足掻き
さて、もうそろそろ終わりに近付きつつあります
そして、新しい方にも取り掛かり始めました
エドの一番いい宿。
宿の宴会場に集められたのは、姫巫女と護衛の武士、そしてシノとその仲間達、王顕とその仲間達だ。
「ニャハハハ、それにしても死ぬ事を体験するなんて初めてニャ~」
「すみません我らの姫はいつもこんな感じで…ホントすみません」
エゾの姫巫女【蘇我 夷瑠花】。
青い髪に雪だるまの形をした簪を挿して、幼い印象の女性。
青と白の着物には雪の結晶の模様があしらわれている。
護衛は【後藤 仁】。
青い鎧に身を包む優男、自分の背丈の倍ある槍を背負う。
「まさかあのタイミングで、全員死ぬとは思ってもおらんかったよな」
「護衛でありながら守れんですまん」
「あれは防ぎようが無かったがな」
キョウトの姫巫女【芹 もか】。
赤い髪をボサボサにして、化粧の濃くしている。
赤いダンダラ模様を使った着物を着て、鉄扇で扇いでいる。
護衛は【近藤 正輝】と【土方 鬼道】。
2人は同じ軍服と軍帽を着込み、腰には軍刀を両側に日本ずつ差している。
「でも、シノ様と王顕様のおかげでこうして無事?に生きてられますし」
「夕日、こいつを様付けで呼ばなくていいぞ」
「そう言うな朝日、助けてもらったのには変わりないんじゃ」
「うむ」
そしてツクシの面々。
「助けてもらって何を言ってるんだか…、王顕様、うちの都に来たときはぜひ声を掛けてください、歓迎いたします」
この中でただ1人護衛を付けずにエドに来たのは、ヤマトの姫巫女【烏帽子 鈴鹿】。
黄色と毛先に近付くほど白くなった髪を持ち、どこか小悪魔っぽい雰囲気の女性。
十二単を着込み、この中で1番煌びやかだ。
そして今、エドには姫巫女が不在らしい。
「王顕さん」
「な、何?」
「本当に王顕さんなんですね!」
「あ、う、うん」
「っ~~~」
「ぬお」
シノは王顕に会えたことで舞い上がり、抱きついている。
彼女の素性は既に聞いていて驚いたが、同じ日本人で同じ様な人生に進み、同じように異世界に転生したせいで親近感を得ていた。
王顕の仲間達は、不満そうな顔で出された料理を食べていた。
「何よあの女、ご主人様に抱きついちゃってっ」
「主様のご友人なのです、しょうがないでしょう」
「それでも~」
「―もぐもぐ、要らないなら貰う」
「あああぁ~~~、ボクのお肉!!」
「まったく騒がしいな、ガハハ」
「イジェお酒は程ほどに」
「こう言う時くらい良いじゃないか~~」
「あうあう」
叉夜は嫉妬しシノを睨み、ルカは割りきって叉夜が先走らないよう牽制。
ミクトルンは、運ばれてくる料理を黙々と食べ、叉夜の分にも手をつける。
イジェメドは料理にはほとんど手を出さず、酒を飲み続け、飲みすぎの心配をするのがエリザノーラだ。
唄音はまだ仲間たちになれてなく、オロオロしていた。
王顕の仲間たちは、いつも通りすぎてホッとする。
「あれがシノが探してた奴か、嫌な感じがするな」
(あ、あれが王顕様、お礼を言わないと…でも今は邪魔よね…)
「王顕、あれが…」
「ふあ~シノ様のあんな姿初めて見るですぅ~」
日鋼王は、肌にピリッつくものを王顕から感じ警戒する。
シスターメレンダは、故郷の村の無念を晴らしてくれたお礼を言いたいが、シノに遠慮してチラチラと遠目で見るだけだ。
ゾギンは、難しい顔で話に聞き及んでいた王顕を観察する。
エイリスは、目を輝かせキャッキャッとはしゃぐ。
シノの仲間たちは、1人を除いて静かだった。
「そう言えば、エドには姫巫女って居ないんだな」
王顕のふとした疑問に、少し困った顔をする姫巫女たち、彼の疑問に答えたのは夕日だ。
「実は今、エドに姫巫女は居ないのです」
「え、何で」
「3年前まではエドの姫巫女である刑部姫が居られたのですが、彼女はある日を境に別人の様に変わり、他の国々に攻撃を加え始めたのです」
「いやーあの時はびっくりしたニャ〜」
「それでその刑部姫は?」
「エド以外の国で手を組んであいつを捕らえたんだ、まぁ獄中の間に自決して死んじまったがな」
「それからは、新しい姫巫女が見付かっとらんのです」
「ふ~ん」
姫巫女がそれぞれ説明してくれる。
そこで更なる疑問が増える。
「じゃあこの場所は誰が結界を張ってるんだ?」
「今は姫巫女会談のあるこの日に、皆で少しずつ力を分けて結界を造っています」
「そうなのか、姫巫女になれる条件って何なんだ?」
「都に結界を張り続けるだけの魔力と精神力でしょうか」
「まぁ曼荼羅結界を使えることが最低条件かニャ」
「曼荼羅結界…」
「ふ~ん曼荼羅…」
【ワールド・インフィニティ】にそんな技やアイテム、スキルは存在しなかった。
後からこの世界に来たシノにも聞いてみたが、やはり知らないようだった。
宴会も終わり、各自用意された部屋に分かれる。
酒が入ってる奴はすぐに寝落ちし、そうでない奴は未だに宴会場に集まって2度目の宴会を始めている。
王顕はシノと2人でエドの街中に出ている。
「シノちゃん、いやシノさん?」
「シノで良いですよ」
「ああ、じゃあシノさん大事な話があるんだ」
「へっ、な、ななな何でしょう」
「神ってどう思う」
「…」
大事な話と聞いてドキッとしていたシノだが、期待してたものと全く違う話題に沈黙する。
しかし、4体目の話を聞き深刻な事に巻き込まれ、3日後には王顕が消えるかも知れないと聞き、慌て出す。
「そんな、せっかく会えたのに、どうしてこんな…」
「それで俺が居なくなったら、俺の連れてきた奴らをお願いしたいんだ」
「…戻ってこれないんですか」
「奴らにその気は無いだろうな」
「じゃあ私も、戦いに連れていって下さい」
「…すまん」
「え…」
シノが王顕に特別な思いがあることは、何となく分かっていた。
そしてその結果、彼女が付いてくると言い出しかね無いことも予想していた。
なので、自分勝手だが伝えたいことを話した後、相手を眠り状態にするアイテムを使い彼女を眠らせた。
さらに艶魅にこのアイテムを持たせ、エドにいる人達を強制的に眠らせた。
「強くなりすぎた力は身を滅ぼす…、俺は少しは足掻いてみるか」
王顕は宿に戻ると、仲間たちはに眷属への回収を使う。
仲間たちはみるみるレベルが下がり、平均してレベル5000くらいにした。
減らした分のレベルは、王顕のものになっている。
「それじゃあな」
彼はその日、ヒノモトから姿を消した。
目を覚ました王顕の仲間、シノ達、姫巫女とその護衛は彼が消えたことに気付き探し回ったが、彼が残したものは一部の装備と、アイテムだけで他は何も残されて居なかった。
王顕が向う先はリッドテム大陸。
彼は勇者の最後に訪れた大陸へと向っている。
「選ばれた3人の内1人はどう考えても勇者だろ…」
彼の目的は3日間の間に、選ばれた残り2人を見つけ出し、この戦いを中止させる事だ。
そして予想通り勇者がその1人である。
索敵を使いながら、飛翔のマントで空を飛び探す。
見付けるのに、そう時間は掛からなかった。
エドを出て3時間で浮遊都市エディパラに辿り着いた。
「そっちから来るなんてね、かなりせっかちなのかな」
「あんたが勇者か?」
「ま、そう呼ばれてるかな、名前はティカよ」
王顕が思っていたより、細く華奢な体格で彼は少し驚いた。
ティカは、以外にもフレンドリーに話しかけて来る。
「あなた王顕って名前?」
「あ、ああ、そうだが」
(ステータスを見られたか?)
「そうなの、から聞いたけどまさか本当にあなただったなんてね」
「シャーラとベアに連絡入れたら、あなたの名前が出て来たの、きっとその4体目の候補の1人は王顕だってね」
「なるほど、あいつらはお前の仲間だったけ」
名前を呼ばれて勘ぐるも、別の方から名前割れしていた。
王顕は他者の把握を使う。
しかし、ステータス表示が出ない。
(表示されない?、名前や種族、役職は偽りのものでも必ず出るはずだが)
「それで王顕さんは何の用でここまで来たのかしら、まさかもう戦いたいとか?」
「いや、その逆だ、争わないで済む方法を一緒に考えないか?」
「…ぷっ、あっはははは、そんなの無理よ」
「何故だっ」
ティカは、王顕の提案を笑い飛ばし、却下する。
フレンドリーに話してはいるが、彼女にとって彼は既に敵なのだ。
だが、納得できない王顕は理由を求める。
ひとしきり腹を抱えて笑った彼女は、これでもかと言うほどの魔力を放つ。
建物はひび割れ、浮遊都市自体が揺れる。
「何故って、数100年この時を待ったのよ、本物の神になれるこの時を…、たぶんもう1人も私より深くそう思ってるはずよ」
「ぐぅ」
「去りなさい、あの2人の知り合いらしいし、それに免じて攻撃しないわ」
話は終わりとばかりに神殿の中へと消えていく。
追いかけても無駄だと、どこか分かっていた王顕その場をは動けなかった。
「クソッ!」
そしてもう1人の候補を探しに飛び立つ、ティカはああ言ったが本当にこの戦いを望んでいるかは、分からないからだ。
しかし、その時は急に訪れた。
視界が歪み、自分がどこに居るのかも分からなくなる。
(な、何だこれ…)
そのまま気を失った。
勇者と魔王は相容れません
次回は、最終回となります
かなりうやむやな点もあったので、時間ができた時にリメイクで書き直せたらな~っと思うのですが難しいですね
明日、投稿します




