仕事を教わることが出来る。

「はぁ、何をすれば良いのでしょうか?」


「話がぁ早くて助かるぅなっと、コイツがガイドを務めるぅダイモンだぁ」

 熊だ! ガイドに熊を紹介された。背が高くガタイのいいダイモンさん、丸っこい耳が特徴的だ。

「オレは羆の獣人族ダイモンという。今回お供することになる、よろしく頼むぜ」

 ヒグマってことは、ツキノワグマや白熊の獣人族なんて人も居るのだろうか?

「妙な情報が入ったのでなぁ、街の外周の警戒にあたってほしぃのだぁ、まぁ哨戒といったところかぁ」

 僕は首を捻る、街の警戒なら領主の管轄ではないのか?


「領主の方からこちらに回って来た依頼だな、平地ではなく森の中ならオレ達の方が動きやすい」

 わかりにくいギネスさんに代わり、ダイモンさんが教えてくれる。

「仰ることはわかりますが、何で僕たちに声が掛かるんですか?」

「お前たちはぁ、もう中堅だからぁなぁ。こういった仕事にもぉ慣れていた方がいいだろうと考えてなぁ」

 一応フォローをするつもりがあるのだろう、強引にランクアップさせなきゃいいのに。

「色々考えているようだが強制の依頼だ、オレが付く理由もそういうことだ」

 ああ、そういうことですか。



 そして現在、森の入り口で確認した地図に従い獣道を進んでいる。足元が悪いので大変だ、僕もだが霞もこんな道は歩き慣れていない。

 僕たちはリュックにポーションや非常食を入れているくらいの軽装だ、元々薬草採取の予定だったからね。必要なものはダイモンさんが背負ったリュックに納まっている。

 それでもゴツゴツとした岩だらけで歩き辛い、ダイモンさんは跳ぶように進んでいく。慣れたものなのだろう。

「情報があったのはこの先だな、警戒を怠るなよ」

「「はい」」

 僕と霞は声を揃えて返答した、情報というのが気になるよね。


 目的地らしき場所に着いたが、何かあるようには思えなかった。

「ふむ何もないな、無いなら無いに越したことはないが気になるな…」

「どのような情報だったのですか?」

「大型の魔獣が現れたという話だった」

 大型の魔獣。どの程度大きいのだろう、そして魔獣とはどんなものなのだろう?


「お兄ちゃんたち! 木の上!」

 ぐるぐると周囲を観察していた霞が吠えた、霞の指の先を追う。

「なっ! なんだあれ」  

 距離があるはずなのにかなり大きく見える、ヒョウのような姿だ。

「お前たち!奴がどう動くか分からん、すぐ動けるようにしておけよ」

「はい」

 僕は返事をし、霞は頷いた。ダイモンさんはリュックを降ろし直接背負った大きな盾を構えた。


「あれを放置しておくわけにもいかんな、先制出来ればいいのだが…。

 精霊を使えるという話だったな、何とか出来ないか?」

「それは攻撃しろってことですか?」

「だが、まだ距離があるがどうにか出来そうか?」

 あの魔獣とやらに恨みはないのだが、見た目肉食獣だし放置はできないか。

「森に被害が出てしまうかも知れませんが出来なくはないです」

 ジルヴェストを呼べば森は酷いことになりそうだけど、なんとか出来るだろう。

「熊のお兄ちゃん、私がやるよ」

「霞、火は使えないぞ」


「わかってる。…うん…そう……お願い、やっちゃって!」

 霞の盾がかなりの光を放っている、何をする気かと見守っているとパキパキと変な音がした。

 魔獣の居る場所が猛吹雪に襲われている、スノーマンと話していたのか。

「そう…そのまま………凍らせちゃえ」

 霞の言葉に合わせるように、盾の光が明滅する。



「ふうう、終わったよお兄ちゃんたち」

 僕とダイモンさんはずっと様子を見守っていたが、何が終わったのか分からずに顔を見合わせた。

「終わったのか?」

「みたいですね。霞、何が終わったの?」

「凍らせたよ」

 本当に素っ気なく答える霞。


「見に行ってみましょうか?」

「あ、ああ、そうだな」

「私も行く」

 3人で恐る恐る近寄って行くと木の上に居たはずの魔獣は、バランスを崩して落ちたのか地面に横たわっていた。しかもガチガチに凍り固まっている。


「援軍を連れてこないと素材も取れそうにないな」

「スノーマンおいで」『よんだ~』

「これどのくらい保つ?」『芯までカチカチだよ~』

 僕は猛獣の置物を指さしながら尋ねた。

「そうかわかった、ありがとう戻っていいよ」『じゃあね~』

「辺り一帯、数日凍ったままでしょう。一度帰りませんか?」

「うむ、それが良いだろうな」

「もう帰っちゃうの?」

「帰ろうよ霞、僕ちょっと疲れちゃったな」

 まさか倒してしまうとは、驚きだ。

 大規模破壊を起こそうとした僕より霞の方がずっと凄いな、これだけの被害に収めたのだから。


 僕たちは来た道を逆に辿り、街に帰ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ