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147.目指すは暗雲の先-1

「むっ?」


「あ? あーーーーーーーーーっ!」


――ドンッ、カシャシャシャン


「だから言ったんだ、底は補強しようって!」


 今となっては日常茶飯事の夜霧による空の移動。

 その離陸直後、モーに引率されたゴブリンたちの乗り込んだゴンドラの底が抜けた。ただほんの少しだけ浮いただけだったから、怪我がなかっただけだ。これが遥か上空で起こっていれば、一大事だっただろう。

 底が抜けて壊れたゴンドラは破棄し、移動は中止。新たに作り直すことになった。

 

 精霊たちから果てはゴブリンたちまで集結し知恵を絞った。

 そして出来上がった新たなゴンドラは、奇しくも前回と同様にシュケーとガイアの合作である。

 シュケーが編んだツタの籠を骨格として、ガイアが金属だか、土だか判別のつかないものを用い肉付けした。結果的に強度と重量のバランスの良いゴンドラが出来上がり、簡易なテストにも耐えた。ただ数人乗って飛んだだけなのだが。


「ふふふ、私のアイデアは凄いでしょ~?」


「うん、ああ、まあな」


 悔しいなんて思ってはいない。最初にゴンドラを作ろうと考えた僕の閃きがあればこそ、なのだ。


「今度はモー、夜霧の背に乗ろうな。ゴンドラは茜とマリンに任せよう」


「殿下、それは私が重いと仰るのでしょうか?」


「……」


「お兄ちゃん、デリカシーって言葉知ってる? ごめんね、モーちゃん」


「いえ、お気になさらずとも」


 ルーとの同調実験以来、霞は毒を吐くようになってしまった。

 あの優しさの塊のような霞はどこへ? 僕のそこそこ可愛い不思議な妹は幻想だったのだろうか? 冗談はさておき。


「気を取り直して、出発しよう。目指すはエルフの住む森の上空だ」


「誤魔化そうとしてるけど、ま、いっか。モーちゃんも許してあげてね」


「……事実ですからね、仕方ありません」


 筋骨隆々のモーは、その密度の濃い筋肉が何より重そうなのだ。ゴンドラに掛かる荷重を抑えるにはメンバー交代が最も好都合だと考えたんだ。

 でも、申し訳ない。遠回しに言ったつもりだったのだけど、もう少し気を利かせるべきだった。


「ルー、例の結界さ。夜霧が頑張れば突破できるよね?」


「ブレスで一撃とはいかないかもしれませんが。二、三発当てれば可能かと」


「ということだ。現地に到着したら頼むぞ、夜霧」


「何を勝手に決めておる。仮に結界を破壊できたとしても、要が残っていては再生されるであろうに」


「えっ?」


「ですから、破壊したら即突入して要も破壊するか、解除するのです」


「むむむ」


 もし夜霧によって結界を破壊することが出来た場合も、何も瞬時に再生などしないだろう。なら、ルーの意見を踏まえて行動するのはアリだと思う。


「お兄ちゃん。最近、私思うんだけど」


「何が? どうしたの? 霞」


「夜霧ちゃんたちもお兄ちゃんの考え方に染まっちゃったよね?」


「そりゃ、四六時中一緒にいるからじゃないのか?」


「そうなのかもしれないけど、そういうことを言いたいわけじゃないの。

 もっと広い視野を持った方がいいよ、お兄ちゃん」


 霞は一体、何が言いたいのだろう? 以前まで被っていたと思われる猫はどこへ逃げたのでしょうか? 霞の心変わりに僕はついていけない。


「お願いします、教えてください。霞さん」


「バカだよね、お兄ちゃん。

 何もさ、その結界の強力なところを壊さなくてもいいよね? 廻りの簡単に突破できるところから抜けていけば良いんじゃないの?」


「「「あっ!」」」


「夜霧、とりあえず降りるか」


「うむ」


 ああ、凄いバカな考えだった。そうだよ、何も厚い結界をわざわざ突破する必要はないのだ。霞も最初に、出発する前に教えてくれたら良かったのに。

 出発して早々に、着陸することになった。もう少ししたら夕方だし、ちょうどいいといえばちょうど良かったのかも。


「僕と夜霧とルー、それに霞も加えてルートを考えよう。

 オンディーヌたちはモーたちと協力して、夕飯の支度だ。出来たら呼べよ? 先に食ってたら、怒るからな」


「魚介は食い尽くしたのじゃ」


「私たちとカッツベルさんたちで林へ狩りに向かいます。設備の方をお任せします」


「林なら木娘を連れて行くのじゃ。役に立つのじゃ」


 オンディーヌとモーは何気に仲が良く、連携が取れていた。共にリーダーっぽい役回りなので、上手く采配してくれることだろう。



「で、どうするか、だな」


「ルーよ、あの結界の特徴はどうかの? 儂はあの結界、中々の厄介なものと睨むのじゃがの」


「ある程度までは魔力を減衰させ、一か所に掛かる負担に於いてはある程度透過させている、かと」


「それとの。虚無との際は危険じゃからの、旦那様よ」


「なんだ、あそこを抜けるのが一番楽かと思ったのに……」


 海の切れ目、夜霧が虚無と呼ぶ暗闇との境界では結界も海と同様に途切れていた。

 僕としては、そこが狙い目かと考えていたのだが。


「虚無ですか? 確かに飲み込まれたらただでは済まないでしょうね。ご主人様、私もヨギリと同意します」


「ならさ、黒い雲の近くの結界が弱いところにしたら? 行先は黒い雲の先何でしょ?」


「ふむ、そうするかの」


「無難な意見かと思われます」


「じゃ、結局は向かう先としては森か。どうせなら、リグさんの所にでも寄るか?」


「あっ、うん、それが良いよ。やっぱり、お兄ちゃん、頭いいね」


 僕のことをバカ呼ばわりしたのは霞じゃないか。掌を反すようなことをよくもまあ抜け抜けと……。

 でもまあ、それでこそ霞か。なんだいつもの霞じゃないか。

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