表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
152/186

150.ニールにて-1

 冒険者ギルドニール支部のギルドマスターであるギネスさんは、呼びに行ったアニタおばちゃんと共に酒場へとやってきた。


「いよぉ、ボウズ共ぉ。元気そうだなぁ。おーい、適当に酒もってこい」


「何言ってんだい、仕事中だろ? 一杯にしときな」


「……はぁ、まあ元気でやっています」


 仕事中だからお酒はダメとは言わないのね。頼む方も頼む方だけど、許す方も許す方だと思うな、僕は。


「それでぇ、今日は何の用だぁ?」


「ただ顔を見に寄っただけなの。でも、アレを見ちゃうと気になるっていうか」


「そうですよ! なんで腕が捩じ切れてるんですか?」


 様子を見に来たのは本当のことだけど、そんな些末なことより重要な案件があった。

 銅像が何故壊れているのか? 誰がどのようにして壊したのか? そんな疑問が尽きない。


「それなんだけど、聞いとくれよ! この馬鹿がね、ポーズを変えるとか言い出して、首や腕を捻っていたらポキッとね。折れちゃったんだよ。

 今では一応、ここのギルドの顔みたいになってしまっているから、見栄えが悪くてね。困っていたのさ。

 プラム、私にもエール頂戴な! 思い出したら、腹立ってきてわ」


「そう思えばぁ、ちょうど良いタイミングゥだよなぁ。俺の自腹でぇ金は払うぜぇ、是非とも直してくれぇや」


 熊そのもののダイモンさんに比べると可愛くは見えるけど、ギネスさんはそもそもが筋肉お化けだもの。ありえないとは言い切れない、この世界の人間は性能がおかしい。いや、ギネスさんは魔族だったか。

 それでも驚くことには変わりなく、僕や霞はもとより、茜など目を真ん丸に見開いている状態なのだから。


「ううむ、さすがは冒険者ギルドかの。規格外がおるの」


「規格外か、確かに」


「お兄ちゃん、どうするの? 修理する?」


「するしかないだろ。今日はこの後、リエルザ様の所に向かう予定なので、明日以降で良いですかね?」


「修理してくれるなら、いつでも構わないよ。ただ忘れないでいてくれたら、それで十分だよ」


 いや、忘れはしないだろう。インパクトがありすぎるもの。

 ハチさんたちのことをすっかり忘れていた僕だけど、今回のこれはちょっと忘れられそうにない。

 それにポーズ云々という話の内容だったから、溶かして作り直すことになりそうなのが気掛かりだ。間違いなく、半日は潰れるだろうから、余裕をもって予定を組まないと。


「今日は到着したばかりで疲れているので、また来ます」


「おぅ、楽しみに待ってるぜぇ!」



「びっくりだよ! ギネスのおじちゃん、力持ちだね」


「僕もびっくりだけど、絶対修理だけで終わらないからな、アレ。

 とりあえず、リエルザ様の館に行こう。話聞いてるだけで疲れたし」


 懐かしい道のりを皆で歩いていく。大きな町ではないけど、それなりに栄えているので繁華街などは賑わっていた。

 

「防具屋さんとか、懐かしいね」


「デニス爺の所は明日にしような。あの爺さんも話が長いからさ」


「うん、早く領主のお姉ちゃんの所に行こ。お腹減った」


『ふふふ、ルーめ。こちらにも旨い飯があると知ったら、怒るじゃろうな?』


「オンディーヌ。お前、腹黒くなったな」


『妾のお腹は透き通っておるのじゃ。主様は目が悪いのじゃ』


「オンディーヌよ。ルーは魚介を堪能しておるはずじゃが、の」


『……なんということじゃ。妾も貝を所望するのじゃ!』


 何言ってんだ、こいつ。内陸部のニールでは海産物など望むべくもない。流通すらしていないというのに。まあ、ルーの陰口を快く思わないから、夜霧も焚きつけたんだろうけど。


「私もお魚食べたい!」


「そんなこと大声で言ってると、その期待に応えて小骨の多い川魚が出てくるぞ。

 僕はアレ、唐揚げだったら好きなんだけど。煮物は勘弁だな」


「あっ、うん、私も唐揚げなら大丈夫だけど、やっぱりお肉が良い!」


 まだ道中なので色々と言ってはいるけど、出された食事には文句はつけないよ。だって、失礼だもの。

 それに食わず嫌いで終わるには勿体ない、口にしたら美味しいこともしばしばあるのだ。色や形の妙な野菜や果物然り、カラフルで毒々しい色合いの料理然り、と。



「これはお懐かしい。精霊遣い様ではありませぬかな?」


「はい。近くに来たものでリエルザ様にご挨拶をと」


「では、直ちに館に知らせを走らせましょう。少々、お待ちくだされ」


 領主館につくと、以前よく見た門番に会うことが出来た。お陰でスムーズにリエルザ様との面会は叶いそう。


「おお、これはこれは。お懐かしゅうございますな。

 主人の元へ、即ご案内いたしましょう」


「ありがとうございます」


 執事さんも懐かしい顔で、今日もパリッとした糊の利いた服装をしていた。

 館に入り、案内されるままに執務室へと向かう。館内の構造も良く覚えている。

 執事さんのノックに反応するリエルザ様の声は、以前と何ら変わりがなかった。

 書類に集中したままのリエルザ様は、上の空で返事をしたようだ。


「お客様をお連れしました」


「うむ、少々お待ちいただこう。あと少しで片付くのでな」


 執務室へと入ったのは僕と夜霧の組み合わせに、霞はモーちゃん連れているだけだ。その他の面子というと、数が多いので宴会場へと詰め込まれている。

 先に食事の用意をしていただけるという話だったので、皆喜び勇んで宴会場へと入っていったのだ。夜霧は少々悔しそうにしていたが、僕のお供をしてもらう。


「ほぅ、アキラにカスミではないか! 事前に予定のない面会で何かと思えば」


「お連れ様方には食事を準備しております。暫しご歓談ののち、そちらへと合流なさいませ」


「うむ、ご苦労。下がってよいぞ」


 執事さんは部屋に備え付けられた道具で僕らにお茶を入れた後、静かに退室していった。出来る執事、実に格好いい。


「近くに来たものでご挨拶に伺いました。ご無沙汰しております」


「本当はね。お泊りさせてほしいの!」


 おい! それはこれから交渉しようと考えていたのに、僕の段取りが台無しじゃないか。

 

「そうか、そうか。構わぬぞ、客室など有り余っておるからな」


「えっ、いいの? あのね、お姉ちゃん、たくさん居るんだけど」


 霞、お前……。あれだけすっぱりと言い切ったのに、ここで渋るのかよ。

 まあ、実際にたくさんの連れが居ることに変わりはなく、総勢20名を超える集団なのだ。そこをどう説明しようか。


「魔王都からダイモンがやってきて、お前たちの情報を伝えておるのでな。

 以前も確認しておった精霊に、数多くの亜人を引き連れておると聞いておるよ」


「ああ、うん、そうなんだけど、また増えたんだよね。お姉ちゃん、驚くかもしれない」


「増やしたのは、主に霞なんですけどね」


「殿下、その仰り方は……」


「事実だからな」


 甘やかしてはいけない。霞が調子に乗るとシャレにならないのだ。

 言うべきところはしっかりと抑える必要がある、と僕は最近になって悟ったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ