9羽:目覚め
もぉ何がなんだか判らなくなった。
とにかく自分の病室に戻ることにした。
心に決めた。
病院の消灯時間になり、部屋の電気がパッと消された。
絶対記憶なんか失くしてるはずなんかない……まだショックで記憶が曖昧なだけなんだ……
そう自分に言い聞かせた。
だけど、行かない方がよかった。
「……君は……誰?」
私のことを覚えていない。
あの時のことを聞いても、何も覚えていないという。
ココロが空っぽになった。
自分の病室に戻って声を出さないように泣いた。
「皆のこと忘れ無いって……言ったのに……」
その後も色々あったけど、無事に卒業出来た。
青海君は青海君なりに記憶が一部失くしても仕事を頑張って見つけて、生きて行くつもりらしい。
ユカは……私が町から出て行くまでに目を覚まさなかった。
それで最近目を覚ましたと聞いたので、この町に戻ってきた。
噂ではユカはあの事件のショックでおかしくなったらしい。
でも信じたくない。
真実なら止めてあげたい。
だから会いに行く。
大切な友達をこれ以上、失いたくないから。
***
「ただいまー」
実家に帰ってきた。
「あらあらあら、もぉ帰ってきたの?」
お母さんがエプロンで手をふきながらやってくる。
「もぉー、そんなんじゃないよ。ユカが目を覚ましたって聞いたから、ちょっとだけ休暇貰って帰ってきたんだ」
お母さんの表情は少し沈んだ。
「あらそ―……それより早く中に入りなさいよ」
家族のみんなはとても元気だった。
そんなことより早くユカに会いたかった。
だから夕食前に少しだけユカに会いに行くことにした。
「気をつけるのよー!」
「もお子供じゃないのよ!」
ユカの家にいく途中、この町に住む人たちに出会った。
ただ、私が通り過ぎるとユカの噂話を始めた。
ユカは一体何をやったのだろう。
そう思うと走らずにはいられなかった。




