161.神殿-1
「これは確かに城というよりも神殿といった感じだ」
「でも、ドワーフさん? たちの姿はないね」
「慌ただしく動き回っておったようであるからの。用が済んだのではあるまいか?」
道中には色々と問題があり、ジルヴェストの予測した二日という日数はすぐに過ぎた。夜明け過ぎ、感覚としても間違いなく三日目の朝に神殿を望む場所までやって来れた。
問題というには些細なものではあるが、積み重なるとそれはただただ時間を浪費するものであると改めて知った。
「まあ、行けばわかるさ」
「精霊はお兄ちゃんの担当だよね」
「たまには霞が活躍しても良いんだよ?」
「お兄ちゃんに話しかけてきたんだし、お兄ちゃんが解決しようよ!」
ラヴリュスの一件以来、何かと消極的な霞は僕に時の精霊の相手を完全に任せるようだ。こちらはルーの調子がおかしく、出来るなら霞にも手伝ってほしいところなのだけど。
「じゃ、改めて向かうとしますか」
『……地下への入り口があるけど、どうするよ?』
『どうせ、ドワーフ共の穴倉なのじゃ』
「とりあえずは神殿にしようか」
ジルヴェストのレーダーは地中にまで有効なの? オンディーヌの補足ではドワーフの住処か何からしい。
でも目指すべきは、今この目で見えている神殿だろう。
「ルーよ。しっかりせよ! 旦那様の守護を第一に考えんとの」
「……はい、ヨギリ。わかっています」
「本当にどうしてしまったのかの、お主は」
それについては僕も同意見だよ、夜霧。
神殿の中に居ると思われる時の精霊との邂逅の際に、何か手助けしてもらえるものと考えれば良いのか。今は見守ることしか出来ない。
「お兄ちゃん。何があるかわからないから、しっかりと準備しておこうね」
『そうなのじゃ』
『うむ、装備を整えておくべきである。主殿』
一種の戦闘態勢に入ることになる。
素材が変わったことで見違えたデニス爺の淡く青い皿を霞の勧めで左腕に装着した。確かに何があるかわからないからな、準備を整えておく必要はあるだろう。
でも、出来るなら大事に至らないことを願うよ。
「何かあれば、我も活躍しようぞ。フフフ」
「旦那様の御身は儂らが守るでの。お主は引っ込んでおれ」
『婆さんの言う通りだぜ! 俺たちだけで十分だ』
なんで夜霧やジルヴェストはラヴリュスに対して喧嘩腰なの?
力を貸してくれるって言うんだから、協力してもらえばいいじゃないか。
「ラヴリュスも何かあれば頼むよ。夜霧とジルヴェストはラヴリュスを邪険にしないの」
『此奴が活躍するようでは妾らの立場がないのじゃ!』
「そうだの」
「なんで仲良くできないの? 実際に何が起こるか、わからないんだから協力するに越したことはないんだ」
「お兄ちゃん……。夜霧ちゃんたちにも意地があるんだよ、そこは黙っておこうよ」
僕は正論を述べたつもりなのだけど……。頭が痛くなってきた。
『あっるじー、ジジイが待ってる!』
「スノーマンは知り合いなのか?」
『『しってるー』』
スノーマンに尋ねたはずがイフリータまで答えてくれた。
幼少組はこのような場合にはあまり役に立たないのでは、と思われたが今回に限り一番役に立つかもしれない。ダークホースだった。
「よし、今回はスノーマンとイフリータに任せよう! 夜霧たちとラヴリュスは予備としよう」
「よもや、ちび共に劣る評価を受けるとは、の」
「我としても、心外であるな」
「父さん、私も役に立つよ?」
「ペレも、なのか? なら是非に頼むよ」
ペレは今まで特に不遇であったからな。幼少組と共に活躍してほしい。
「お兄ちゃんは愛されてるよ。はぁ、モーちゃんたち連れてくるんだった……」
霞が何か嘆いているが無視だ、無視。
「それじゃあ、改めて出発しようか。先頭は幼少組とペレで行こう」
『吾輩も続くのである。シュケー殿と共に』
別にガイアとシュケーを蔑ろにしているつもりはないから安心してほしい。
ガイアとシュケーはモノづくりに関しては、僕たちの中でもダントツで優秀なのだから。
『妾は最近、役に立っておらぬのじゃ』
「そんなことはないの。お主のほかには、洗浄に於いて右に出る者もおるまい」
『井戸の水でも用足りる役目などではなく、普通に役に立ちたいのじゃ!』
「何、ゴネてんの! オンディーヌは先日、霞を守ってくれただろう?
十分に役に立っているから、今回はスノーマンたちに譲ってもらえないかな」
『主様がそう仰るのでしたら、それで良いのです』
あぁ、面倒くさい。
感情表現が豊かになったことを喜べば良いのか。それともただ単に扱いに困るほど面倒になったと考えれば良いのか……。
最近、夜霧を除く精霊たちは本当に成長したと感じることが多くなった。




