13.ランクアップ?
冒険者ギルドへと着くとそのままアニタおばちゃんの元に急ぐ、カウンターが混みあっているのだ。
まだお昼前なので、それ程でもないのだが混み始めている。僕たちの前には4組の冒険者達が居る、大人しく待とう。
アニタおばちゃんは、よく分からないけどそこそこ偉い人らしいので仕事が早い、既にあと2組待ちになっている。
「なぁ、アニタさん。もうちょっと色付けてくれよ」
「何言ってんだい、無理に決まってるでしょ」
2組先の冒険者がアニタさんと言い合っている、報酬でゴネてるのかな?勉強になりそうだから見ておこうかな。
「なぁ頼むよ、今回頑張ったんだぜ。獲物も傷が少ないだろ?毛皮の買い取り額をもうちょい、なぁ」
「それも含めてこの額なのよ、色付けてこの金額なの」
ゴネてた冒険者は根負けしたのか、諦めてしまったようだ。ギルド側に値切られてしまうこともあるのだろうか、覚えておこう。
残り1組だったが、すんなりと報酬を受け取って去って行った。いろんな人が居るんだな。
「あら、あなた達どうしたのかしら?」
「お金を降ろしたいのですが、30ゴールドお願いします」
「30ゴールドね、少し待って頂戴な」
アニタおばちゃんは、カウンターの後ろにある魔道具を操作し始めた。あれATM本体なのかな?
「はい、お待たせしたわね。30ゴールド、確認してね」
「10枚の金貨の山が3つですね、はい確かに受け取りました」
「じゃあ、ここにサインしてね。サインする時は、きちんと書面を確認しなさいね」
そういうことを言うってことは、詐欺とかもあるのかね。気を付けなくちゃ。
「はい、これで取引完了よ。気を付けて行きなさいよ」
僕は軽く頭を下げ、カウンターから離れる。
「霞行くよ、先に支払いを済ませてしまおう。お金を持ってると不安だしね」
「お爺ちゃんの所だね、早く行こう」
さっさとお金を払って、お皿じゃなかった盾を買ってしまおう。
冒険者ギルドを出ようとしたところで、後ろから声を掛けられた。
「おぅボウズゥ、ちょいとぉ待ってくれぇ」
誰かと思ったら、ギネスさんだった。
「どうしたのですか?」
「いやぁなぁ、領主がなぁお前たちにぃ取り次いでくれぇとうるさくてなぁ~」
「あー」
わかった、ギネス像の件だ。リエルザ像でも作れというのかな?
「うむ、察しの通り彫像の製作を頼みたいそうだ」
やっぱり、さてどうしようか。
「霞、どうしようか?」
「やってあげようよ」
仕方ないか。
「わかりました、お引き受けします」
「じゃあぁ、あれだなぁ、お前たちの点数稼ぎにしてランクアップしてしまおうか。すまんがもう一度こっちに頼む」
デニス爺の所へ行くのは遅くなりそうだ、お昼ご飯の後になってしまうな。
「こっちだ、そこの空いているカウンターへ」
ん?どういうことだ。
「ミランダ、手続きを頼む。ランクアップだ」
ミランダさんというのか、若い女性だ。魔族かな?獣耳がないし。
「は~い、これはこれは期待の新人兄妹じゃないですか~。もうランクアップなんですか!?」
「ああ、そうだ。Dに2ランクアップだ」
「は?いや、あの僕たちまだ基礎くらいしかやってませんよね?」
「そんなものお前ぇ、ギルドへの貢献度と対外的な面子もあるぅ妥当なところだぁ」
そういうものなのか…僕と霞は顔を見合わせ、左右に首を捻る。
「マスタ~、この子達納得していないようですが良いのです~?」
「構わねぇ、やってくれぇ。お前たち証明書を出せ」
2人分のドッグタグをカウンターのミランダさんに渡した。ミランダさんは、カウンターに置いてある魔道具をカチャカチャ弄っている。
「おめでとうごさいます~。今日からランクDとなります、これで立派な中堅冒険者ですよ~」
「すみません、僕たちまだちょっとしか新米冒険者やって無いのですが…」
「諦めましょう!今日から中堅冒険者の仲間入りです~」パチパチパチ
「ギネスさん、最初に言っていた僕たちの安全がどうとかの話は、どこへ行ってしまったのですか?」
「だってぇ、お前らぁどう見ても初心者じゃねぇよぅ。あんなぁ化物みたいに凄いのによぅ」
それとこれとは違うと思うんですがね、前向きに捉えるとしますか。
「次から依頼はあそこぉの掲示板からぁ取って来いなぁ、今回の領主の話はぁ指名依頼としてぇカウントするからよぅ」
「領主館には明日向かうことにします、連絡しておいてください。今日は行くところがあるので失礼します」
事務的に返答し、デニス爺の所へ向かうことにした。まだ、お昼ご飯には早いはずだ。
「霞、いくよ」
僕の様子に驚いている霞の手を引き冒険者ギルドを後にする。向かうはデニス爺の所だ。
「どうするんですか~?お兄ちゃんの方、怒ってましたよ~」
「どうするもこうするもねぇだろぉ、フォローはちゃんとするさぁ」




