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143.同調-5

 地面に芝生よりも背の低い雑草が蔓延っている。その上に寝転び、天を仰ぐ。

 

「太陽の傍は避けよう。目がつぶれてしまっては困るからね」

「では、あの辺りにしましょう」


 以前、ルーとは同調中である。少しだけ胸のあたりがほんわか温かい以外に何もなく、普段と変わらずに行動することが出来ているのは不思議な感覚だ。

 雲の切れ間を縫うように視線の先はビームとして伸びていく。雲があったとしても問題なく透過出来るそうだけど、なるべく魔力とその制御に無駄のないように心掛けていた。

 ぐんぐんと伸びるようにズームしているのがわかる。あくまでも感覚なので、どのくらいの距離を進んでいるのかもまた感覚でしかない。


 つい先ほどまで青かった空はいきなり暗闇に囚われてしまう。


「さっきさ、太陽が隣にあったような感覚なのにな。また真っ暗闇だよ」

「そうですね。太陽は通り過ぎたように感じました」


 おかしな状況だ。見えていたはずの空が終わる前に、太陽を通り過ぎたのだから。

 そして再び真っ暗闇へと突入したのだ。そもそもこの暗闇は宇宙ではなく、虚無らしい。虚無ということは、何もないということだろう?

 どうしてこの世界はこんな構造をしているのだろうか? 大体なんで太陽が虚無の内側にあるんだ? ……絶対におかしい。


 視線の先まで伸びていたビームを戻す。


「ところで、夜霧どこいった?」

「あら? そういえば……どこへ行ったのでしょう?」

「結界の調査がどうこうと言ってたような……」


 夜霧はいったいどこへ向かったのか? あいつが居ないと霞の所へ戻れないじゃないか。

 しばらく十数分ほどか、暇つぶしを兼ねて草の上をゴロゴロしていた。それでもまだ、同調中なのだ。

 もうすっかり慣れてしまった。ルーが胸の内に存在すること自体、それが自然であるかのように。



「何をしておるのかの?」

「ああ、夜霧帰ってきたのか」


「凡そではあるが結界の位置関係を把握できたかの。この大陸の周囲を覆うように、西と南以外の二方面に結界が展開されておった。しかも恐ろしく強固な結界での、儂でも解除は難しいかの」

「……そんな強力な結界なのかよ。ルーは光でしかないから通過できたってことなのかな?」

「どうでしょう? それでも随分と魔力の減衰が見られましたけど」


 大陸を覆う結界は、僕の魔力を燃料にしたルーの光にも影響を及ぼしていた。ということは、内側に作用する結界なのかも?


「前にエルフの村の結界の時に、結界の要になる何かが必要とか、あったじゃないか?」

「そうだの、あるとすれば……中心かの」

「てかさ、お前、たった数分の間に結界のある場所まで赴いていたのか?」

「いんや、大体の位置の把握に努めておっただけじゃ。昼日中に儂が現れると大層騒がれるからの。これでも一応遠慮して、高空から探査しておったのじゃよ」


 ああ、まあ、そうだよな。巨大な黒い龍が現れたとなれば、町なんかではパニックになってもおかしくないもんな。そういうことに気が付くようになるなんて、夜霧も成長したんだな。


「で、中心というと何かありそうか?」

「そうよなあ、儂が住んでおった森の深部がいうなれば大陸の中心かの」

「では結界の要となっているのは、ヨギリの住処なのですか?」

「そのようなもの、儂は知らんの。あそこも言うなれば、暗闇じゃしの。何もないかの」

「暗くて何も見えないだけじゃないのか?」

「もしそのようなものがあれば気づくと言っておるのじゃ!」


 じゃあ、夜霧の住処だった森の深部には、それらしきものは何もなかったと。


「なら、どこにあるってんだよ?」


 夜霧と二人して大陸の中心部へと目を向けた。とはいえ、ここからではワイバーンの生息していた山脈があって眺めることは出来ないのだけど。


「夜霧、僕を乗せて少し高く飛んで」

「うむ、早よぅ、乗るのじゃ」


「うわ、寒っ! ジルヴェストを呼びたいけど、ルーの制御能力を超えてしまうからな……我慢しよ。

 ルー、夜霧の住んでいた森を中心に眺めてみようか」

「はい、わかりました」


 初めて眺めた時、ガルーダを見掛けた森だ。随分と懐かしい気がするね。

 あの森の最も深い部分に夜霧は住んでいたという話であったよな。


「森の中なんて僕が見たところで何がわかるものでもないし、その周囲を適当に眺めてみようか」

「嘘ではないぞ、儂の住処には何も妙なものは存在しておらぬからの」

「わかってるよ、別に疑っているわけじゃないんだ。客観的に見てみることで、何か気づくかもしれないじゃないか」


 両目から伸びる視線のビーム、今回はそれほど細く絞ることもなく極太だ。それこそ視界は広く保たれている。


「ふむ、結界は天をも覆うように展開されておるの」

「そうすると、だ。あからさまに怪しいのは、森の上に留まっている雷雲みたいな黒い雲なんだけど……。

 ルー、あの雲を透過できそうか?」


「あの雲も結界の一部のようです。雲の下層表面にまた随分と強力な結界が発生しています。ご主人様の魔力すら無効化されているようです」

「……決まり、だな。この視線って直進だけだよな? 屈折させることはできないよね?」

「はい、申し訳ございません。空中に鏡でもあれば出来るかもしれませんが……」


 まあ、道理だよな。でも、結界の謎は解けそうで何よりだよ。解けるかどうかは、わからないけどさ。


「今日はそれだけわかれば十分かな。そろそろ戻ろうか? ジルヴェストが居ないと寒いしさ」

「では同調を解きます。ご主人様は私が分離する際に引きずられないようにご注意ください」

「少し待つのじゃ! ゆっくり降りるからの。地面の上でやるがよいの」

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