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キョウトでの出会い

新年を迎えてもう半月、みなさん仕事や学校が始まったころは、体が思うように動かなかったでしょうが、もうそろそろ調子が戻ってきたんだと思います。

自分は工場の仕事で、これからが冷えてくるだろうし、ドッキドッキですよ!!

キョウトに着いた王顕たちは、それぞれ別行動をとっていた。

王顕はミクトルンを肩車し、(かね)を取った子供の場所に向っていった。

子供は彼らが話している間に、都市の反対側のある場所で(とど)まっていた。

王顕は(きら)びやかな都市の中心を歩き、また逆の路地に入る。

すると、そこの住人達にまた囲まれる。


「…はぁ~」

「―ミクが食べようか?」


ミクトルンはスキル”(しょく)”の事を、食べると例えている。

王顕は彼女を下ろし、頭をくしゃくしゃと撫でる。


「今日あとで遊んでやるから、おとなしくしててくれ」

「―本当に、じゃあ、おとなしくしてる」

「いい子だ」


王顕は、欲界の倉庫(たけじざいてん)から、今まで出した武器で一番小さい物を取り出す。

刃渡り30センチの真っ白なナイフで、持つ部分は独特な(つや)のある木で作られている。

神象(ガネーシャ)の牙”と言う武器で、効果は単体の敵への絶対麻痺(まひ)で、麻痺時間は15分を越えるが、最初の相手へのダメージが0になるし、攻撃範囲がかなり限定的だ。

大型で攻撃の当たりやすく、HPの多い敵に良く使っていた。


「そんな小さな武器で、この数を相手するのかい?」

「そうだが」

「なめやがって、野郎共ぉ殺っちま、あふぅん」


仕切っていた男に急接近し、ナイフを横腹に突き立てると、変な声を出し、ビクンッビクンッと震えて倒れる。

周りの連中は何が起きたのか分からず、その場に立ちつくしている。

王顕は、更にスピードを上げ、近くの奴らから次々にナイフで斬りつけていく。


「おひょ」

「きゃっ」

「なほぉ」


麻痺する連中は声をだし、バタバタと倒れていく。

そして、その場に居た全員を麻痺させ、ナイフを仕舞い、ミクトルンをまた肩車し、先に進む。

少し歩くと目的地に着いた。

子供が居たのは、家とは言い難い小屋だった。

とりあえず中に入ると、(かさ)を被った子供が1人と、金の袋を持った小太りの男が1人居た。


「…」

「だ、誰だテメェ、勝手に入ってきやがって」

「いや、そこの子供が俺から取ったものを、返してもらおうと思って来たんだが…」

「…何のことだか分からねぇな、さっさと出ていかねぇならぶっ殺すぞ」

「ツッ…」


男は子供を(にら)むと、王顕たちを怒鳴(どな)りちらし、小屋の(すみ)に置いてあった(くわ)を手に取った。

子供は両手で頭を抱え、体を震わせている。


「なぁ1つ聞いていいか?」

「分からねぇな奴だな、さっさと出てい…」


ズガンッ

王顕は、男の首を掴むと床に叩きつけた。

床は()けて、男は地面に頭を押し付けられている。

本来の魔王の姿に戻り、指に少し力を入れるだけで男は恐怖に(おちい)る。


「あの子はお前の子か?」

「ち、違う、ひ、ひひ拾ってきて育ててやったんだ」

「そうか」


王顕は男から手を離し、震えて動かない子供に近づく。


「よう」

「ッ!ツッ?」


子供は、話し掛けられたことに驚き、四つん這いで部屋の隅に逃げていく。

王顕は心苦しいが、子供が逃げれないように手を広げ近付く。


「よし、捕まえた」

「ウー!ウゥーーッ!」

「落ち着け、殴ったりしないから、な」


ひとしきり暴れると、すぐに息を荒げ動かなくなる。

王顕は、握っている子供の両腕を見る。


(体も細く、体力も無い、こりゃあまともに物を食ってないな、それに腕の(あざ)…)

「お前、俺と来るか?」

「待てっくれよ、それは俺のもんだぞ」

「ミク、それは食って良いぞ」

「―パク」

「へ…」


ズガアアァン

ミクは可愛く声を出すが、内容は左腕が形を変え肥大化し、様々な種族が混ざった波になり、それに男は吞み込まれ小屋を半壊させた。

残ったのは男の足首から下のみだったが、それすら取り込まれる。

幸いにも小屋の外は壁になっていて、他に被害者は出ていない。


「まぁ、俺に付いてこなくても、このお金はお前にやろう」

「…あうあう」

「お前、(しゃべ)れないのか」

「ッーッー」


子供は目の前で起きた事に驚いていたが、王顕の優しい接し方に落ち着き、逃げる事はなかった。

差し出された袋を両手で受け取るも、返事に違和感があり、笠の下にある顔を(のぞ)き込むと、(のど)に一筋の傷があった。

だが、喋れなくても言葉は分かるようで、彼の言葉には頭を縦に振り(うなず)いている。

覗き込んだとき、すぐに俯き顔を逸らしたので一瞬しか見えなかったが、顔立ちは、美女になるのは必至(ひっし)なくらい綺麗だった。


「これってギガポーションで治せるのか…、とりあえず飲んでみ」

「…ん、ん」


渡された液体を最初は警戒していたが、素直に飲んでくれる。

だが、痣は消えたが喉の傷は消えなかった。

この傷は、ポーションでもどうする事も出来ないらしい。


「その傷だと、これから1人で生きるのは難しいよな、どうだ何かの(えん)だ、もう1度聞くけど俺と来るか?」

「…あう」

「よし、俺は王顕、君の名前は…、喋れないのは不便だな、ちょっと待て」


王顕の申し出に、小さく頷く。

自己紹介に自分の名前を教えるが、相手は喋れないのでステータスを見ると、名前は空白になっている。

名前を付けられる事無く、今まで生きてきたらしい。


「名前無かったのか」

「あうぅ…」

「そうか、なら俺がつけても良いか?」

「あう、あう」


首を縦に振ってくれたので、王顕が名前を考える。

独身生活で、ペットも飼った事ないボッチ生活を送っていたので、こういう時すぐに思いつかない。

ヒノモトだし、漢字を使おうと思うっているものの浮かばない。


「…我独(がどく) 唄音(はいね)なんてどうだ、声が出ないんだから名前だけでもな」

「あう!」

「よし、それじゃあ、町に繰り出しまずは風呂だ」

「―これ家族にするの?」

「っー!」

「そうだぞ、ミクもこれでお姉ちゃんだな」

「―…お姉ちゃん」


王顕は考えるのを止め、汚れた体を落とす為に風呂を探す事にした。

ミクトルンは、唄音を品定めするように見詰める。

その見方がまた怖くて、顔中がいろんな目玉だらけになって、見てくるのだ。

唄音はビクつき、すぐに王顕の後に隠れてしまった。

王顕はミクトルンに姉になる事を教えると、まんざらでもないのか少し嬉しそうに見えた。

2人を連れ、手を繋ぎ中心街に向う。

ちょっとうろつくと、暖簾(のれん)に大きく、温泉マークがついてる店を見つける。

中に入るり、男湯に向う。

ミクトルンは、服を体内に吸収し裸になった。

唄音はモジモジと脱ごうとしない。


「ホラ、脱いだ脱いだ」

「あうっあうっあう~~」


笠を奪おうとするが、必死に抵抗する。

だがその抵抗もむなしく笠を奪いとった。

すると、どこに仕舞っていたのか膝まである銀髪の髪、尖った狐耳とその後に丸みをおびた猫耳、そして横に伸びたエルフ耳を持ち、丸い眉毛いわゆるマロ(まゆ)も持ち、狐の尻尾が生えた少女。

ステータスを見たとき、種族が人間ではなく妖怪だったので、人では無いとは思っていたが、これは意外すぎる見かけだった。

唄音はしゃがみ、耳を隠すように頭を手で押さえた。

王顕はそっと手を伸ばし。


「う、うぅ~///」

「おお、触り心地いいな」


狐耳をサワサワと撫で回す。

気持ち良さそうに、体を震わせ(うな)る。


「大丈夫だ俺は気にしないし、可愛いと思うぞ」

「っ~~~~///」

「-ミクも撫でて」

「はいはい」


幼女2人と浴場に向う。

他者から見られると、危険な匂いがする光景だ。

時間的に客が少なく、彼らを合わせて5人だけだ。

すると唄音がタオルを持ち、座っていた王顕の背中を擦り始めた。


「およ、洗ってくれるのか」

「あう、あう」

「そうか、ならお願いするかな」

「-洗って洗って」

「おっと、はいはい」


ミクトルンは王顕の前に滑り込み、背中を向けた。

石鹸(せっけん)を泡立てて、ミクトルンの髪を洗っていく。

草を調合して作られたもので、香りも良く、肌や髪にも優しいらしい。

すぐにミクトルンは、髪だけじゃなく全身が泡だらけになった。

洗い終わるとお湯で流し、先に湯船に入るように言うと走って飛び込んだ。


「こらーーー、危ないだろおー、さてお次は唄音な」

「あ、あうあうっ!」


まさか、自分も洗われるとは思っていなかった唄音は、どうしていいか分からずオロオロとしていたが、さきほどミクトルンが座っていたところに移動した。

まずは頭から洗い始め、耳を触りまくる。


「あ、ああ、ううぅ//」

(可愛い…)

「ツッ~~~~ッ///」


髪を洗い、肩から背中、脇へと手を伸ばす。

こそばゆいのを必死に我慢するが、耳がパタパタして泡を飛ばす。

そして次に前を洗おうと手を伸ばすと、唄音は恥ずかしさのあまり嫌がる。


「こらこら、今までほとんど風呂に入ってなかったんだろ、泡が黒く変色してるぞ」

「ウッーー!ウウッウーーーーッ!」

「ほいほい、ゴシゴシゴシ~」

(娘を持った父親って、こんな気分なんだろなぁ)

「ウ…、アウあああぁぁぁあああああ~~~~~~ッ!!!」


容赦なく全身くまなく洗った。

叫んだ後はおとなしくなり、お湯で泡を流すと、その場でピクピクと痙攣しながら倒れた。

さすがにこの状態で湯船に入れるわけには行かず、脱衣所で横にさせてもらった。

もしものために、”三方結界”を唄音の周りに張っておく。

五方結界より効果は劣るが、レベル50程度の攻撃やスキルは通さない。

王顕は、ミクトルンが入っている湯船に浸かる。


「ふいーー、なんつーか日本って感じだな、1人暮らしの時はよく銭湯(せんとう)にいったけ…」

「―?」

「はは、なんでもないよ、この後はどうしようか、とりあえず宿探さないとかな」

「―お腹空いた」

「そうだな、まともな飯も食ってなかった」


風呂場の雰囲気に上機嫌になり、鼻歌を歌い始める王顕。

ミクトルンは、王顕が入ってきて数分で立ち上がり脱衣場に向かった。


「―限界…」

「ん~ん、んっんっんっ、んん、ん~ん…、ん~ん、んっんっんっ、んん、ん~ん」


ヒノモトは他の大陸と違い、かなりお湯が熱くて、慣れてないミクトルンは我慢の限界を超えたようだった。

王顕は久方ぶりの日本の風呂に、ゆっくりと時間を掛け思い出に(ひた)ることにした。


(あ~ヒノモトって天然の温泉あるのかな~、硫黄(いおう)の匂いに、独特の肌をツルツルにする感触、温泉での料理…蒸気で()された川魚や野菜、半熟の温泉卵…)


こうして王顕の目的に温泉に入るが加わった。

2時間と言う長い時間を、同じ風呂に入ったのはこれが初めてだったのだが、のぼせる事も無くスッキリしていた。

脱衣所には王顕を待つ間ずっと、店にあった飲み物を飲み漁っていた2人がいた。

床には(びん)がズラッと、何かの儀式でも始めるかのようにミクトルンを中心に、円形に並べられていた。

ちなみに、ほとんどミクトルンが飲んだものだ。


「おいおい、店のを全部飲んでないよな…」

「―うん?」

「あうぅ」

「いいか、俺も待たせちまったみたいだし、さっ飯に行くか」

「―うん行く」

「あう」


王顕たちは今度は飯屋を探す。



ルカと叉夜は街中を歩き回っている。

途中、王顕達より先にうどんを食べたり、風呂も済ませている。


「どうなんです、ここは貴女の故郷なのですか」

「え、えっと…」

(まぁ、貴女の種族が人と妖怪じゃ無いので、その可能性は無いはずですが…)

「むむむ…」

(ですがこの様子だと、このキョウトと雰囲気が同じ場所が、生まれ故郷なのかもしれませんね)


彼女達の格好は、キョウトの女達と比べ地味な服だ。

なのだが、プロポーションは負けるどころか、化粧1つしていないのに圧倒していた。

そのせいか言い寄ってくる男は多く、格好を見て金さえ払えば抱けると思っているようだ。

声を掛けられるたびに、冷たくあしらい、しつこい者は建物の影に連れ込み気絶させた。

穏便に、目立たないように行動する事を心がけていた。


「これで何度目なの、疲れちゃうよ」

「27回目ですね」

「え、数えてたの」

「そのうち眠ってもらったのは6人です」

「あぁ~」


叉夜の適当な(つぶや)きに、ルカはいつもの冷静な態度で答えた。


「それで、この場所に心当たりは?」

「あるような~、そうじゃないような~、ご、ごめんね、ボクの事に着き合わせて」

「…もういいです、ここは叉夜、貴女の生まれた場所ではありませんから、早く宿で休みましょう」

「え、えっ?」


ルカは叉夜の種族の事を話し、彼女は盲点だったっと驚き、脱力し肩を落とした。

それからは、歩き回っていたときに見つけた宿に、予約を入れていたのでそこに向う。


「ご主人様も、ボクの生まれ故郷がここじゃない事を知ってたのかな」

「そうでしょうね」

「じゃあ、どうしてこの場所に、2日も居ることにしたのかな?」

「主様にもご用事があったようですし、ヒノモトに入ってからは野宿ばかり、まともな宿や食事で、(わたくし)達にゆっくりと体と心を休ませるお考えでしょう」

「…ご主人様…本当に優しい~」


宿まで歩きながら、王顕の提案について話している2人。

そして結果として、王顕のいない場所で彼の高感度が上がっていた。



イジェメドとエリザノーラは既に宿をとり、2人で酒を飲んでいた。

透き通った(くせ)のある酒で、ちょうど良い辛味と甘味がある。


「ふぃー、ヒノモトの酒は良いな、最初に出されたときは水かと思ったが、んくんく、かあぁ〜飲んでみればどこの酒よりも奥が深い」

「私には分かりませんが…」

「お主はまだ幼いからな、あと数十年も生きれば分かってくるわ」

「そんなものですか?」

「そんなもんだ」


イジェメドは気分良く大笑いしながら、酒を浴びるように飲み、エリザノーラは彼女と違い果実酒を飲んでキョウトでの1日をすごした。

キョウトの中では、王顕たちは目立たないようにしていた積もりだが、地味な服を着た只者じゃない奴らがいると噂になりつつあり、その噂はお偉いさん達の耳にも入っていた。

今回は耳を6個持つ少女との出会いがメインでした。

想像するとこれはこれでありだと…、自分の中で妄想が…


重要なお知らせです

このたび「ゲームで課金厨魔王の俺が異世界に転生」は、50話ほどで完結させようと考えています

読み続けてくれている皆様には、先に報告しようと思いまして後書きに書かせていただきました


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