【裏話】蛇足的な紳士の独白1
のちの世の人々からは『恥ずべき時代』と言われる事になる、この時
忠誠と深秘の国、王を頂点とした国
王族・貴族・騎士・魔法使い・神官・庶民が生きる国
《3の国》といっても、さらにいくつかの国に分かれていて、そのなかでも2・3を争うほどの栄えた国が私の産まれてしまった国。母親の腹の中にいた頃からの記憶がある、それが普通だと思っていたのは遠い昔の事
母は『でんか』と呼ばれていた
さらに耳をすまして見ると、母親の心臓の音、血の流れる音、羊水が揺れる音と共に男女の声が聞こえてくる。と言ってもその当時男女の差なんてわからなかったが、声の調子が違うので複数のヒトだという事だけ、ボンヤリと感じていたのだ
『でんか、こどものちちおやは、だれなのですか?』
『なんて、ふしだらな』
『ふぎ、の、こ』
意味は解らなくとも、声の張りから侮蔑の言葉だと理解した。それは母と共に私への言葉だとも気付く
『あい、しているの』
『あいしています』
それは何?
狭く苦しい道を抜け、明るい世界へと産み落とされる。明るい世界で生きる為に、呼吸器機能を切り替えなければいけない。その為だけに大声で泣いた。そしてそれ以降激しく泣くこともなく、おとなしい良い子として育てられた
私をその身の内で育ててくれた母と言う生き物は、あっさりと私を放棄した。まぁ、それは高位貴族の夫人であればそう珍しい事ではないらしい。私を育てたのは乳母であり侍女であり家庭教師。そして『父』と言う存在があるということを知識として知るが、見たことはなかった
一度も
成長するにつけ、おとなしくて良い子は無口で不気味な子に変化した。勿論私自身は大きさが変わったくらいで、それ以外は何も変わっていないというのにだ。子供らしくないと陰口を叩かれるも、子供らしさとは何だ?
好奇心を刺激された私はそれを知る為に、母とは別の『母』と『子供』やらに会いに行った
残念ながら身体能力は並みだった私は、早々に捕獲され部屋へと閉じ込められる。別の『母』と『子供』に会うことは禁じられていたのであるが、何故禁じられているのか理由はわからなかった。そう子供だったのだ。私は婚約者のいる『父』を寝取った母から生まれた『不義』の子
……あぁ、その言葉は覚えがある
どうやら正しい道の子供ではないらしい、だから子供らしさも知らないのだろう。なるほど、納得した。別の『母』と『子供』、いわゆる義母と義兄(私と同じ男だった)にはかかわらないよう暮らすのが正解なのだと
自分としては関わらず生きてきたつもりなのだが、私の勉強の出来がいいため、何かと義兄と比べられるようになった。すると向こうからかかわってきて、蹴る殴るの暴行を受ける。本妻の息子であり嫡男である義兄の行いを咎めるものは誰もいない、このまま私は機能を停止してしまうのかと思った
それはそれでいいのではないかと誘惑にかられる、生きる気力というものが無くなる
そのころ父と母にも終わりが近づいてきた
贅沢三昧の母に苦言を呈しているらしい『父』
「ここは王宮ではなく、わが家は侯爵家。王族の気持ちのままでいては困る」
「わたくしはおうまいよ、みすぼらしいかっこうはできないわ。わたくしをあいしているのであれば、もっとうつくしくきかざらせてくれるのは、あたりまえのことでしょう?」
「……わかった、姫を美しく着飾らせてあげましょう」
そして王宮へと帰れ
私は初めて見る『父』に手を引かれ、奴隷商人へと売られた。その金で外見だけ美しく着飾った母は、王宮へ行きそのまま帰らなかったという
私は初めに売られた奴隷商人の元で、ボンヤリとすごしていた。なにせ生きようとする気力がないからである。結果何をしてもどんくさい子供として、他の奴隷商人に転売される。しかもかなりお安く転売されたのを見て、あと何回か転売されれば私でも借金を返せるほどの値段になるのではと推測。そもそも貴族として生まれた子供に、労働なんてできる訳がない、使えない子供と評されても仕方ないと思うが黙っていた
はっきり言って、教えてもらえれば同年代の誰よりも上手く出来るようになると思うが、やる気もなかったし
多少暴行を受けるが、そんな事慣れっこだ。そうして何回かの転売の後、頭が良く柔軟性の高い奴隷商人の元へ売られたのは幸運だった。他の商品達が親しみを込めて『おやっさん』と呼んでいるので真似をし、私の売り値をそのまま私の借金として『借金奴隷』になることを望んでいると打ち明ける
おやっさんは驚きつつもそれを了承してくれた
「良い買い物ができた、天才だなお前は。これは『血』の祝福があるかもしれないな」
そう言って王冠の女神神殿へと連れ出された。本来であれば3歳で行う魔術検診を、私は4歳でする事となった(検診を忘れられていたのだ)。結果は『策略の血』という身体的祝福を受けている事、『伸縮自在』という魔法的祝福……いわゆる魔法属性を賜っていることが判明した
身体的祝福は先祖の努力の結晶を『血』に溶かしこむことを許された証、魔法的祝福は女神様から稀に賜ることのできる魔法の力。あぁ、私は天才なんだな……ただしギフトはまだ4歳の為、使えないけれども。そもそも生殖器を使う機能がまだ未発達な子供に、何故そんなギフトを与えたのだろうと首をひねる
『遠い未来の為、必ず現れる貴方と似て非なる立場の姫の為』
まばゆい光に覆われた王冠の女神神殿の拝殿、謎の声が響いた。おやっさんには聞こえなかったようで、空耳かと思ったのだが、判定を行っていた複数の司祭が同時に眉をひそめざわついた
「今」
「あぁ」
「神託が」
どうやら女神様の声だったらしい、そのお声が聞こえてしまった私はその場で司祭位を賜ることになる
「まじかよ!笑える!」
「おやっさん、笑い事ではないですよ……」
おやっさんは奴隷にして司祭となった私に大笑い、私はあまりの展開に泣きたくなった。しかも私の戸籍はすでに抹消され、死んだことにされたいたことが判明
「お前さん、よっぽど親族に邪魔だと思われていたんだな。まぁ金持ちにはよくある事だな」
「……おやっさん」
「もちろん金が無くても、よくある事さ」
とおやっさんはまた笑う。死人は司祭になれないので、神殿が限りなく本物に近い偽装の戸籍を用意してくれた。神殿自ら用意した偽装戸籍、それはほぼ本物ということ。ここでようやく生き返った私は『血』の力を持つ者として、齢4歳にして性奴隷となることが決まってしまったのだった。そうは言ってもまだ4才、取りあえず借金をして勉強することに
将来金のなる木になることは確実な私、目ざとい(もちろん褒めている)おやっさんが手放すわけがなかった
「少し普通の奴隷として働いてみたいのですが」
「普通の奴隷って、お前さんが言うと笑える……ぷぷぷ」
やっと10歳となった私、おやっさんの元で商売の勉強をしたが所詮奴隷商人。普通の商売ではないので、もう少し一般的な商会で学んでみたいと思ったのだ。おやっさんは子供の労働力を提供する事もしていたので(奴隷も孤児も扱っている、もちろん法に則って)、頼んでみたのだった
「奴隷の首輪をしているから奴隷枠でしか働けんぞ?」
「まぁ、奴隷ですからね……もちろんです」
そして普通の商売を肌で感じる。もちろん奴隷なので商談の場なんて見せてはもらえないが、裏方の仕事である荷物持ちもしたし水汲みもしたし、何故か野菜の下ごしらえまでした。私は何をやっても優秀なので、正規の下働きたちからいいようにこき使われる。私としてもなかなか得ることのできない経験なので、唯々諾々と受けた
ちなみに手伝い以上に私をこき使った下働きたちは、こっそり雇用主に密告させてもらった。そういう輩は、私の様な存在がいなくても、必ずサボる人間だから。と同時に真面目に働いている人も報告。私的には小遣い稼ぎになったので、心の中でありがとうという感じだ
そんな感じで貴族の屋敷にも奉公したいと言ったのだが、私は父である侯爵にそっくりすぎて貴族の屋敷は止めておいた方がいいとおやっさんは言う。……いつの間にか私の素性は調べたらしい、さすが出来る奴隷商人
「では、髪を染めるか顔の印象を変えましょうか」
「印象ってそんな簡単に……」
「……」
「……お前、魔術師でもあるのか?」
念じて異なる印象の幻を自分にかぶせると、おやっさんは呆れたようにそう言った。私はてっきり司祭の力だと思っていたのだが、別物だったらしい。そんな感じであちこちの家に忍び込み、知識と経験を蓄えていったのだ
さらに数年後、ようやく二次性徴を迎え性奴隷として働く……前に
「ぎゃ~、怖ッ!ギフト怖い~!あはははは!」
「やっだ~、ちょっとあたしも見る~!うは、すっご~い!」
「お、おなかがいたい……。超ウケる~」
高級娼婦のお姉さんたちに閨の教えを乞う事になったのだが、非常に笑われた
「……これ普通じゃないのですね」
「普通じゃないわよ~、これかなり練習しないと裂けちゃうわよ~」
女神様から賜った魔法属性『伸縮自在』は子種の量を調節して、……その……ナニを大きくしたり長くしたり逆に小さくしたりできるというもの。いや、自分でも変だなとは思っていたが、相当変だった模様。しかしその変なギフトも性奴隷としては有利になるだろうと、お姉さん方に色々仕込まれた
「まあ君の場合、繁殖が目的になるのよね。そこまで奉仕しなくても、媚薬で誤魔化しが効くかもしれないわね」
「繁殖ですか。自分だってまだ子供なのに、子供を作るなんてちょっと……」
「大丈夫よ、育てるのは購入した人たちですもの。種提供だけでいいんだから、楽しめばいいんじゃない?」
「そうですね……、他に楽しみを見つけてみます」
「ガンバレ~」
教えを乞うた代金はかなりの高額だったが、先行投資と思って借金に加算。この時のお姉さん方の助言のおかげで、思ったよりも借金返済がはかどることとなる
本来性奴隷はお試し期間が設けられていて、その期間は本番行為は禁止されそれを破った場合、高額な罰金が科せられるのを逆手に取った勝負。数日大人しくお側に侍り声を響かせ(その声だけで孕むとはお姉さんは言う。そんな訳ないけれど)、慣れてきた頃に焦らして焦らしまくれば、あっという間に盛った購入者から閨に引きずり込まれ本番行為に耽られてしまうのだ
正直購入者のほとんどは繁殖なんて望んでいない、むしろ行為が目的な人々ばかり。自分で言うのも何だが、まだ行為を知らない無垢な少年に悪戯したいと思っている貴族夫人の何と多い事か。性奴隷が行為を知らない訳ないじゃないかと思いつつ、もの慣れない態度で大いに煽りまくって罰金を狙う
無垢なんて私と正反対の言葉
「『血』を専門に扱う奴隷商人、育種家としてはこんな詐欺まがいの商売は誇りにかかわる。奴隷商人のくせにと思うかもしれねえが、ちっぽけでも誇りがなけりゃ商人なんてやっていけねぇよ」
「おやっさんに申し訳ないとは思っています……」
「ただな、繁殖目的の性奴隷をただの欲望の捌け口にされるのは我慢ならん。そういう客に限ってお試しばっかりだ、金を惜しんで出さずに美味いところさらおうって魂胆が丸見えだ。だからお試し期間に見極めて、搾り取るか取られるかお前さんが決めていい。お前さんとは長い付き合いだ、その観察眼を信じている。好きにやってみな」
刃傷沙汰になったって責任は取らねぇけどな、なんて悪徳商人顔で笑ってくれた
その結果借金はほぼ返し終えてしまった、何て爛れた貴族たち。まぁ、そういう風にもっていった私も相当爛れているけれども、なにせもともと私だって貴族出身だ。同じ穴の狢、であった
借金を返し奴隷の証である首輪を外す『鍵』を自ら購入し、奴隷の身分から解放された後も性奴隷として働く。おやっさんには呆れられたが、性奴隷のまま商会を立ち上げ罰金狙いは卒業した。さすがに年齢的に無理だろうと感じたから、というのもある
たまに上級貴族へと嫁ぐ際に、捨てられぬよう閨の訓練をさせたいなんて言う無茶な依頼が舞い込むことがあった。娼妓はいたが男娼のいない世の中、まぁ、それ位ならと何人か後腐れのないご令嬢と閨を共にするくらい
という訳で繁殖目的の奴隷の割に、実子はいない。まぁ、私の子ということは奴隷の子になるからね、お貴族様は嫌がるだろう。




