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続がいっぱい 2

 次の日。今日は流架が来るってきいてソワソワが止まらない。

 念のため四時間目はいっぱい寝た。流架のいる前で寝れないじゃん。

 私は流架の前ではかっこいいマリアーナでいたい。マリアーナは授業サボらなかっ……サボってた。

 そうだ。ルカと散歩とかしてた。幻覚魔法使って、幻覚に授業を受けさせてた。幸か不幸かマリアーナを指す教師なんていなかったし、ルカと空中散歩してた。


 マリアーナもサボリ魔だったことを思い出して項垂れてるとお昼休み。

 さて、ご飯ご飯、と思って立ち上がる。


「まりんおねーちゃん! きちゃった!」


 ……はっ!


「な、なんで流架! あ、ちょ、流架!?」


 語尾にハートマークがつく勢いで私を呼んだ流架に慌てる。

 来るの五時間目じゃなかったの!? あ、もしかして授業中寝てたのバレ……?

 いやいや、そんなことよりも!

 ダッシュで流架の元に向かって、流架の手を取る。

 注目が辛かった。……あと、元男爵令嬢が流架のこと見て目を見開いてたから、ね。


「流架、こっち来て」

「まりんと手ぇつないでるところみんなに見られちゃうね」


 いまはどうでもいいよ、そんなこと!


 流架を連れて屋上の踊り場に向かう。何度か来たことあるけど、あの花壇と同じくらいここは穴場です。誰もこないのだ。

 ここに来るまでは視線が痛かったけど、この場には流架と私だけ。少し安心する。


「なんで流架がここにいるの?」

「せんせいに先に来てもいいか聞いたら、いいって言うからきちゃった」

「先に言ってくれればよかったのに!」


 きちゃった、じゃないよ! もう!

 なんか最近の私は流架にすごく振り回されてる気がする。


「ごめんね、まりん。いや、だった……?」

「うっ……いや、とかじゃないよ。ただ、流架はかわいくて目立つから、みんなに見られるの嫌だったの」


 うるうると涙目で見られたら、嫌だとか言えない。絶対無理だ。私の言葉に流架はキョトンとしたあと、顔を真っ赤に染める。

 今のどこに顔を赤くする要素があったのかわからない。流架って照れ屋さんだよね。ルカよりもすごく顔に出る。


「ルカ!!!」


 りんごみたいになった流架を見てると、階段下から流架の名前を呼ぶ声が聞こえて振り返った。


 ……なんで?


「ルカになにしてるのよ! どいて!」


 そこにいたのは元男爵令嬢。

 なんでここにいるんだろうと首を傾げる。

 ついてきてたの、かな? それより、なんで流架の名前知ってるんだろ? ……あ、もしかしてルカの方? でも、ルカと元男爵令嬢に接点はなかったはずだけど。

 私が考えごとをしてる間に、元男爵令嬢は階段を登ってきて、私と流架の前に立つ。


「なんであんたがルカと一緒にいるのよ!!!」

「えっと、流架と私、一応親戚……」

「あんた、蓮と夜瑠だけじゃ足りなくて私のルカまで奪う気なの!? この淫乱ビッチ!!」


 いんらんびっちとは。

 私の言い訳なんてきいてない! とでもいうように凄まじい勢いで攻撃してくる元男爵令嬢から流架を守るために後ろに隠す。

 あと、元王子と元騎士は奪った覚えがありません。あなたのものですよ?


「ぼくのまり、」

「ルカ! 私、私よ! ユリアよ! 覚えてるでしょう? 私たちの最後! 愛し合ったの!」


 流架が私の背中から出ようとする。それを抑えれば、元男爵令嬢はそんな私を押し退けて、流架の肩に手を置いた。

 流架に必死で追い縋るように話しかける元男爵令嬢に少し茫然とする。


 ルカまで、元男爵令嬢と関係があった、?

 いやでも私が死ぬ前までは絶対関係なかったし、私が死んでからの話でしょ。しょうがないよね。しょうがない。

 だって、死人に口なしって言うし。というか、ルカの手を取らずに死んだ(マリアーナ)が問い詰めることなんてできない。


 でも、なんでそしたら流架は私といてくれるんだろ。ルカはマリアーナが好きだったから? でも、元男爵令嬢もすき? ん? わけわからんね。


「……あれっ?」

「まりんっ!」

「流架?」


 流架が元男爵令嬢の手を跳ね除けて私の元に来る。

 私より、少しだけ低い身長。幼いけど、男の人の手をした流架の指が私の頬を撫でる。


「ルカも、」


 そこから先はなんだか声にならなかった。

 笑って「ルカも男爵令嬢が好きだったの?」って聞ければよかったのに。

 喉にべったりなにかが張り付いたように、声が出ない。


 おかしい。変だな、私。

 えへ、と誤魔化すように笑うと、流架が絶望したような顔でぶんぶんと首を振る。

 そんなに首を振ったら首取れちゃうよ、流架。


「ちがう、ちがうっ! ぼくはちがう!」

「……あ、」


 うまく笑えなくて目が痛い。ツンと鼻の奥が痛い。心臓がなんか、痛い。

 大丈夫、大丈夫だって言わないと。なんで泣いてるんだろ、私。


「だいじょ、」

「っ、なによなによなによ!!! 私を愛さないあんたたち(キャラクター)なんて死んじゃえ!!」


 ドンッ、と元男爵令嬢に押された流架が目の前で落ちてく。流架はなぜか抵抗しない。いつもだったら、あの運動神経で避けるのに。

 なんでそんなに泣きそうな顔してるの? なんでそんな絶望した目で私を見るの? もう、しょうがないなぁ。

 自然と手が伸びた。グッと手を伸ばして、流架を自分の腕の中に引き寄せる。


 なんだかやけにスローモーションに感じた。

 魔法、使おうかな、と思ったけど、今の混乱してる私が使ったら暴走しちゃうだろうな。そう思って、流架を腕の中に閉じ込めたまま目を閉じる。


 ああ、痛いだろうなぁ。絶対痛い。

 私も、マリアーナも、痛いのなんてあんまりなかったからなー。痛みに弱いんだよ。

 あ、首を切り落とされたときは一瞬だったし、元騎士の腕がいいおかげで痛みは全然なかったんだよ。


 それにしても、流架が(マリアーナ)が死んだあとのこと教えてくれなかったのは、元男爵令嬢のことをすきになっちゃったからだったのかなぁ。

 それなら納得。主人の仇を好きになったら言いづらいよねぇ。

 別に気にしないのに。

 ……ん、あれ、気にしてるのか、私。

 えー、ちょっと心の狭い自分に気付いて大ショック。

 無意識にでもルカは(マリアーナ)のものっていう独占欲があったのかなー。

 女って怖いなぁ。


 血走った目で落ちていく私たちを見てる元男爵令嬢を見て苦笑をこぼす。


 なんかもう、ありだよね。

 死んでもなんか、後悔しないや。


「まりんっ!」


 だいじょうぶ、だいすきだよ。


 流架の身体を自分の身体で覆うようにして私は階段に打ち付けられる。

 二度、三度、滑り落ちるようにして、階段から落ちると、全身に痛みが広がった。


 最後に頭に大きな衝撃を受けて私の意識は飛んで行った。

 最後に聞こえたのは震える声で私の名前を叫ぶ流架の声だった。


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