16羽:門出
荒い呼吸音、激しい心臓音。
風を切り、彼女の元へと走る。
彼の目に2人の女性の姿が映る。
見つけた――
彼の歩幅が徐々に短くなり、スピードも緩やかになる。
「磯崎さん!!」
不意に声をかけられたツユリは驚きを隠せずにいた。
「はっ、はい!」
「僕の夢は、現在進行形で叶えられている」
ユカとツユリはどういう意味か理解できずにいた。
「思い出したんだ、皆のことを、過去を、全てを」
「でもどうして、突然?」
ツユリが問う。
「君がくれた本、そして彼女が書いた本が全てを思い出させてくれたんだ」
ユカは青海が手にしている本を見て理解した。
「あぁ! 私が出版した本だ!」
「えぇ?」
ツユリはさらに驚きを隠せずにいた。
「やっぱりあの本ってユカが書いてたの!?」
「うん、博士の夢を叶えるためにね」
青海は1歩前へ歩みを進め、ツユリに向かって言う。
「2人のおかげで全てを思い出した……あの頃抱いていた思いも」
青海はツユリの肩を抱き寄せ、ギュッと抱きしめる。
「僕も君のことが好きだ!必ず君を、素敵なお嫁さんにしてあげる。だから―――」
それだけの言葉で充分だった。
「うん、うん、嬉しい」
嬉しくて泣きそうなツユリ。
「あの~イチャイチャしている所悪いけど……」
ユカが気まずそうに2人の間に入る。
「こうなると思って、用意しておいたお祝いの品だよ」
ユカの手には何かのチケット。
「これは……?」
ツユリがチケットを受け取り確認する。
「世界一周旅行ペアチケット……?これって」
「それはスミレちゃんの夢。そして私の夢が完成するアイテム!」
「でもなんだか悪いよ」
青海は2人だけじゃと言った。
「そう?そう言ってくれると思って、私の分もあるんだ~」
2人はそのチケットを見て笑い出した。
「でも、どうやってこんなチケットを用意したの?」
世界一周旅行チケット3人分となればそれ相応の費用が掛かる。
どうやって用意したか誰しも気になるところだ。
「ふふ、皆の夢で株をやったり、本を出版したり、歌を作ったりして儲かってるんだよね」
「じゃあこれは皆からのお礼ってわけだ!」
「かもしれない……ね」
ツユリとユカの話の最中、青海がポツリと言う。
「この空は世界中とツナガッテいる、まさしく今も…」
「……?」
青海は軽く笑って続きを言う。
「だから、会えなくなった皆も、この空でツナガッテるんじゃないかなってね」
「この空でツナガル今…か」
ツユリもポツリと言う。
「生きる道の続編はそれで行こうかな?」
「ユカ、まだ博士の夢を継ぐ気?」
3人が同時に笑い出す。
「っで、そのチケットの出航はいつ?」
青海がツユリに聞く。
「えぇっと――――!?」
チケットを見たツユリは気づいた。
「気づいちゃった?そう出航は明日」
「早く帰らないと準備が間に合わないよ!?」
青海は男のくせに小さいことを気にする男だと今分かった。
「会社に有給もらわないと!!」
ちゃっかり現実を見ているツユリ。
「私は完璧だから早く支度してよね?」
彼女は彼女らしくあるために。
皆の夢を背負った3人は、旅立つ。




