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初めての奴隷は猫耳だーー

モンムスの世界に行きたいと思ってしまう自分って…

悪魔娘とか、スキュラにアラクネ

小説でも、そんなんを出したいな

午前中には決闘大会が終わり、案の定シャーラが奴隷商人の家へとやって来た。

騎士達が何人集まろうが、王顕に勝てないことは身を持って知っている。

だが彼が不用意に他人を傷付けない事も分かっていた、なので騎士を50人を使い、商人の住む家を囲ませた。


「気付いているだろ、出てこいイヴィル」

「ひ、姫様何のご用でしょうか?」


家から出てきたのは家主の商人で、額から汗を流し、あきらかに挙動不審な感じだ。

シャーラはこの家に王顕が居ることを確信した。


「商人、イヴィルがこちらに居ると思うのだが?」

「い、いえ、イヴィルさんでしたら、もう王都を離れましたが、イヴィルさんに何か用でも?」

「邪魔するぞ」

「あ、あの姫様」


問答無用で家の中に、騎士達に各部屋、荷物入れ、地下に屋根裏と全てを探させる。

だが、一向に見付からない、1時間と少し探したもののここには商人しか居なかった。

厳密には他に誰かが、ほんの数分前まで居た痕跡はある、だがその誰かがどうしても見付けれなかった。


「イヴィルはどこに行った?」

「ひ、姫様ですからイヴィルさんは王都を…」

「く、戻るぞ撤収だ」


悔しそうに、城の方へ騎士達を連れ帰っていく。

その様子を見えなくなるまで見送り、家に戻る商人。

タオルで額を拭いながら、玄関から入ってすぐの、ダイニングルームに入る。


「ふぅ、イヴィルさん姫様は帰られましたよ」

「あんなに騎士を連れて来るなんてな、何を考えてんだか…」


そこには椅子に座りお茶を飲む王顕の姿があった。

シャーラに騎士達は目の前に居る王顕に気付けず、検討違いな場所を探していたのだ。

装備、”暗殺者(あんさつしゃ)(めん)”、効果は気配遮断で、装備した者にステルス能力を与える。

商人も見えてはいないが、ダイニングルームに居る事を知っているため、話し掛ける事が出来ている。

仮面を外し、カップを置く。


「この場所にも長居は出来ないな、金も手に入ったし、そうだよ今まで世話になったんだ、宿泊代と飯代渡すよ」

「イヴィルさんお構い無く、貴方のような奇跡の様な方と知り合えた、それだけでいっぱい、いっぱいです、受け取れませんよ」


何度も渡そうとするが、受け取ろうとしなかった。

このままでは王顕自身が何だが申し訳ない気持ちになってしまっていた。


(絶対にお金を受け取る方法…)

「あ、あー」

「どうしました?」

(こいつは奴隷を売買する商人だ、つまり奴隷を買う形で金を渡すことができるのでわないだろうか…)


だが、それでは王顕が奴隷を連れて、これから旅をしなければならなくなる。


(奴隷か…、そういや馬車には可愛い娘がちらほら………、は、いかんいかん、落ち着け俺、そうだこの世界の事で分からない事が俺にはまだまだあるんだ、特に読み書きとか)


あれこれ考えているが、やはり童貞、どうしてもそっちの事を考えてしまう。

ちなみに商人は、仕事で15時に客が来るらしく接客に店に向かった。


「よし、奴隷でなく仲間と考えよう」


決意新たに立ち上がるが、内心ではモヤモヤしっぱなしだ。

装備は目立たないようにしたいが、欲界の倉庫(たけじざいてん)を使い中から出したのは、執事服だった、何の効果も無いみため見た目重視の装備だ。

着てみるとなかなか似合う、そのまま向かうは奴隷市場だ。



商人の店は周りの店より、ずいぶんと大きい、高級店って言う奴だ。


「何か中国の神殿みたいだな」

「「いらっしゃいませ」」


中に入ってみると、チャイナドレスを着込んだ女性達が客を出迎えてくれる。

首輪を付けている辺り、彼女らも奴隷のようだ。

室内は明るく、清潔な空間を維持している。

1階、2階に檻が並んでいて、中の奴隷達を客達が品定、気に入った奴隷を3階の個室に連れて行き、会話し条件を確認してから、購入するかどうかを決めるらしい。


「あなたは…」

「ん?どこかで会ったか?」

「あの、自分は貴方に救われた1人です」

「うーん?」

「山賊に囲まれた時の…」

「あ、あーーーー、なーる、あの時に馬車の中に居た1人か」

「はい、遅くなりましたが、私達を助けてくれてありがとうございました」


チャイナドレスの犬耳美女は、王都まで乗せてもらった馬車に一緒に乗っていた1人らしかった。

面と向かって犬耳美女にお礼を言われた。


(異世界に来て良かったーー、メスケモ、サイコーー)


自分の世界に逃避行していて、その場で硬直していた。

その様子を、少し心配そうに見つめている犬耳ちゃん。

それに気付き咳払いする。


「コホン、オーナーはどこに?」

「オーナーですね、ご案内します」


オーナーが仕事しているのはこの店の4階で、王都に居る時はVIPの相手をしているらしい。

3階に着いてすぐの個室から、客と奴隷が出て来る。

強い香水と胸元の開けた女性と、首輪をした大柄な鬼人(きじん)を連れて行く。


「ありゃあ、娼婦か…」

「お察しの通りです、今回はお店の護衛を所望でしたので」

「ふーん、それにしてもあんた接客とか慣れてそうだな」

「ええ、この場所に来る前に教育を受けていましたから」

「へ~たとえば?」

「接客は勿論、それなりの知識と護身術程度ですね」

「それもオーナーさんが?」

「はい、彼に拾われてなかったらと思うと…、商人には奴隷をボロ雑巾のように扱う人も居ますから」

「……そっか、良かったな」

「はい」

(やっぱ普通奴隷はそんな扱いなんだな)


最後の階段を上り4階のVIP専用の階へ。

まだオーナーの部屋には客が居るのか話し声が聞こえてきた。

犬耳ちゃんに誰が来ているのか聞いてみると、王都の貴族らしかった。

数分後、部屋から満足そうな髭デブが出てきた。

両側には顔立ちの良い女性が2人、どちらも青ざめた顔だった。


「オーナー、イヴィル様がいらっしゃいました」

「え、い、イヴィルさんが、は、入ってもらいなさい」

「おう、仕事お疲れさん」

「イヴィルさん、どうしたんですか?わざわざこんな所にまで」


商人も何かすこしやつれていた。

さっきの客は、奴隷を奴隷として扱う客なのだろう。

面倒なのは相手が貴族だからだろう。


「大変だな」

「いえ、これも仕事ですから…まあ、本音を申しますと姫様のような方にだけに、お譲りできればと思うのですが、こればっかりはどうしようも」

(確かにな、今からあの髭デブを消したところで、あんな奴は蛆のように湧いてくるだろう)

「すみません、つい愚痴をこぼしてしまって」

「別に良いよ、そうそう俺も奴隷が欲しいんだけど」

「………えええ、どうしたんですか急に」


王顕が用件を告げると、大いに驚く商人。

まさか自分の店に買いに来るとは思っていなかったのだろう。

驚いたのもつかの間、そのままVIPルームで話すことになった。

出されたお茶を飲みながら話す。


「俺ってさ、こう見えて学が無くて文字の読み書きも出来ないし、地理にも(うと)いんだよ、だからこれからの事も考えて1人欲しいなっと」

「なるほど、分かりました、それでは地下にご案内します」

「地下?ここ地下もあんのか」

「はい、そこには特別な奴隷からわけありな奴隷が居まして、王族の方しか知らない場所です」

「そこに俺を?」

「ええ」

「おもしれーじゃん」


地下に繋がる階段は、VIPルームにある隠し扉からでしか行けないらしい。

螺旋階段を商人と2人で下りて行き、その先には広い空間があった。

そこには檻ではなく、結界で区切られた個室の部屋が並んでいた。


「ここには、ある理由で位の高かった身分から落ちた者や、不思議なスキルを持っている者などがいます」

「へ~~~、見させてもらっても?」

「ええ、どうぞ」


そこに居たのは、平均してレベル20くらいの人以外の存在だった。

そのなかで気になったのが、唯一レベル1の人猫(じんびょう)だった。

部屋の隅に座って、俺と目を合わせない無い様にしている。

褐色の肌に真っ黒な髪にツンと尖った猫耳、目が左右違う色のオッドアイ(右か黄色、左が青)、歳は見た目20前半くらい、なんと言ってもダントツで可愛い。

ステータスは、


叉夜(さよ)

種族 人猫

役職 奴隷

レベル 1

HP 50/50

MP 80/80

攻撃力 17

防御力 15

特攻力 15

特防力 10


レベル1にしては高いステータスだった。

眷属(けんぞく)への分配(ぶんぱい)を使って、レベルを上げてやればこの世界で苦労する事も無い。


「オーナーこの娘と話しがしたい」

「彼女ですか?」


少し不安げな顔で、聞き返してきた。

その顔で悟る、この娘が訳ありの娘なのだろう。

商人が耳元で話す。


「彼女は他種族だけでじゃなく、同族にすら忌み嫌われる存在でして」

「詳しく」

「黒い毛並みの人猫には、不吉をもたらすと言う伝承がありまして、実際彼女は年端も無い内に親に捨てられて、村を追い出されております」

「オーナーもそう思うの?」

「伝承は伝承ですよ…、彼女をここに連れて来ても何も起きませんでしたしね、ま、お客様の中には今だ忌み嫌う方も居りますから」

「だからこの場所に」

「はい、それで私の話を聞いた後ですが、どうしますか?」

「ん?彼女と話すよ」

「……かしこまりました」


少しだけ顔を緩め、笑顔を作り頭をさげる商人。

王顕はVIPルームへと戻り、叉夜が来るのを待っていると、彼女を連れた商人が部屋に入ってくる。

地下ではチャイナドレスを着ていた叉夜だったが、今着ているのは黒いワンピースにストッキングのガーターベルトだった。

王顕は思った。


(この服のチョイス、分かってるねオーナー!!、褐色の肌に黒いワンピ、肩と鎖骨の見える感じ、後そのスラッと細長い脚を強調するところとか、特に太もも!!)


童貞の引き篭もりゲーム課金厨には、一生縁の無い美少女がそこに居た。

と、叉夜は小刻みに震え怖がっているようだ。

あまりにも凝視してしまっていた事を後悔。


「あーー、オーナー少し2人っきりにしてくれるか?」

「!!」

「はい」

「!!」


王顕の申し出に体を大きくビクつかせ、オーケーサインを出した商人にすがるように彼の服を掴んでいた。

こんなに怖がらせてしまったのかと、更なる後悔をする。

過去に戻って数分前の自分を殴ってやりたかった。

商人は叉夜を落ち着かせて、席に着くようにうながす。


「大丈夫です、イヴィルさんはとても優しい方です、安心しなさい」

「……………はい」


何とか椅子に座ってくれた。

部屋に彼女が入ってきて座るまでこの間30分。

警戒が解かれないまま、話すことになった。

未だ叉夜はジッと動かない、体も強張っている。


「言葉は分かるよな?」

「…」コク

「オーナーさん優しいか?」

「ボクを拾って、育ててくれた」

(―――――ボクっ娘キターーーー)

「そっか、それじゃ質問していくから答えれる範囲でよろしく」


文字の読み書き、地理、奴隷としての振る舞い、戦う技術などある程度はこなせるらしい。


(ふ、購入決定だな)


商人を呼び奴隷の購入手続きに入る。


「奴隷を買うのは始めてなんだけど、値段ってどれくらいなの?」

「叉夜でしたら…」


ここか仮にも高級店、まあまあな値段がするだろう。


「銀貨60枚でどうでしょう?」

「……え」

(え、銀貨60枚ってどうなの、高いのか…)

「そんな値段でいいのか?」

「奴隷市場の値段は平均して銀貨3~5枚程度です、ここではそれなりに頂いていますが、質が違いますから、ここでの店での平均は銀貨50枚~金貨1枚ですね、イヴィルさんには恩がありますから、サービスとしてお安くしております」

(奴隷ってそんな安いの、マジかよ)

「そうか、なら」


空間が歪み、そこからジャラジャラと金貨が出てくる。

その数60枚。


「これでいいな」

「い、イヴィルさん何を…」

「…」


商人は開いた口が閉じず、叉夜も腰を抜かしていた。


「俺にはこいつにこれくらいの価値が有ると思ったし、オーナーあんたにも世話になった、その気持ちだよ」

「し、しかし」

「受け取らないと暴れちゃうぞ~」

「は、はは、強引な方だ、分かりました店の寄付と言う形で受け取ります」

「うし、契約成立」


そうして契約書にサインして、叉夜は正式に王顕の奴隷になった。

服については普通客側が準備するらしいが、サービスで今着ている服を貰ってきた。



店を後にし、商人は帰りが遅くなるとかで、夕食は外で食うことになった。

2人で外を歩いていると、視線を浴びる。


「おい、あれ黒い人猫だぞ」

「街中を歩かせるなんて、不吉な」

「呪われない内に離れた方が…」


ひどい言葉が周りから飛んでくる。

後ろを確認すると、叉夜は尖っていた猫耳を垂れさせている。


「大丈夫か?」

「え、は、はい、慣れてますから」

「慣れてるね」

(慣れる訳ないだろ、こんな可愛い娘に許せん!)

「飯食いに行くか」

「はい、ご主人様」


奴隷市場から少し離れた飲食街に向かい、テラス席の有る店に決める。

席に座るとウエイトレスがメニューを持ってくる。

メニューを開くが字が読めないし、読めたところでどんな料理なのかも分からんだろう。


「それより、叉夜なにやってんの?」

「…あ、いえ、お邪魔でしたら食事中の間別の場所に…」

「いやいや、一緒に食おうぜ」

「へ?」


後ろで突っ立ていたので、自分と逆の方の席に座るよううながす。

何を言われているのか聞こえているが、理解できていないのか、目が泳いでいる。


「あ、あの」

「ウエイトレスさーん」

「お決まりでしょうか?」

「この店で1番美味いもの2つね」

「かしこまりました」

「ご主人様…よろしいのですか…」

「ん、嫌いなものでもあったか?」

「そうではなく、奴隷を一緒の席に、しかもボクは」

「気にすんな、俺はそこら辺の馬鹿とは違って差別しねーし、叉夜を物扱いするつもりも無い」

「ツッ~~~」


違う色の瞳に涙をためる。

奴隷である自分が、まさかこんな扱いをされるとは思っていなかったのだろう。

涙を拭い席についてくれた。

料理が運ばれてきた、内容はパン、色鮮やかなサラダ、貝のスープ、見たことの無い焼き魚、そして目を引くのがどう見てもマンガ肉にしか見えない骨付き肉、このセットで1つの料理らしい。


(まじですか、まじなんですか、マンガ肉じゃん!!)


料理に興奮していたが、その興奮がすぐに冷めてしまう。

なぜなら料理が1セットきただけで、2セット目も持ってくる様子がない。

待ちきれなくなった王顕がウエイトレスを呼ぶ。


「料理を2つ頼んだと思うけど、もう1つはまだなの?」

「ご、ご主人様…」

「それは、その…」

「奴隷なんかに商品を出せるか!!」

「て、店長」


店から出てきたのは強面の男でこの店の店長。

服の上からでも分かる筋肉をもつ4本腕の鬼人だ。


「奴隷に出せないってどう言うことだよ」

「言葉そんまんまの意味だ、奴隷に食わせるもんはねえ、店の名に傷が付くんだよ!」

「そんな理由でか…」

「それもそいつは黒の人猫だろ、そんな奴店に入れやがって!、営業妨害もいいところだ!!」


叉夜は俯き、拳を握り締めている。

ガタッ

立ち上がる王顕、店長に殴り掛かろうとするが、叉夜が腕に抱きついた。


「…は?」

「ご主人様、駄目です!!、暴力は駄目です…」

「うお、なんだ」


王顕は驚いていた、ここまで酷い事を言われながらも、叉夜が暴力は駄目だと言ったことにではない。

彼女が腕に抱きついた事に驚いたのだ。

目の前の鬼人が驚いているように、王顕は視認出来ない動きで殴ろうとしていたのだ、それを叉夜も同じ、いやそれ以上の速さで動いた事になる。


「お前は何をやっているのだ」

「げぇっ」

「え、何で」

「こ、こんな店にお見えになるなんて」


声のした方に振り向くと、そこに立っていたのはシャーラだった。

今回は仲間を増やしたかったので、奴隷を賞金で購入する話でした

王都シャハラでの生活もそろそろ終盤

次回は王都を発つ前のお話

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