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145.新たなる問題-1

「それで? お兄ちゃん、何か言いたいことは? ある?」

「いいや、何も」


 恐ろしい形相で歩み寄る霞に、孤島での実験結果とそれに伴う事柄の説明をルーが行い。途中で僕の意見や感想といったものを付け足しはした。


「この世界がおかしいって、当たり前でしょ! 何を今更なことを言ってるの、お兄ちゃん?」

「だって、星の中に星がある状態なんだぞ? 増して、海が途切れているんだ、それも直角に」


 いや、なんだ、これ? 霞の方が現実を直視できている、だと?


「お兄ちゃん、ルーちゃんや夜霧ちゃんが存在する時点で既におかしいの!

 私たちの現実、地球を基準に考えると何もかもがおかしいの。だから、地球の常識に囚われてはダメ!」


 言われてみれば、確かに頷ける。

 但し、その文句を霞の口から聞かされているということ自体も異常なのだ。だって霞は天然キャラだったはず、少なくとも僕はそうだとずっと幼いころから思っていたのだから……。


「太陽のことや海が途切れているというのは理解したよ。あとはエルフさんの時のように結界に阻まれているんだっけ?」

「そ、そうなんだよ。結界がこの大陸を覆っているらしいんだ。

 だから要するに、この大陸から外には出られそうにないということだ」


「そう、なんだ。じゃあ、お兄ちゃんの計画は潰れちゃった訳だよね?」

「うっ」


 『帰る』ということに関して、この大陸の外にあるという他の大地にある知識に頼ろうという計画を僕は立てていた。その計画は頓挫したことになる。


「えっと、でもさ、結界の要になっていそうな怪しい場所は見つけたんだ」

「でも、どうしようもないんでしょ? ルーちゃんや夜霧ちゃんでも、どうにもできなそうなんでしょ? 

 私言ったよね、お兄ちゃん。それでダメなら、潔く諦めようって」


 間違いなく、霞と今後のことを話し合ったときに、霞はそう答えたはずだ。

 それでも! そうだったとしても……。


「い、一応、あの怪しい場所を探るくらいは、したいかなぁ」

「何? お兄ちゃん、言いたいことははっきり言ってよ」

「森の上空にある強力な結界の先を探索しておきたい! 絶対に何かあると思うんだ」


 夜霧でも厳しいらしいのだが、『厳しい』ということは出来なくはないということでもある。多少、夜霧には無理をいう形になるが頑張ってもらうしかない。


「……わかった。それが最後の条件だからね? 忘れちゃ、ダメだから」

「あ、うん」


 霞って実はこういう感じだったのか……、僕は今まで勘違いしていた、のか?



「ところで、そこに居る子供たちは何?」


 僕からの魔力供給が断たれ、顕現の限界が訪れた折の残骸としてガイアを成していた土塊や、オンディーヌの残骸であろう魚介の跳ねる水溜まり、同じく魚介の刺さる氷塊はスノーマン。シュケーに至っては一本の若木が残り、イフリータとペレはジルヴェスト同様に消えただけのようだ。

 その残骸の向こう側にわらわらと群がる子供たちが十数名存在している。お説教の最中に聞くに聞けない状態だったのだ。彼らが何者であるか、など。

 先ほどまでの剣幕を全く感じさせない様子の霞は首を傾げているが、僕は指をさして尋ねた。


「あの子たちだよ」

「ああ、うん。お兄ちゃんが何か秘密の特訓をしたいるって、ガイアちゃんにおしえてもらったの。それで私も! と思ってやったら」


 マテ、待て待て、それは何か? また増やしたということなのか? いいや、間違いなく、そうであろう。


「それにね、あの人たちは名前もしっかり持っている大人なんだよ?」

「えっ? 名前があるの?」


 茜にマリン、それにモーは霞が名付けたはずだ。鎧の三体に関しては生態が謎すぎるとしても、名付けは行っていたはず。

 そうすると名前持ちで大人である。それは何を意味するのかといえば、どこかから召喚したということになるのではないだろうか? そしてそれを踏まえると、茜たちも鎧も、前提条件がひっくり返る恐れがあるということだ。


 茜たちは僕の精霊ペレと同様に、霞が魔力を行使して創り上げた存在であると仮定していたのだが。そもそもの前提が間違っていて、誘拐や拉致のような行いであるとしたら一大事だ。


「それで彼らは何なんだ?」

「モーちゃんが言うには、ゴブリンさんだって。14人居るよ」


 ゴブリン……。人間の子供のような容姿で肌が緑色、確かに物語などの挿絵にあるような姿をしてはいる。一説には妖精という話もあるが、今回はそれには該当せず、亜人という括りになるのだろう。何せ、霞の女王様スキルに呼ばれたのだし。


「えーと、モー。少し話を聞いても大丈夫か、どういう経緯なのかさ?」

「はい、殿下。ゴブリンたちは、とある集落よりこちらへと参ったようで。

 かの地は現在のところ戦禍に苛まれているらしく、霞様からの召喚に応じることに了承した、とのことです」

「ってことは、一応選択の余地はあったと?」

「はい、左様でございます」


 強引に拉致紛いな行為を迫ったわけではなさそうで何よりではある。が、しかし、それでことが解決するわけでもない。

 ただ呼び出されて来たというだけでは、聞こえてくる会話に違和感を覚えるのだ。


「やはり、霞を女王と慕っている?」

「はい、勿論でございます。殿下。

 私と同様に彼らゴブリンの集団も、霞様の兵となりますゆえ」


 どこかおかしいと感じた違和感の正体はソレだ。

 全裸ではなく全員がしっかりとした服を着ていることを踏まえると間違いなく以前から存在していた者たちなのだろう。そのゴブリンたちが何故に一切の疑問を挟まず、霞を女王と慕うのか?

 あと服に関することとして、全裸で呼び出された茜・マリン・モーはまた別の要因が絡むのかもしれない。鎧たちも同様だが、それはまたあとで考えるとしよう。


「霞、色々と妙だがそれは置いておくとしてもだ。こんなに増やしてどうするんだよ? 食料はまあ、自給自足というか、狩り等で今はなんとかなるかもしれないけど。移動はちょっと難しいんじゃないかな?」

「大丈夫だよ、夜霧ちゃんの体はとても大きいもん」

「いや、大きさ云々ではなくてな。この数を管理しきれるのか? という問題なんだが……。仮に夜霧で移動するとして、滑り落ちたりした場合にちゃんと気付くことが出来るか?」

「シュケーちゃんに縛ってもらえば平気じゃないかな」


 勝手に数を増やしたことを責めると反撃を食らいそうなので、やんわりと否定的なことを言ったが効いていない。まあ、増えてしまったこと自体はどうしようもないので、対応策を練らないとならないのだけど……。前途多難だよな、僕たち。

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