続々続々続々
最近、元王子も貢物を持ってくる。
「真凛、確か真凛はカレイのから揚げが好きだったよな?」
「はい、まあ、すきです」
「本当だったら私が作ることができればよかったんだが、それはさすがに無理だったから家の者に作らせてほら。今日のお昼にどうかなと思ってな」
大事なことなのでもう一回言うね。
食べ物に罪はねーのである。
最近は元王子も元騎士もお弁当とかお菓子とかくれるから助かる〜。
この学園って、さすがお金持ち学校とだけあって、学食もバカ高いんだよ。それが元王子が持って来てくれるお弁当のおかげで無料。
いい言葉です。ご当主様にも迷惑がかからないし。
流架にも文句言われるかなーと思ったけど、意外なことに文句は言われなかった。バレてないと思われる。
うーん、言われなかったら言われなかったで寂しいこの気持ちなんだろ。
ただ、ひとつ、いやふたつくらい問題がある。
まずひとつめは、元男爵令嬢が当然のように一緒の席に座ってること。元王子と元騎士は何故か嫌そうだ。あんなに仲良しだったのに。元男爵令嬢も「君を好きになることはない」まで言われたのにメンタル強し。尊敬する。
で、ふたつめ。ふたつめは、
「じゃ、ちょっともらうッスね〜」
「あーーー」
佐東が奪うのである! 私のお弁当とお菓子を! ちょっとずつ!
しかも毎回警戒してるのに、お前は忍者か! ってレベルで自然と毎日!
しかも私の言葉は総無視。もう今こそ魔力を使うべきかなって。
思う? やっぱり思うよね?
「そんなことで怒るの? 心が狭いわね!」
ジトッと佐東を睨んでると、元男爵令嬢が鼻で笑いながらそう言った。
ピッシャーンと雷が落ちたような衝撃。
心? 狭い? 私が?
……別に怒ってないよ。佐東のことだって私は許せる。食べ物の恨みは忘れないけど、魔力を使うほどじゃないし。
「……さと」
「あーっと! 電話だーっ! ちょっと電話に出てくるッス!」
話し掛けようとしたら無視された挙句、逃げられた。
佐東、あいつ私に喧嘩売ってる。
「そうだ、真凛。明日はゼリーを作ろうと思ってるんだ。なにか食べたい果物はある?」
「みかんとナタデココ」
「わかった」
「夜瑠がさっぱりしたものならこっちは冷やしゃぶのゴマかけとかがいいだろうな。ゼリーと合う気がするんだが」
元王子は天才かもしれない。
ゼリーと冷やしゃぶ。学校では食べれない組み合わせ。だけど金持ちという魔法の言葉によって学校でも食べられる素晴らしい組み合わせ。
……って、違う。なんか最近この人たちがそばにいることに慣れてるけど違うでしょ。
「……あの、若王子くん、クラスに戻らなくていいの?」
「だってまだ休み時間だ。どうして戻るんだ?」
「え、どうしてって……」
私の言葉に首を傾げながら逆に問いかける元王子。
うん、まあ、特に理由はないよね。私が戻ってほしいだけで。でもさすがにそれを言うほど冷たい女でもない。
心の中に秘めておくだけにしておきますとも。
「ない、ですね」
「だろう?」
うーん、うーん、なんか違う気がする。
「ちょっと、蓮。なんで私よりもそいつを構うのよ」
悩んでると、横から聞こえた女の子の声。
元男爵令嬢は本当めげないと思います。
元王子に絡みながら、私を睨むという細かい芸当をやってのける元男爵令嬢。なんかもう疲れたから小説読みたい。
友達欲しい。そろそろ友達ゼロ、ぼっちな私を卒業しなくちゃ、って一応思ってるんだよ。魔力が〜、とは思うけど、やっぱり社会人になったらそんなことも言ってられないと思って。
そう、ずばり目指すは自立です。
私も流架の家におんぶに抱っこだってわかってる。婚約破棄したらそうはいかないし、今からでもちゃんと自立しなくちゃなぁ、って。そのために交友関係を広げるはとてもいいアイディアだと思う。
だけど現実は厳しい。元王子と元騎士にまとわりつかれてる私と仲良くしてくれる人はいなかった。
佐東? あんなやつは知らない。話したことないし。私のご飯食べるし。
ちょっとイラァッとして佐東を睨みつけると佐東はなにか考えごとをするように頭に手を当ててた。もっと悩めばいいと思うよ。
そんな黒い考えに侵されてる私の前で繰り広げられる修羅場。
「私は君に名前を呼ぶ許可を出した覚えはない。不快だ」
「蓮……そんなこと、言わないで」
「私に勝手に触らないでくれ。お前に触られると吐き気がする」
冷めた目で元男爵令嬢を睨む元王子。
……あれ? なんでそんなガチな感じで元妻睨んでるの? え? まさか私のこと無実の罪で処刑しときながら婚姻後不仲? そうなの?
信じられない。恋愛って難しいね。人を蹴落としてまで一緒になったのにその後冷めるなんて。
でも、恋愛って一時の気の迷いって言うし、そういうものなのかな。
あ、ちょっと待って。落ち込む。そんなもので処刑された私ってなんなの……。
「な、なんなのよ、みんなして! 私はみんなのヒロインでしょ!?」
「……なにを言ってるのかわからないが、私も夜瑠もおまえを求めていない」
ふん、と元王子は元男爵令嬢から顔を背ける。
てゆうか、自分がヒロインって隣のクラスの城崎さんみたいなこと言うね、元男爵令嬢って。
それとも私が知らないだけで流行ってるのかな、私がヒロイン。
ちなみに城崎さんは私がヒロイン、その言葉通り男の子にモテモテな子です。話したことはありません。
私がヒロインだったら、そもそもマリアーナが死んでないだろうなぁ。つまり、私になってないよね。ヒロインじゃないわ、私。
「っ、っ、なんで、」
「早乙女うるさい。俺たちはもう間違えたくないんだよ。さっさと消えろ」
元騎士が絶対零度の瞳で元男爵令嬢を睨む。
私が睨まれてるわけじゃないのに、めっちゃヒヤッとした。こわっ。
元王子は元男爵令嬢を無視して「新作がじゃりこ食べる?」と私に差し出してくる。いただきます。躊躇いはない。
佐東には取られないようによーく佐東を睨んでおく。佐東って睨んでも睨んでもいつの間にか消えて私の食べ物とっていくんだよ。油断のならないやつめ。
「〜〜ッ!! あんたが! いるから!!」
「わっ、」
いきなり私の机に突進してきた元男爵令嬢。勢いよくこっちに来たせいで、机が揺れる。
私にぶつかる前に元王子と元騎士が元男爵令嬢を捕まえたので被害はな……
「あぁっ! がじゃりこ!」
さっさとがじゃりこの蓋を開けたのが仇となった。机が揺れたせいでがじゃりこは床に落ち帰らぬ人となった。
そんな……がじゃりこ……
キッとはじめて元男爵令嬢を睨みつける。
「な、なに、よぅ!」
「……もう、めんどくさい。三人でちゃんと話し合ってきてください! 話し合って、話が纏まるまで私のところに来んな!!!!!」
あとがじゃりこ様に謝れ!
そう言いたかったけど、さすがに最後のは我慢しました。えらい。
佐東と纏のお悩み相談室
佐東「もう嫌ッス!可愛い女の子に睨まれるの嫌ッス!上司にこき使われたあげく、殺すぞみたいな空気醸し出されんのも嫌ッス!もうこれ以上は胃に穴が開くんスけど!」
纏「面白いからもっとやれ」
佐東「あんたオレの上司ッスよねぇ!?流架様になんか言ってくださいよ!」
纏「なら今度お前が真凛の名前を寝言で呼んでたと流架に伝えといてやる」
佐東「……は?そんなこと言ってな……あれ、言ってないッスよね!?」
纏「でっちあげるのも楽しそうだ」
佐東「マジで殺されるんでやめてください」
纏「……おまえ、自分よりも7も年下の男に土下座して楽しいか?プライドはないのか?ん?」
佐東「命と比べれば安いもんッス」
纏「面白い。ちゃんと流架には伝えておいてやろう。おまえにとって俺は愉快犯らしいしな」
佐東「うわぁぁぁあ根に持ってやがるぅぅぅううう!」




