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148.目指すは暗雲の先-2

「お兄ちゃん、大変!」


「どうした、霞?」


 強固に作られたゴンドラの底が抜けるようなことは、もうない。空の度は順調に進んでいる。

 夜霧も上昇する体勢から飛行体勢に入ったため、仮にゴンドラに不具合があっても僕たちでは気付くことはないのだけど。


「どうしよう? ハチさんたちのこと、忘れてた」


「あっ、しまった! アーミラさんの所にも顔を出すって話したんだっけ……」


 まずい、非常にまずい。旅行気分のハチさん夫婦はまだ良いとしても、アーミラさんはヤバい。それにハチさんの旦那さんヘネスさんに紹介してもらう約束だった海図の人のことも一応、気にはなる。


「なんじゃ、また逆戻りかの?」


 振り返り、苦言を呈する夜霧にどのように言葉を返すか悩む。


「今更戻るのもアレだよね。だって、もう」


「ああ、もういいや。夜霧、そのまま進め。ニールで手紙を書くことにしよう。

 幸いにもこの世界では、どこの誰と宛先を書けば届くみたいだしさ。多少時間は掛かるだろうけど、放置するわけでもないし、許してもらえるだろう」


「本当に大丈夫かな?」


「そこはもう大丈夫だと考えるしかない」


 本当は失礼極まりないのだろうけど、今更戻るのも二度手間だもの。


「ハチさん、アーミラさん、そして一応リリィ様宛てに手紙を出しておこう。

 最悪、リリィ様の元にだけでも届けば、何とかなるだろうし」


「わかった。お兄ちゃんにお任せします! でも、本当に良いのかなぁ」


「そんなのダメに決まっているではありませんか! 交友関係を蔑ろにしすぎです、ご主人様」


 折角強引に霞を言い包めたというのに。だったら、引き返せとでも言うのか? ルー。


「私が使者として出向きます。ご主人様の名代としてお詫びしてまいります」


「?」


 僕もだけど、霞もルーの言葉の意味を理解できない。兄妹二人して、首を傾げる。

 僕はルーの言葉を反芻し、その言葉の裏に何が潜んでいるのかを考えた。


「……ルーよ。お主、ひとりで旨い飯を馳走になるつもりじゃな?」


「うっ」


「はぁ、この食いしん坊め。でも、仕方がない。任せることにしようか。

 用事が済み次第、戻ってくるんだよ」


「はい、勿論です。お土産は……私には持てませんので、期待しないでください」


 ルーのその小さな体でどうやって物を持って帰るつもりだったのか。夜霧のツッコミに後ろめたい気持ちにでもなったのだろう。

 ルーは僕の後頭部から右肩に移ると光の玉に姿を変え、進行方向とは逆の今まで飛んで来た方角、西へと飛んで行った。


「ルーちゃん、逃げた? あの実験で失敗したとかで、精霊さんたちに責められてたから」


「普段偉そうにしている分、みんな思うところがあったんだろうな。でも、仲が悪いということでもないみたいだそ」


「うむ、ルーには良い薬になったのではないかの。余り大人しいのも張り合いがないが、の」


 夜霧とルーはなんだかんだと言いつつも、良い関係が築けていると思う。張り合いがないという夜霧の意見は尤もだろう。


「でもさ、これで解決だね。手紙書くの大変だもんね」


「あ、ああ、この世界の文字って、マークシート塗り潰すのと同じで手間だしな」


 楔形文字で文字数はそう多くないのだけど、楔の方向や大小、組み合わせがとても面倒くさい。以前、ティエリさん宛てに出した手紙でも短文なのにとても大変だったのだ。無類の面倒くさがりを自負する僕には、ツライ作業なのだ。


「日本語で書いたら勝手にこっちの文字になればいいのにね」


「言語理解スキルはちゃんと仕事しないからな。翻訳は曖昧で中途半端だし、毎回のように翻訳内容が変わるからなって、霞も同じなのか」


「茜くんとマリンちゃんなんてオーガと翻訳されたり、鬼って翻訳されたりするの。

 モーちゃんもタウロス系とか、ミノタウロスとかで統一されないの。酷いよね」


 こういった些細な愚痴を今まで霞は僕に漏らすことは皆無だった。性格がキツくなり毒を吐くようにはなったが、今までよりも心を許してくれているのだとすれば嬉しい。甘えてくる時の柔らかい表情には騙されそうになるけれども。


「ワイバーンの住処は迂回するかの?」


『そうしようぜ。箱に入ってるゴブリンたちも大変だからよ』


「ルーが居ないから、ジルヴェストが誘導してくれ。北と南どちらでもいいぞ」


『婆さんの好きにしろや』


「南からの風が吹いておるからの。北に回り込むかの」


 僕はジルヴェストが風防の役目を担っているために、風は感じない。実際に飛んでいる夜霧としては微風であろうとも向かい風では煩わしいのかもしれない。


「ワイバーン、本当に食べられないの?」


「奴らはの、骨も肉もスカスカじゃぞ? 軽くせぬと魔力量の問題で長時間の飛行が出来ぬからの」


『婆さんみてえな魔力の塊じゃ。あのトカゲ連中ももっと脅威だろうさ』


「そういうことになるの」


「ふーん」


「霞、食べることから離れなさい」


「カッツベルさんたちのご飯も確保しないといけないんだもん」


 それはお前が呼び出したから発生した責任だろうに。

 しかし困ったな。これだけ亜人種が多いと町に入るのも大変なのではないだろうか? ニールに関してはたぶん大丈夫だろうけど、他の町となるとどうなることやら。

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