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11.薬草の採取

 今日も昨日に引き続き冒険者ギルドへと顔出した、正面に居るのはアニタさんだ。


「今日は薬草の採取をお願いするわね。ガイドに隣に居るギルド職員のヴァルモを付けるわ、彼は薬草採取と鑑定のエキスパートなのよ」

「ヴァルモです。今日はよろしくね」

 よーし、何だかやっと初心者冒険者らしくなってきたぞ。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 僕たちはそれぞれ挨拶を交わした。


 冒険者ギルドを出て、まずは街門まで向かう。

「薬草と云っても色々あるけど、今回は主に塗り薬に使う薬草の採取を行うよ。

 採取と一口に云っても、これまた複数の処理の仕方があるんだ。ただ毟ればいいという訳ではないんだよ。

 これから向かうのは街門のちょっと先だ、でも街からそう離れるわけじゃない。ほんのちょっと足を伸ばすだけだ。あとは、採取場所に着いてから説明しよう」

 ヴァルモさんは早口だけど分かり易く説明してくれた。


 街門に到着する、冒険者登録証を提示して門を抜ける。出門料を取っていない街でも、冒険者は冒険者登録証を提示してから出門した方が良いと教わった。

 これは冒険者ギルドとの連携により、もし依頼遂行が困難で行方が分からなくなった場合など、救助の早さに関わってくるのだということだ。


 街門からほんの少し離れた場所、平原だった。林には入らないようだ。

「よーし、到着。さあ見てごらん、何の変哲もない雑草にしか見えない草が生えているだろう?

 うんうん、そうだね。実際、殆どが雑草なんだけどね。そこでこの草だ、実は薬草なんだよ。この薬草は葉ではなく、根を使うんだ。

 だからこそ慎重に採取しなくてはならない。根を傷つけないようにするだけではダメだ、地面の上に出ている葉や茎も綺麗に採取しよう。とりあえずは、この布の上に土ごと大きく掘って載せてしまおうか」

 ヴァルモさんは僕たちに分かり易いように、ゆっくりと指差しながら説明していってくれた。

 薬草といっても色々な種類、そして採取方法があるのだと。


「薬草をきちんとした形で採取できるというのは、もうこれは一つの才能と云ってもいい。

 採取の段階で処理が不十分だと、全く使い物にならない、なんてことも多々あるのが薬草なんだ。

 おっ偉いね、妹ちゃんメモを取っているのかい? 薬草の種類もそれぞれの採取方法も多岐にわたるからね、覚えるのも大変だ」

 おお偉いぞ霞、僕はそこまで気が回らなかったよ。

「もし旅先などで、珍しい薬草などの植物を採取する場合、処理方法に困ったら鉢植えなどにしてしまうのが良いかもね」

 ヴァルモさんは人差し指を口の前に立て、「秘密だよ」とでもいう仕草をして教えてくれた。


「さてと、もう十分採取できたね。帰ろうか」

 ヴァルモさんは広げていた布の端を持って肩に担いだ、そして僕たちは頷いて帰路に就いた。



「おかえりなさい、大量じゃないの」

「この子達は、とても優秀ですね。ちゃんと話を聞いてくれますし、メモまでとってくれました。あぁこれ受領のサインです」

 今日は殆ど土弄りしかしていないのに、ベタ褒めにされている。

「凄いわね、ヴァルモさんがこんなに褒める子がいるなんて、さすがマスターのお気に入りね」

 うーん、褒められている気がしない。

「また今度、違う薬草でも取りに行きましょう。じゃまたね」

「はい、またお願いします」

 ヴァルモさんは薬草を担いだまま、どこかへ行ってしまった。薬草のエキスパートか、良い人だったな。


「あれ? ヴァルモさんて人間なんですか?」

「そうよ、人間は少ないんだけど良い人だったでしょ?」

「はい!とても優しい人でした」

 霞が答えた、僕も同意だね。

「この辺にいる人間はかなり珍しいスキルを持っている人が多いのよ、彼なんかその典型だわ」

 ただでさえ数が少ないのに、珍しいスキル持ってるとか凄いな。……僕たちも同類なのか?

「それって僕たちも?」


「あなた達はまだ新人だから、そこには含まれないわよ。でも、期待の新星ではあるわね」

 良かったというべきか、新星って…。

「そんなに期待されると困ってしまいますよ」

「大丈夫よ、主に期待しているのは、領主姉弟だから利用しまくってやりなさい」

 アニタおばちゃんは、かなり強かな性格をしているようだ。僕は胃が痛くなりそう。


「はい、これ今日の報酬150シルバー」

「はい、ありがとうございます。それでは、また来ますね」


 今日も無事に依頼を完了したぞ、次も頑張ろう。

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