14羽:ユカとツユリと
田舎町を全速力で走った。
息を切らしながら、おなかが痛くなりながらも一生懸命走った。
ユカに早く会いたい。
ユカに聞き出したい。
真意を。
「なんで? ユカ、友達でしょ――」
ユカの家に着いたときには服が汗でびしょびしょに濡れていた。
息切れしながらも精一杯声を荒げる。
「ユカー!! ねぇ、ユカー!!」
玄関を荒々しく叩きながらユカを呼ぶ。
突然玄関が開いた。
「誰!? こんなことするのは」
おばさんと目が合って、少しだけ恥ずかしくなった。
「あら、ツユリちゃん。どうしたの? ユカに会いに来たの?」
小さくうなずくと、おばさんは家の中に案内してくれた。
家の中に入ると、上の方から何か楽器を演奏する音が聞こえてくる。
「今あの子、作曲中なのよ。絶対に売れてやるーって言ってたわ。おかしな子よね」
おばさん、ユカはおかしな子じゃないんですよ?
ユカは私の尊敬する人ですから……
「ユカー! ユカー!! ツユリちゃんが来てるわよ!?」
おばさんがやれやれと顔を横に振り、私に直で行ってあげてと指示された。
2階にあるユカの部屋のドアをあけると、そこにはヘッドホンを身につけ、ギターを鳴らすユカが。
熱中して弾いてる途中私の姿が視界に入ったのか、演奏を中断した。
「ツユリ!! どうしたの?」
私はユカにアタックをかました。
ユカは私のアタックの反動でベットに倒れこむ。
私は、そのユカの上に乗っかった。
「どうしたの? 本当に」
ユカが笑顔で問う。
「どうしたのじゃないよ!」
ユカの笑顔が消えた。
「どうして今まで言ってくれなかったの?」
「何を―――」
「私気づいたの! ユカが今までしてきたこと。それまではあの事件のせいでユカがおかしくなったって思ってた。
けど違うんだよね。ユカは、死んだ皆の分まで生きようとしてたんだよね」
ユカは何も言わず一言だけ、照れ隠しのように言い放った。
「ばれちゃってたんだ」
突然目に涙が溢れ出してきた。
「ツユリを泣かせちゃったな、これじゃあ私の夢が叶えられないよ」
ユカは私の頭を優しくなで、隣に座らせた。
「でも、なんで誘ってくれなかったの? 皆が叶えられなかった夢を変わりにかなえてあげるって重大なことを」
「誘えないよ……だって、私の夢、皆が幸せでいれたらそれでいいって夢があるんだからツユリに迷惑をかけられない」
私は首を横に振った。
「ううん、そんなことで私不幸にならない。逆に皆の代役が出来るから幸せな気持ちになるよ!」
「そうかもしれないけど、青海君のこと、嫌な思い出を思い返させるんじゃないかって思って。言えなかった」
なんだかいつものユカの姿を見れて、今度は笑顔が溢れてきた。
「でも、今私は知ってる。だから手伝わせて?」
「うん、そうだね。それに残りの夢はツユリがいないと達成できないし」
ユカが笑って答えた。
「今まで誰の夢を叶えて来たの?」
そう聞くとユカはすらすらと答えてくれた。
川内の夢ー恋人10人は欲しい。
モリちゃんの夢ーゲームセンターのGMになりたい。
畑の夢ー何でもいいから表彰されたい。
忠吉の夢ー駅前で毎週行われるアームレスリング大会で優勝したい。
田渕の夢ーみんなでサッカーをやりたい。
春樹の夢ー株をやってみたい。
キョダの夢ー親孝行したい。
春樹の夢ー株をやってみたい。
佐々木山君の夢ー世界一とまで言わないけど、金持ちになりたい。
チャチャの夢ー貧しい人たちを助けたい。
柴田の夢ー死ぬほど焼肉を食べたい。
先生(博士)の夢ー皆に愛される本を出版すること。
ハッシーの夢ーウェディングドレスデザイナーになりたい。
堀田の夢ー歌を作りたい。
そしてユカの夢ー皆が幸せでいれたらそれでいい。
私が知らないところで、数多くの夢をこなしてきたユカ。
「残りの夢は?」
「忘れちゃったの? 残りはスミレちゃんと、青海君とツユリの夢」
私の夢……考えていたら、体中が赤くなっていくのを感じた。




