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163.神殿-3

『主、ヤバいのが来る!』


「むっ、これは……確かに危険じゃの」


 貸し与えられた部屋で休憩をとっていると、暫くしてジルヴェストが警告を発した。耳をすませば、石造りの神殿内を人が駆けるかのような足音も聞こえてくる。


『主様は奥へ、妾らで守護するのじゃ』


「霞もこっちにおいで。何かあるとは思わないけど、警戒はしておこう」


「うん」


 次第に大きくなる足音は部屋の扉の前で止み。次の瞬間には扉が押し開かれた。


「悪ぃ遅くなっちまった。了! 霞も無事か?」


「……叔父さん?」


「おじさん!」


「おっととっとっと」


 扉から現れたのは母の弟である秀次叔父さんで、額にびっしりと汗をかいている。

 一体どういうことなのだ? どのようにして、この世界へと現れたのか……。

 何が何だか、さっぱり訳が分からない。


 僕が呆気にとられている間に、霞は秀次叔父さんの胸に飛び込んでいた。その光景もまた奇妙なもので、霞は秀次叔父さんのことを物凄く嫌っていたはずなんだけど。

 秀次叔父さんも意味が分からないのか、声も出さずに「どういうことだ?」と問いかけてくる。そんなこと僕にだってわからないので、首を横に振ることくらいしかできない。


「どうして、おじさんがここに居るの?」


「そうですよ!」


「それを話すには物凄~く時間が掛かる。今日はとりあえず、この部屋でこのまま休め。明日、また改めて話をしようじゃないか。な?」


「そんなこと言われても、気になって眠れませんよ!」


「そうだよ、おじさん。折角久しぶりに会えたのに」


「お前らの言い分は尤もなんだが、お前たちが大結界を消し飛ばしたお陰でこっちも大変なんだ。地下のドワーフたちを総動員して基幹部の点検させたり、クロンと大結界の同調レベルの調整もしなきゃならねえ。

 お願いだから、明日まで待ってくれ。そしたら全部話すから、お前らをここに放り込んだ犯人のことも含めてな」


 秀次叔父さんは合掌し、必死に頼み込んできた。その姿は何とも同情を誘うもので、これ以上ゴネてみても仕方がないと諦める。どちらにしろ明日になれば、話を聞かせてくれるのだから。


「わかりました。明日、色々と教えてください。霞、無理を言っちゃダメだ」


「むーん」


「大体、霞は俺のこと嫌いだっただろ?」


「ちがうもん。おじさんはお兄ちゃんと同じくらい好きだよ? ああ、お兄ちゃんの方がもっと好きだけど」


「霞がブラコンなのは既に知ってるけどよ……。じゃ、とりあえずは明日な!」


 秀次叔父さんは台風のように現れ、場をかき乱した後、颯爽と去っていった。

 無理矢理に引き剥がされた霞はポカーンと呆けている。


『主! あのヤバいのと知り合いなのかよ?』


「あ、うん、僕と霞の叔父さんなんだ」


「お母さんの弟なの!」


「若干似てはおるかの。しかし、問題は神気を纏っておるところじゃろうの」


「ヨギリも気付きましたか」


「我が主よりは弱いがな。神気には違いあるまいよ」


 ジルヴェストの言うヤバいという意味と、夜霧にルーとラヴリュスが言う神気というもの。意味するところは恐らく同じなのだろう。

 ただ、それがどのようなものなのか、僕には見当すらつかない。


『『ジジイよりスゴイ』』


『これ、お主ら大人しくしておるのじゃ』


「お兄ちゃん、外は真っ暗だよ?」


「空の上だからか、日暮れも早いのかもね」


 以前、ルーとの同調実験で見た太陽の位置は今の大地とほぼ変わらない高さにあったはずだ。ということは陽が差す時間は随分と限定されることになる。

 それは移動中も同じだったので、大体のところは把握していた。


「おじさん、ご飯のこと考えてないよね?」


「しょうがないよ、忙しいみたいだしね。持ち込んだ食糧で晩御飯にしようか」


「部屋の中でお料理しても怒られない?」


「あまり汚さないように気を付けるのと、窓を開けて換気すれば平気じゃないかな」


『そのような問題ではないと思うのじゃ、が』


 食事のことは霞たちに任せるとして、僕は明日秀次おじさんから聞かされるであろう話の内容を考える。

 僕たちをこの世界に放り込んだ犯人が存在すると、秀次叔父さんは話していた。まずはそのことを聞いておきたい。なんのために僕たちはこの世界へとやってこなければならなかったのかを。

 次に元の世界への戻り方だ。秀次叔父さんがこの世界に居るという時点で、恐らく帰れるはず。だとしても、どのような方法で帰ることが出来るのかを教えてもらう必要がある。

 あとは、この世界がどんな世界なのか。それを是非に教えてもらいたい。

 この世界は謎が多すぎる。いや、地球だって僕には及びもつかない不思議があるのかもしれないけど、それはそれ、これはこれ、なのだ。

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