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あなたの本心は隠しても無駄です  作者: 弓原もい
6.スパイ事件の真相に迫れ!
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王都にて 選択1

 パーティ会場から戻ってきて、私とレイリーズはドレスを脱いでから第一会議室に向かった。入ると、既にキースとブルームから話を聞いた様子のイオル、ルシェ、ベルロイがいて、皆一様に青ざめた表情で座っていた。


 私とレイリーズが戻ってからも、皆は口をつぐんだまま何かについて考えているようだった。それもそうだ。今日私達がアイレーン王子から突きつけられた事実は、一介の兵士が知る由もないとても重いものだったからだ。


 アイレーン王子は、特務部隊の後ろに何がいるのか、私達がどこまで真実に迫っているか知って、手の内を少しだけ明かしてくれた。


 ダイス帝国の秘密、アイレーン王子の思惑。


 ダイス帝国を攻めるべきだという考え方のアイレーン王子は、自ら動くつもりなのだろう。そのためには、自身が皇帝の座につく必要がある。現皇帝と兄であるキューレ王子を押しのけて。


 だからこそ、ビブリオはキースをアイレーン班に入れようとしているのだろう。オルナーガ家の安寧のために、皇帝の部隊に入るべきだ、と考えるはずだから。


 それを聞いて私達はどうすべきなのだろう? このままキューレ王子につくか、それともアイレーン王子につくか。


 難しすぎる問題に、頭を抱えたくなってしまう。


「まずは今日アイレーン王子から聞いたことをフレイ隊長やゼノ隊長に報告するか、だけど……」


 重い沈黙を破って口を開いたのはブルームだった。皆は困ったように俯いている。


「俺は正直迷っているよ」


 顔色の悪いブルームが引きつった笑みを浮かべる。


「アイレーン王子の話を聞いて……何ていうか、それもありかなって思っちゃったんだよね」


 ブルームの言いたいことはわかる。私は頷いた。


「俺がダイス帝国の人間ならば、相手にこちらの弱味を知られる前に潰しておきたい。俺達は兵士だ。国民を守るために、ユーロラン帝国が戦火に巻き込まれる前に叩く。それが、兵士のすべき選択なような気がして……」


「でも、そうしたら戦いに出るユーロラン帝国の兵士達は少なからず死ぬことになります」


 ブルームの言葉を遮ってベルロイが毅然とした態度で反論した。


「もちろん、ダイス帝国にだって人がたくさんいます」


「じゃあユーロラン帝国の国民が死んでもいいと?」


「そういうわけではありませんが……」


「このまま表面上の仲良しを続けることはできると思うけど、ダイス帝国が俺達を脅威と思っている事実に変わりない。いつか必ず衝突する時が来る。それならば、自国民の犠牲を最小限にすることが俺達兵士の務めだとは思わないか?」


「キューレ王子はどうお考えなのでしょう……」


 レイリーズがぽつりと呟いた。


「うん」


 私はレイリーズの言葉を引き取って続ける。


「私達はキューレ王子の命で今まで動いて来たけれど、王子が実際何を考えているかはまったくわからない。皇帝が結んだダイス帝国との友好条約を続けていくつもりらしいってことはわかっているけれど、ダイス帝国がユーロラン帝国をどう思っているのか、ダイス帝国に能力や魔力を持った人間がほとんどいないことを知ったらどうするつもりなのかもわからない。私は……」


 話しながら考えをまとめていく。


「少なくとも、頭が切れるのはアイレーン王子なんだろうと思った。第二王子という立場上、動きやすいのもあると思うけど、恐らくキューレ王子は知らないダイス帝国の真実を知っていたことから考えても。それがいいか悪いかはわからないけれど」


 美しくて恐ろしい王子を思い出す。あんな人物が皇帝になったならば、本当にこの大陸を統一してしまうのではないかとすら思えるのだ。


「私達は見極めなきゃならない。このままキューレ王子についていくのか、それともアイレーン王子につくのか。そのためには、キューレ王子のお考えを知りたい」


「わかっているとは思うが、そうそう会える人ではないぞ。キューレ王子はアイレーン王子と違ってパーティにもほとんどお出にならないし」


「うん、でも、どうにかして会いたい。フレイ隊長やゼノ隊長にこの事実を伝える前に」


 ブルームがふーっと長い息を吐き出した。


「まさか俺達が、この国の未来を選択するような決断をしなければならないなんてね」


 私達がどちらについたからといって、そのついた方の思う通りに行くとは限らない。私達はただの兵士。国を変えるような影響力はない。しかし、私達は未来を選んで、それに向けて兵士としてどちらかの王子を精一杯支えていくしかない。


「まずは考えよう、どうやってキューレ王子とお会いするかを」


 フレイ隊長とゼノ隊長は、私達が王都に戻っていることは知っていても、アイレーン王子と接触したことは知らないはずだ。スパイからどれだけの情報を引き出せたかわからないが、まだスパイにアイレーン王子が関わっていることは知らないと思われる。


「いっそのことストレートに会いたいって言ってみる?」


「いやあ、それは……」


 私の提案にキースは渋い顔をする。


「でも、私達はキューレ王子に使われてるようなものなのに、1回も直接会ったことがないなんておかしくない? それに、たぶんあんまり時間がないよ」


「時間が?」


「うん。アイレーン王子は私達に自分の野望を伝えたら、キューレ王子に伝わる可能性があるってことくらいわかってる。伝わってもいいって思えたから言ったわけでしょう? だとしたら、伝わっても問題ないくらい事態が進んでるってことだよ」


「つまり……」


「アイレーン王子が皇帝の座につくために行動を起こす日が近い、ってことだよ」


 私がそう断言すると、全員の顔色が一層悪くなる。


「皇帝の薬物流通を告発するのと同時にキューレ王子にも何か仕掛けてくるはず。そして、そのまま自分が皇帝になるつもりだよ」


「キューレ王子が一度皇帝の座についたら、引きずり下ろすのは大変になるだろうから、同時に事を起こすってことか」


 そうしたらユーロラン帝国は大きく変わってしまうだろう。


「なるべく早くキューレ王子に会いたい。小細工してる時間はない。どうにかしてゼノ隊長を説得しよう」


「なんて言うんだ? 王子にだけ伝えたい事があるから、直接会わせてくれ、とか?」


「どちらにしても、キューレ王子に会ったらアイレーン王子から聞いたことを話さざるを得ない。私の能力を使って知ったスパイの事実は話せないけど、ダイス帝国の秘密については話す必要がある。どのくらいの人達に伝えるのか判断しかねる情報を得たので、キューレ王子の判断を仰ぎたい。王子に会わせてほしい、って言うとか?」


「それしかない、か」


 全員が頷く。


「すぐに連絡を取ろう。イオル」


「はい」


 イオルがフレイ隊長へ連絡を取るために力を使い始めた。

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