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176.ヴュルワーデ-6

 霞を含め夜霧たちの雰囲気が最悪というしかない事態に、曽爺さんの話も打ち切りにならざるを得ず、そのまま就寝することに。ただ、霞たちと同じ部屋で眠ることを僕は断固拒否し、秀次叔父さんと同じ部屋で休むことにした。


「了、お前。ある意味、兄貴並みに大変だよな。あっ、いいこと思い付いた!」


「父さんも可哀そうではあるけど、母さんはガキ大将だっただけで、僕の方が明らかに酷い状況だと思うんだ。だから、これ以上引っ掻き回すのはやめてほしいな」


「いや、これは中々に妙案だぞ。お前、あれだ、ペトレーベルと結婚しろ! あいつは一応地球人だし問題はあるにはあるが、きっとお前なら何とか出来る」


「……は?」


 ペトラさんは自称ヴァンパイアで、秀次叔父さんが言うところの地球出身の未来人。不思議な魔法を使い年齢を誤魔化したり、曽爺さんの道と門を悪用して問題を起こしたり……。


「秀次叔父さん、僕に厄介事を押し付けようとしてませんか?」


「ん~? そんなことは一切ないぞ。俺やお前みたいのはもう寿命がどれくらいあるのか定かではないんだ。だから、洒落にならないくらい長寿だと考えられるペトレーベルはお前に丁度いいと思うんだよな。まぁ、放っておくと厄介事を巻き散らす奴のお目付け役としても期待はしているが」


「冗談じゃないよ! 僕は日本人として生きて、日本人として死にたい。だからこそ、秀次叔父さんの意見は受け入れられないよ」


「ちっ、一石二鳥の良い考えだと思ったんだがなぁ」


 霞たちのことも問題だけど、秀次叔父さんもまた信用できたものではないことがわかった。曽爺さんと曽婆さんがどうなのか不明だけど、今のところは四面楚歌に近い。ジルヴェストやガイアたち、残りの精霊たちを上手く纏めなければ。

 そうして、秀次叔父さんのとんでもない提案を拒否している内に僕はいつの間にやら深い眠りに落ちていた。




「よく眠れたかい? アキラちゃん」


「おはようございます。よく眠れたかは微妙です」


 僕が目覚めると部屋には秀次叔父さんの姿はなかった。洗面所へと向かい顔を洗ってから、食堂へと向かう途中で曽婆さんに遭遇した。


「今日はエルフ核の使い方を教えるつもりでね。食事を終えたら、皆を連れて表においでなさい」


「あ、はい、わかりました」


 昨日、曽婆さんと曽爺さんの入れ替わりの直前に渡されたビー玉に似た綺麗な玉。秀次叔父さんはエルフ核とか、エルフの種とか言ってたっけ。


 僕が食堂へ着くと、既に秀次叔父さん以外の全員が揃っていた。霞や夜霧たちは少し元気がないように見えるけれど、ここで甘い顔は出来ないので放っておく。

 食後に曽婆さんからの話を伝え、皆揃ってお城の外へと向かうことにした。道案内はドライさんだ。


「ドライさんもエルフなんですよね?」


「ええ、そうですよ。ヒデツグ様の生み出された三番目のエルフですね」


「三番目ってことは、あと二人も居るんですよね?」


「はい。アインはあの島の王国で元老をしています。ツヴァイは私の妻で、大陸に於ける諜報に従事しています。私とツヴァイの子供たちを含めると相当の数が現存しますが、ヒデツグ様が直接生み出したエルフは私を含めた3体のみですね」


 秀次叔父さんの神殿のある大地に住んでいるボーっとしたエルフは、旧エルサリオーネに全権があり、手出しできないという話は聞いた。「もうどうにもならない」と悲しそうな顔で答える秀次叔父さんに、再び問うのもどうだろうか?

 まずは曽婆さんの話を聞いてから判断するとしよう。


「お兄ちゃん、怒ってる?」


「いや、そんなに怒ってはいないけど。ただ、余り近寄らないでほしいかな」


『妾らは主様の子も同然なのじゃ。じゃから、お伝えしておくのじゃ』


「うむ、旦那様を慕っておる気持ちに変わりはないからの」


「私もご主人様のお傍に置いていただけるだけで十分なのです」


「お兄ちゃん、ごめんなさい。霞のこと、嫌いにならないで」


 一晩別に過ごしただけで、この態度の豹変具合はなんなのか? 今の状況にしても、自業自得だろうとしか言えない。


「謝罪は受け入れるけど、まだ完全に信用するわけにはいかないな」


「うぅ」


 これからも霞については注意が必要だ。寝込みを襲われないように、寝る場所は別にし、ガイアを護りの要に持ってこようと心に決めた。


「おっ、来たか」


 ドライさんに案内された場所は、お城の門扉から出て更に外壁沿いに回り込んだ疎らに大きな木が生えた林といった感じ。少し注意して見れば、随所に切株などもあり、きちんと管理された雑木林といえるだろう。


「アキラちゃんも、カスミちゃんも、昨日選んだものは持っているわね? この辺りにある木は十分な生命力を讃えているから、問題なく生み出せるはずよ」


「婆さん、本当にやらせるのか? 特に必要性を感じないんだが……」


「この子たちも直接クロンと繋ぎの持てる存在が居た方が便利でしょう?」


「それは、そうなんだろうが……」


 秀次叔父さんは何やら乗り気ではないらしい。先ほどドライさんと交わした会話から察するに、エルフを新しく生み出したりする可能性が高いからなのだろうが。


「まずは、そうねぇ。カスミちゃんから始めましょうか。う~んと、これが一番元気ね。この木の幹に、エルフ核をギュッと押し付けてみてちょうだいな」


「はい、ぎゅぅーっと!」


 曽婆さんに促されるまま霞がエルフ核を押し付けた木はかなり太く立派なものだ。僕が両手を広げて抱き着いても、まるでその両の手は届きはしないだろう太さがある。仮に僕が3人居たとしてもギリギリ届くかどうかといった具合だ。

 押し付けられた玉は10秒ほど経つと、押し込められるというよりは吸い込まれるように幹の中へと沈んでいった。

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