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あなたの本心は隠しても無駄です  作者: 弓原もい
4.ユーロラン帝国の闇
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リルルートにて狙われた特務部隊1

 頭がガンガンする。胸もムカムカして気持ち悪い……。


 薄く目を開けると眩しい光が入ってきた。あれ、私、何やってるんだっけ?


「ようやく起きたわね」


 側でミシッと木が軋む音がした。耳元ではっきりと水音も聞こえる。


「水飲みなさいよ」


 開かない目を無理やりこじ開けると、私を見下ろすイオルの顔があった。

 ゆっくりと身体を起こすと、イオルが水の入ったコップを渡してくれた。自分の身体は思った以上に乾いていたようで、一気に飲み干してしまった。


「ありがと……。今何時?」


「もうすぐお昼よ」


「お昼……えぇ!?」


 私の目が一気に覚める。今日はリークル神国との国境で行われているお祓いの様子を見に行く予定ではなかったか。


「キース達は?」


「朝から国境に行ったわ」


「何で私はまだ寝て……」


「あんた覚えてないの?昨日のこと」


 イオルがうんざりした様子でため息をつく。


「あんたとレイリーズ、散々飲んで酔っ払ったでしょ? そのまま夜中唸ってるし朝も起きないし」


「う、嘘でしょ?」


 頭がぼんやりとしている。確かに昨夜はみんなで飲んだ。レイリーズが酔っ払って私にお酒を飲ませてきたのも覚えている。


 その後も楽しく飲んで、キースの人相が悪いことをいじったりもしたような。それをキースに怒られて帰りまで機嫌が悪くて……


 隣のベッドを見ると、レイリーズが顔を歪めて苦しそうに寝ていた。


「あー、なんとなく思い出してきた」


 私は自分のこめかみを押した。任務中だというのに何やってんだろ。

 ゆっくりとベッドから出て着替えを探す。


「ちょっと、何やってんの?」


「すぐ行かなきゃ」


 国境にも行きたいし、キャッセル家のことも街で聞いてみなければ。私は着ていた服を脱いだ。


「まだ起きたばっかりじゃない。レイリーズだって寝てるし」


「大丈夫。一人で聞き込みに行ってくる」


「はぁ? 勝手な行動しないでよ。あたしはキース様からあんた達を見てるように言われてるの」


「私はもう大丈夫だから。街で薬物の情報を仕入れないと」


 話していると頭がだんだんはっきりとしてくる。薬物の手がかりを掴まなければ。


「勝手なことばっかり。そんなに功績上げたいわけ? それともキース様に気に入られたいから?」


「は? 何言って……」


 カチンときてイオルを見ると、考えていたより遥かにイオルは怒っている様子だった。


「何であんたそんな怒ってるのよ」


「怒るわよ。私はあんた達がうんうん煩く唸ってる中寝て、起きてからもあんた達の看病して、それで起きたらすぐ出てくって? いい加減にしてよ!」


 ガタッと音を立ててイオルが椅子から立ち上がった。


「治ったんだから仕事するのは当たり前じゃない」


「それで無茶して振り回されるあたし達の身にもなってよ。何なのよ、あんた!」


 イオルの顔は僅かに上気して赤い。歯をぐっと食いしばって私のことを睨みつけている。


「それならあたしが行く」


「……は? 何言って……」


「あたしが街で聞き込みして薬物の犯人もスパイだって見つけてやる! そうしたらキース様もブルーム様も、あたしのこと好きになってくれるかもしれないし」


「は? 私はそんなことのために仕事してるわけじゃない」


「そんなことって何よ! あたしにはそれがすべてなの!」


 息を荒くしたイオルがずんずんとドアへ向かって行く。


「レイリーズのことはよろしく。ちゃんと見ててよね」


「ちょっとイオル……」


「あたしにだってできる。バカにしないでよ」


 イオルはそう言い捨てると、荒々しく外へ出て行った。な、何なんだろう。急な展開に頭が追いつかず、私は服を脱いだまましばらくその場に立ち尽くしてしまった。


 私は昨夜、イオルに何か気に障るようなことを言ったのだろうか。イオルが1人で聞き込みをするって? そんなことが果たしてできるのだろうか。


 追いかけようかと着替え始めるが、レイリーズがうーんと苦しそうに唸った。レイリーズは昨夜のことを覚えているだろうか。もし覚えていなくて起きたならどんな状況かまったくわからないだろう。


 それどころか、具合が悪いのに誰もいないのは流石にまずいか。お酒を飲みすぎて死んだという人の話も聞いたことがある。1人にしておくのは不安だ。


 私は観念してイオルが座っていた椅子に座った。ここでレイリーズが起きるのを待つしかなさそうだ。


***


 静かな時間が過ぎていく。体調が万全でないので身体は重く、怠い。いつもうるさいメンバーと常に一緒にいるからか、静けさが身に滲みる。私は元々静かに1人で過ごすのが好きなんだ、ということを思い出した。この時間は身体を休めるためにも有効な時間だろう。


 時間が経つのが恐ろしく長く感じる。時計を見ても針が全然先に進んでくれない。カーテンから漏れる外の明るさが時間が進むのをさらに遅くしているかのようだ。


 私の心もざわついている。イオルは一人で大丈夫だろうか、何故突然怒ったのだろう。考えても仕方のないことばかり考えている。


 イオルが出て行って1時間半の時が経った頃。レイリーズが掠れた声で、


「リコ……?」


 と、私の名前を呟いた。見ると、腫れぼったい目を薄く開けて私のことを見つめていた。私は立ち上がってイオルがそうしてくれたようにサイドテーブルの水をグラスに注ぎ、レイリーズが起きるのを支えて飲ませてやった。落ち着くと、レイリーズはゆっくりと部屋を見渡した。


「ここは……?」


「宿。リルルートの。私達、酔っ払って具合が悪くなったみたい」


「酔っ払って? お酒、ですか? そういえば昨夜、お酒を飲んだような……」


「覚えてない?」


「……はい、あまり」


 レイリーズは苦い顔をした。


「具合はどう? 大丈夫?」


「寝ている間、ずっと苦しかった記憶はうっすらあります」


「ずっと唸ってたよ」


「すみません。もう大丈夫そうです」


 うーんとベッドの上で伸びをした。


「リコが看病してくれていたのですか?」


「途中からね。私が起きるまではイオルが」


「ありがとうございます。イオルにも後で謝っておかなければ。……それで、イオルは?」


「それが……」


 私はイオルが突然怒って出て行ってしまったこと、キース達がお祓いの場所に向かったことを告げた。


「私はなんてことを……」


 レイリーズは頭を抱えてから、


「キースさん達もイオルも遅いですね。イオルは特に心配です」


 と、言った。


「そうなんだよ。一緒に探しに行かない?」


「そうですね」


 レイリーズが着替えのために立ち上がった時、コンコンと部屋がノックされた。返事をすると、ブルームが顔を出した。


「あ、起きてる。大丈夫?」


 ブルームに続いてキース、ルシェ、ベルロイも部屋に入ってきた。イオルはいない。


「申し訳ありませんでした」


「ごめんなさい」


 レイリーズと私は揃って頭を下げた。


「まったくだ。もうお前らには酒は飲ませない」


「言い返す言葉もございません」


 キースの言葉にも私達はただただ頭を下げるしかなかった。


「あれ、イオルちゃんは? 連絡ないな、とは思ってたんだけど」


「それが……私が先に起きて出かけようとしたら怒っちゃってさ、聞き込みに行くって1時間半くらい前に出たまま帰らないんだよ」


「イオルちゃんが?」


 ブルームも不思議そうな顔をした。


「私達、昨日イオルに何かしたのかな?」


「猫かぶり女! とか言ってたな」


「それで怒っちゃったのかな」


「それは違うよ」


 固い表情のベルロイがその考えを否定した。


「それに対して怒ってはなかったよ。イオルは出てく時何か言ってた?」


「えっと……」


 私はチラッとキースとブルームを見てから、


「そこまでして功績上げて男に媚びたいのか、とかそういうこと」


 と、ぼかして言った。それでもベルロイはわかってくれたようで、


「そうか」


 と、厳しい顔のまま俯いた。


「こちらから連絡してみようか」


 ブルームが持っていたイオルの通信石を取り出した。


「そうしてくれ」


 キースがそう言うと、ブルームが石を強く叩いた。しかし、しばらく待っても反応がない。


「どうしたんだろう」


「探しに行こう」


 私達は表情を引き締めて頷く。


「聞き込みに行くって言ったんだよね?」


「そう」


「それならどこかの酒場か何かかな? イオルちゃんがいないから通信は使えない。三手に別れて時間を決めて探すか……」


 そうブルームが指示している時に、通信石が淡い色を放ちはじめた。ただ、それは酷く弱々しい。私達は一瞬目を合わせてから、


「イオルちゃん?」


「イオル!?」


 と、それぞれに呼びかけた。ざ、ざ……と雑音が聞こえて、微かに人間の声が聞こえてきた。嫌な予感がする。私はもう一度、


「イオル! 返事して!」


 と、声を張り上げた。


「……けて」


「え?」


「たす……けて」


 聞こえてきたイオルの声は遠く、酷く弱々しいものだった。何かがあったのは間違いない。私の背中にヒヤッとしたものが走る。


「イオル!? どこにいるの!?」


 私はもう一度必死に呼びかけたが、通信石の光は徐々に弱まり、遂に消えてしまった。

●能力紹介


ベルロイの火魔法

基本的には大きな斧を振り回して戦う。

優秀な属性とされる火魔法を持つベルロイだが、それはほとんど使わない。

理由は、制御がまったくできず、全魔力を一気に使ってしまうからだ。

魔力が切れるとしばらく身体が動かなくなってしまうので、最後の切り札としてしか使えない。

ただ、全魔力を使い切るだけあってその威力は凄まじく、街中で使ったら小さい街ならなくなってしまう恐れすらある。

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