続々!
いままで完結設定してましたが、また始まりました。すごい続きます。
ブクマ&評価&感想ありがとうございます。
続き〜って言われて私の中のインスピが爆発しました。
またよろしくお願いします!
ちょっと自分になにか変なものが付いてるのかなと悩み始めた私です。
ちなみに流架に怒られた次の日は寝不足でした。あれで話が終わったかと思ったらまだまだだった。むしろあとからが本番だった。防犯のなんたるかを叩き込まれたけど、流架より私のほうが知ってるよ……? そう言ったら冷たい目で見られたから黙ったけど。
最近学校では元王子に付きまとわれ、家では流架の精神のケアというハードスケジュールをこなしてます。
元王子とはいつの間にか友人関係。なんてことでしょう。断れなかった私が悪いって知ってる。そしてみんなにモテモテの元王子と友人関係になった私は女子に睨まれてる。辛い。
流架は流架でどこから聞いてるのか、なんでまた元王子と話すの〜って駄々っ子になるし。なんで私と元王子の会話知ってるんだろうとは思うけど気にしない方向で。
……流架って友達いるのかな。少し心配だ。
それにしたってなんてたって、今日の私はとても機嫌がいい。
今日は食堂で私の好きなカレイの唐揚げが出る日。マニアックだから月一なんだよ。しかも数量限定。
はじめて食べたときは感動した。前世でどれだけ佗しい食生活だったかよくわかった。
美味しすぎるよ! 魚の揚げ物!
「真凛」
「あっ、若王子くん」
ふふん、と鼻歌まじりに食堂に向かってると、そこには元王子の姿。
なんだかんだで名前を呼ばれてる。まあ、名前なんて記号みたいなものだから呼ばれてもべつにいいんだけどね。
「私も一緒に食事をとってもいいだろうか?」
「え……あ、うん。いいよ」
一瞬断ろうとも思ったけど、周りの視線が痛かったから頷いた。
ごめんね! 周りを気にする女でごめんね!
でも視線が痛いんです。きっと今日の夜も流架にネチネチ言われるんだろうなぁ。
なんて考えながら、元王子と食堂に向かう。その間私たちの間で交わされるのは授業について。真面目だよね、元王子。
今度古典教えてくれるって。数学は魔法学と似てて好きなんだけど、古典ってわけわかんない。なにあの呪文。英語も苦手だけど古典が一番嫌い。
そんな世間話をしてると、バッと目の前に立ちふさがる女子。
「グレン!」
あ、男爵令嬢だ。
私の顔を覚えてないのか、男爵令嬢の視線は元王子にだけに向いてる。
というか、彼女は私の顔知らないんじゃないかな。
学園に通ってた頃の私は常に薄いヴェールで顔を覆ってた。理由? 王様が周りも顔を見せない女とどうこうしようとは思わないだろうからつけてろって。ていうか貴族たちに次期王妃としての顔見せの意味で通ってたのにそれでいいんかい、と内心思ってたけど口には出さなかった。えらい、マリアーナ。
そんなわけで私の顔がみんなに晒されたのは処刑されたとき。あとは学園に通う前は塔で監禁生活してたから、元騎士と元王子と元義弟しか知らない。
こう考えるとマリアーナって神秘的な人だったんだね。私のことだけど。中身はほぼこんなのだったけど。
「グレン、だよね?」
信じられないとでも言うようににじり寄ってくる男爵令嬢。
私はというと元王子の背に庇われながら首をかしげる。
まだ元王子と接触してなかったんだ。それにびっくり。
男爵令嬢って、元騎士とすごく仲良くしてるからもう元王子とも接触してるかと思ってた。それに元王子も私より先に男爵令嬢に接触してたのかと思った。だって、結婚したんでしょ? ラブラブ夫婦だったんじゃないの? まあ、わかんないけど。
なんで元王子が私に接触してきたか? 元婚約者を殺しちゃって悪いなーって思ってたんじゃない? なけなしの良心。
「すまないが、私はグレンという者ではない」
「えっ……記憶が? でも、夜瑠も桃真もあったのに……?」
えっ。夜瑠って元騎士だよね? あの人も記憶あんの? 中学までそんな素振り一切見せなかったけど。
じゃあ、トウマって誰だろ。同じ学年に記憶がありそうなのはいないと思ったな。確か。
ぶつぶつと呟く男爵令嬢は相当不気味だ。元王子はそんな男爵令嬢から私を隠すようにして私の手首を掴むと、男爵令嬢を置いて食堂に向かおうとする。
元王子のスルースキルすごい! 今初めて元王子のこと尊敬した!
でも元王子って前世の記憶あるよね? 嘘とかついて大丈夫? 元奥さんだよね? 男爵令嬢。私に気とか使わなくていいんだよ? 全然全く気にしないから!
「あ、ま、待って!」
「……なんだ」
「私、早乙女結花っていうの!」
男爵令嬢は元王子の腕に縋るように飛びついてにこっと笑う。花が咲くような笑顔は見てて可愛らしい。
実は私、男爵令嬢のことをほとんど全く知らない。
私の罪をでっちあげたことは知ってるけど、ほら。恋する乙女って過激なところあるからしょうがないよねっていう。
「そうか。では、これで失礼する」
「えっ、えっ?」
自己紹介した男爵令嬢に対して冷たくそう言い放つと、私の手首を掴んだまま歩き始めた元王子。
あ、男爵令嬢と目があった。
ひぇっ。めっちゃ睨まれた。やばいって。これはまずいって。
恋のために人一人処刑に追い込んだ女の子だよ? 私がまた犠牲になったらどうする!
ピタッと立ち止まると、元王子は不思議そうに首を傾げる。最近思うんだけど、元王子って犬みたいだよね。たまに行動が可愛い。
流架のほうが百倍かわいいけど。
私は元王子の目をまっすぐ見つめて口を開いた。
「……あの、差し出がましいようですけど、話を聞いてみたらどうです?」
「いらない。早く行くぞ」
えぇ……。夫婦喧嘩? 夫婦喧嘩なんです? 元騎士と男爵令嬢の距離が近いから? 我慢しようよ、元王子。嫉妬は醜いよ。
……流架のあれも嫉妬の類なのかな。小学生だとかわいいもんだけど、高校生(しかも前世持ち)の嫉妬はちょっと……。
グイッとまた元王子に引っ張られて、こけそうになりながらもまた歩き始める。
「グレン!」
「私をその名で呼ぶな!!!」
後ろから男爵令嬢が元王子の名前を呼んだと思ったら、元王子が吠えた。間違えた。怒鳴った。
前世で私を断罪したとき以外では怒鳴ったことのなかった元王子が怒鳴った姿を見て丸くする。
なんでそんな怒ってるの? 夫婦喧嘩で巻き込むのやめてほしいんだけど。切実に。
「……なによ。なんでそんなに怒ってるの! わけわかんない!」
「わけが、わからない、だと?」
ちょ、あの、痛い。手首がミシミシ言ってる。超絶痛い。
「若王子くん、手首痛いんだけど離してもらってもいいかな」
「……すまない」
ハッとした表情で私を見たあと、しゅんと頭をさげる元王子。尻尾が見えた。幻覚だ。
そして手首は離してくれないんだ。そうですか。
流架ーー! 助けてーーー!
「グレン……本当に私のこと覚えてないの……?」
「私は若王子蓮だ。グレンという男は知らない」
「そんな……! あんなに、あんなに愛し合ってたのに……!」
一人の女を処刑するほどに愛し合ってたのにねー。
ちょっと嫌味を心の中で呟いてみる。というか二人は周りの視線とか気にならないの? すごい野次馬いるんだけど。
お腹すいた。早く私にカレイの唐揚げください。
ていうか、前世のことなら二人で話せばよくない? どうして私を巻き込むの? 人は空腹で死ぬんだよ? せめてお昼食べてからやってよ!
「あれ〜? 結花? なぁにやってんの?」
「あ、桃真!」
お腹に力を入れて、お腹が鳴らないように必死で我慢してると、人が増えた。
桃真と呼ばれた男を見て、驚いた。
「……なんで」
そこには前世の異母弟がいた。
つまりあれですか。トウマとやらは私の異母弟だった子のことですか。え、全員集合?
目を大きく見開くと、元異母弟と目が合う。元異母弟も私を見ると目を大きく見開いた。
あ、やばい。ハッとしてすぐに普段の表情へと戻る。
バレてたらどうしよう。心臓がバックバクしてる。いきなりだったから取り繕う暇なかったよね。
というか、なんでいるの? 中等部、なわけないよね。え、まさか。
チラリと元異母弟の上履きを見る。上履きの色は緑。つまり、年上だった。
うわぁ。こわ。
ちなみにこの修羅場のせいで私のすごく楽しみにしてカレイの唐揚げは食べ損なった。ちょっと本気で泣きそうになった。