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■第70話 リュータの決心


 

 

 『リュータはさ。 なーぁんにもしてないんだよ。』

 

 

リカコが単刀直入に言い切った。


その口調は鋭くて、しかしまるで親が子供を諭すようにちゃんとあたたかさが

滲んでいる。リュータはいまだ俯いたまま、ただ黙って聞いている。

 

 

 

 『今まで、頑張ったのはナチだけなんだよ。

 

 

  あの小さい体で、リュータに好かれようと頑張って、


  自分の全部を使って愛情表現して、泣いて笑って・・・

 

 

  頑張ったのはナチだけ。ナチ一人だけ。』

 

 

 

黙りこくるリュータの耳が微かに赤くなってゆく。

不甲斐ない自分をいやという程に痛感させられていた。

 

 

 

 『頑張って頑張って、それでも伝わらないからナチは引いたんだよ。


  一方的な気持ちを押し付けちゃ迷惑だって思ったんだろね・・・

 

   

  それで、今に至る訳でしょ?


  ナチ、頑張って勉強してるよ。ちゃんと前向いて自分の足で歩いてる。

 

 

  自分の気持ち一つ分かんなくてグダグダしてるアンタなんかより


  ずっと頑張ってるし、ずっと正直だよ。』

 

 

 

コクリとリュータが頷いた。


学食堂テーブルの下で組んだ指先が、居場所なげに落ち着きなく絡んでは解

ける。大きなはずのリュータの体がまるでいじける小学生男児のそれよう。

  

 

暫く沈黙が続いた。

リュータは何かを考え込んでいるように眉根をひそめたまま口をつぐむ。


リカコはそんな様子を見守る。リュータを急かしたり、どう思ったかを問い

詰めたりはしない。敢えてキツイ言い方をして、リュータにハッキリ気付か

せるべきだと思ったのだった。

 

 

すると、居心地の悪い時間が恐ろしくノロノロと過ぎた後、リュータがポツ

リポツリと喋りだした。

 

 

 

 『曖昧なままじゃダメだと思って・・・


  いや、コレ。 言い訳になるかもだけど、


  アイツの為に・・・ ダメだと思って・・・

 

 

  で。 それ、言ったら・・・

 

 

  アイツ、


  俺に、”ごめん ”、 ”仲間の一人でいい ”って・・・

 

 

  正直、強えぇな・・・って思った。


  その後みんなで会っても、まじで普段通りの、元気なアイツで・・・


  俺だったら、あんな風に笑って普通に出来るかな・・・って。

 

 

  すげぇな、って・・・


  でも、逆に・・・ ダイジョーブかな、って気になって


  泣いてないか、ムリし過ぎてないか、気になって気になって・・・

 

 

  俺さ・・・


  なんか、段々・・・ 今までとは、違う、っつーか・・・。』

 

  

 

リカコが安心したように優しく微笑んでひとつ相槌を打ち、言った。

 

  

 

 『それが、アンタの ”答え ”なんじゃないの?』

 

 

 

そして、続ける。

 

 

 

 『でもさ・・・


  今、ナチは自分の先のことをしっかり考えて、前進してる訳じゃん?

 

 

  今アンタが ”やっぱりお前の事が ”なんて切り出したら、


  やっとリュータ中心の生活からそれ以外に目を向ける努力してんのに


  全部壊しちゃうんじゃないのかな・・・。』

 

  

 

顔を上げリュータが頷く。


それは先程までの自信なげなそれとはまるで別物のようで。

その目の奥には確かな光が宿り、その口元には優しくて強い笑みがこぼれ。

 

 

 

 『距離おくよ、このまま・・・


  ”その時期 ”が来るまで、アイツを見守る・・・。』

 

 

 


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