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162.神殿-2

 神殿に見える建物に少しずつ近づいていく。

 近寄れば近寄るほどに、それが神秘に満ちていることが実感できる。


「不思議な形だね。ね、お兄ちゃん」


「っていうか、なんであの四角い柱みたいのは浮いてるんだろう?」


「全てが同じ形の石で造られておるのか、不思議だの」


「我の城よりも良い造りをしておるのは間違いあるまいて」


 本当に不思議だった。正方形の石が折り重なるようあ建物が存在し、その周囲にまた正方形の石が疎らに浮遊している。浮いている石に何の意味があるのかも不明だ。

 色も赤に黒の縁取りをされた石で赤茶けた大地の色の具合もあり、落ち着いた感じに収まっていた。


「イフリータ、スノーマン! 時の精霊の元まで案内できそう?」


『『うん、まかせて』』


「父さん、私にはわからないけど大丈夫だと思うよ」


「ペレは無理しなくてもいいよ。ダメそうなら慣れているオンディーヌに頼りなさい」


『妾はちび共のお守り役ではないのじゃ』


 神殿の正面にある幅広く、傾斜の緩い階段を昇っていく。

 右を見ても、左を見ても、そこにあるのは正方形の石ばかりであった。

 階段を昇り終え、その先に続く通路に沿って歩いて行く。

 するとドーム状の広間に着いた。正方形の石をアーチ状に組み立てたかのような天井がとても綺麗だ。


「ふむ、ここまで入り込んだというのに、出迎えの類が一切ないの」


『感知は難しいぜ。婆さんクラスのが2体と、ちょいとシャレになんねえのが1体いる。でも、こいつの感じは主に少し似ている』


「ご主人様、問題はありません。この先へと進みましょう」


「大丈夫なんだね? ルー」


「はい、何も」


 今まで何かをずっと考えこんでいたルーが、ここにきて姿勢を正した。ルーの中でその答えが出たということなのだろう。

 ならば僕は不安な気持ちを捨ててでも、この先に進むべきなのだ。

 きっと、何かがあるはずなのだ。




「ようやっと来たか。我はクロン、時の精霊である。

 すまぬが暫し待たれよ。この地の責任者は今、大結界の修繕に勤しんでおるでな」


 広間から更に進んだ先には広間に比べると小さな部屋があり、そこで時の精霊が待っていた。


「大結界とはなにかの?」


「虚無を内包する闇の大精霊よ。お主が消し飛ばした、下の大地を覆う結界のことだ」


 時の精霊に質問をし、その答えが返ってくるなり、夜霧の雰囲気が変わる。今までこんな雰囲気を僕たちの前で纏ったことさえなかった、そんな雰囲気を。


「久しく聞かぬ名で呼ばれたの」


「我も、そこの光の大精霊の欠片も、お主と同様な存在であるのでな」


「私もですか……」


 クロンと名乗る時の精霊は、夜霧やルーと同じ何かだと言い切った。その言葉が何を意味するのか、僕にはわからないがそれでも大事なことであるように思える。


『主、あと2体いるはずだ。気を抜くな』


「リリン、姿を見せよ。無駄に警戒されるでな」


「お姉さん」


「お主は……なにゆえ、このような場におるのかの?」


 この声には僕も聞き覚えがある。夜霧の妹さんの声だ。


「お姉さん、私は……」


「詳しい話は責任者からさせよう。我らはその者に従う、ただそれだけのことよ。

 そこの精霊フォーンはまた少し異なるが、似たようなものである」


 夜霧の妹さんは口籠る。どうやら責任者とやらが関わる難しい話らしい。

 そして、夜霧の妹さんの斜め後ろに現れたのは三人組の精霊。この三人を一纏めにフォーンと呼ぶようだ。


「話を戻しましょう。あの結界はそれほど大事なものだったのですね?」


「その話も含め、責任者の登場を待っていただきたいところであるな」


「その責任者とやらはいつ戻られるのでしょう? ご主人様もカスミ様も長旅で疲れております。落ち着いて休める場所を提供していただきたいのですが」


「フォーン、お主に任せるのが良かろう」


「ん」


 時の精霊や夜霧の妹さんは責任者が留守中ということで、詳しい話を避けたいようだ。それならば場所も提供してくれるそうだし、少し休憩させてもらうとしよう。

 そしてその間にこちらとしても、対応を練る必要があるだろう。

 フォーンという名の精霊は、ルーと然程変わらない大きさで三体一組の精霊だった。にこやかに笑ってはいるが無言のまま、僕たちを先導していく。今は彼らに何を訊ねても無駄だろうな。

 案内された場所は、広間まで戻って右側にある部屋だった。一般的な宿屋の個室に比べるとやや広いと感じる程度の部屋で、僕たち全員が入っても多少余裕があった。


「責任者というのを待たねばならぬのは、手持無沙汰であるの」


「でも、夜霧ちゃんの妹ちゃんが居るなんてね」


「それには儂も驚きであるの。一体何のつもりかの」


『そう、目くじらを立てるなよ。婆さん』


「はぁ、問題だらけだ。

 でさ、一番の問題は彼らが僕たちの到着を待っていた、ということなんだけど」


 本来、僕たちはこの場所の謎を解きにやってきた。つもりなのだ。

 それを相手が待ち構えているという、意味不明な状態にある。

 そりゃ、話を聞かせてもらえるならそれに越したことはないけど。それにしたって、この状況はおかしすぎた。


「お昼ご飯食べてから考えようよ。私、お腹減った」


『そうじゃ、もう昼なのじゃ』


 こいつら、暢気で良いよな……。

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