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お久しぶりです

またこれからも、ちょっとづつ投稿出来ればと思っています

12月また俺も歳を取るんじゃな

ヒノモトの本土に着いて初めての夜、王顕は暗殺者の面を使い誰にも気付かれず、テントを離れていた。

見張りの叉夜とルカだけだと、万が一にも海亡と同じレベルの敵が現れれば対処できないだろうから、テント内に艶魅(えんみ)を置いてきている。


「俺のステータスはまだ上がる筈だ、誰にも負けない、仲間を失わない為にも、さらに力を手に入れないと…」


彼は海亡との戦いで、自分以外にも異常なステータスを持った者が存在する事を知り、自分の強化をすることにした。

王顕は眷族への分配を使った事で、今でもステータスには測定不能とでてはいるが、海亡との戦闘時よりレベルが下がっている。


「レベル上げの為に動くのは久し振りかもな、とりあえず経験値を(かせ)がないと」


王顕は装備を経験値稼ぎの物に変える。

”成長の道着”と”達人の帯”、柔道着と黒帯の装備で、効果は道着がモンスターもしくは敵プレイヤーを倒した時に経験値を倍にする。

帯は経験値を得た時に、仲間にその経験値の半分を与える。


「これで、あいつらも強くなれるな」


王顕は索敵を用い、モンスターの集団を見つけると、次元闘技場を使い一気に捕まえる。

捕まえたのは妖怪の餓鬼。


【餓鬼】

種族 妖怪

役職 下級妖怪

レベル 18

HP 320

MP 240

攻撃力 50

防御力 42

特攻力 50

特防力 36


ステータスは、この世界の一般人には危険なくらいだ。

ヒノモトでは一般人でも、周りのモンスターが強い為、最低レベルは20前後だと朝日が教えてくれていた。


「数は30ちょっとだが、これじゃレベル上げには、質が足りないな…、試してみるか」


王顕は自分の髪を3本引き抜くと、スキルを発動させその髪を餓鬼にくっつける。

キフォーカ大陸で覚えた、魔獣の製造を使う。

ヒノモトに来る前に、朝日の船の上で捕まえたモンスターを使い、何度か試しているが妖怪に試すのは初めてだった。

前に使った時は、レベル2の魚のモンスターだったが、指先を切り落とし与えたらレベル8000を超えた巨大なハリセンボンに姿を変えた。


「スキルを使ったときは自分の体を傷つけても痛みは無かったな、自分であの時は朝日が珍しく焦ってたな…、まぁ斬首手刀の一発で倒して食ったけど、にしてもあれで神のレベル超えるってどうなんだ」


その後も体のいろんな部位を与えたが、髪が1番レベルの低いモンスターになることが分かり、最初はどのモンスターにも髪を与える事にした。

そして餓鬼に髪を与えると、細かった体がブクブクと(ふく)れ、肌は灰色から緑に変わり、身体中にギョロギョロと目玉が開く。

妖怪の名前は【百目(ひゃくめ)】で、レベルは400前後のモンスターに生まれ変わる。


「まったく違う妖怪になるのかぁ、それにしても気持ち悪いな」

「「ぶぶぶぶぶうぅ」」

「ふっ、ほいっ、よっと、目は多くても、俺の動きには追い付けないか」


3体の百目は、王顕を目掛けて突っ込んできた。

王顕の動きは見えているものの、その巨体のせいで動きが遅かった。


「”神の掌(ゴットハンド)”…」


王顕は光の武法を使い、百目の横をすれ違いざま腹を(えぐ)り、飛び散る内臓と目玉を踏みつける。

百目は抉られながらも動こうとするが、傷から光がほとばしり消えていった。

この武法は発動すると10分の間、両手の平に光の属性が常時発動するものだ。


「これで後8分は、他の武法は使えないっと、その間に次だな」

「「ギィギィギィ」」


魔獣の製造を使ったモンスターには、2度目の使用が出来ないので百目を倒してから、他の餓鬼に今度は血液を与える。


「ギャギャギャギャァ」


1体が苦しみだし、またも巨大化する。

体は頭に吸収され、角も引っ込み巨大な人間の頭部が空中に浮かぶ。

【大首】、レベルは614で大きさの割りに俊敏(しゅんびん)な動きを見せ、空を飛び回る。

すると大首は急に止まり、王顕に話し掛けてくる。


「お前は何者だ?」

「喋れるんだな、まぁいいや、何者ってお前の敵、それで十分じゃないのか」

「解せんな、なぜ私たちの姿を変えて殺すのか」

「効率が良いから、と言う訳でさっそく死んでもらう」


王顕は相手が感知できない速さで動き後を取ると、髪を掴み地面に叩き付けた。

地面にめり込む形で頭の半分が埋まり、掴んでいた髪から光に変わり始めると、大首は髪を自ら引き抜くと、空を飛び王顕から逃げるように離れていく。


「この空間を出られる筈がないのにな…」


王顕は右拳を顔の横に持ってくる。

ちょうど神の掌(ゴッドハンド)の効果が消えた。

次に使うのは、前方へ向けての単体に対しての超遠距離武法。


「”拳神直射突きけんじんちょくしゃづき”」


片足を踏み出し、腰を捻り右腕を突き出す。

電気を纏った1本の細い光が、数キロ先の大首の頭を貫くと空中で爆発した。


「スーパーに売ってる打ち上げ花火みたいになったな…、さてこの調子でレベル上げだ」


2時間ほど妖怪を捕まえては、力を与えて倒しまくった。

テントまでの帰りは、人の姿になり歩いて行く事にした。


「あいつら、どれくらいレベルが上がったかなーとっ!」


仲間のステータスを気にしながら歩いていると、目の前で、まるで昔の参勤交代の様に列を成して歩く人達を見つける。

王顕は空を飛び上空からその列を観察すると、数は数100人でほとんどが鎧や刀を身に付け、中央にはお偉いさんが乗ってそうな牛車が1つ。

とりあえず暗殺者の面を被り、牛車の横に降りる。


「さてと、どんな奴が居るのやら…」


手を牛車の戸に近付けた瞬間、反対側に居た和服で初老の爺さんが、杖から仕込み刀を抜き斬り掛かってきた。


「シッ」

「ぬあぁ」


反応が遅れ右腕を落とされ、仮面も弾かれた。

数歩後に飛び引くと、後にいたゴブリンキング並みの大柄の男が緑の大きな鉄鎚(てっつい)を振り下した。

王顕は思いっきり潰される。

大柄の男は、蒼い兜を外して素顔を(さら)す、(いか)つく頬に傷のある顔だ。


「オヤジ、こいつは誰だったんだ?」

「さぁのう、じゃが怪しい奴には間違いないのう」

「んん?」

「どうした陽禅(ようぜん)

「”琥鉄(こてつ)”が…」


鉄鎚が小刻みに震えている。

ドガァン

王顕が、自分を潰していた鉄鎚を殴り上げる。


「暗殺者の面って、この世界であまり役にたってないな…」

「お主その腕」

「あ~これくらいならすぐに治るよ、かなり痛いけど慣れてきたし、それより俺の手を斬り落としたあんたにビックリだよ」

「なんと」


王顕は他者の把握を使い、前の2人のステータスを確認する。

レベルは94と114で、事態に気付いて騒ぎ出す周りの奴らは30前後くらいだ。

気になったのは、レベルではなく名前だ。

大柄の方は【木曽 陽禅】、爺さんの方は【木曽 光照(みつてる)】。


(…朝日と同じ姓ね~、無関係じゃないだろな…)


彼らは目で合図して、陽禅が先に仕掛ける。

王顕は欲界の倉庫(たけじざいてん)を開き、装備を変えた。

雰囲気を合わせる積もりで、こちらも鎧兜を身に付ける。

全体的に紅く、兜には松の枝の様な角、鎧のいたるところには、能楽で使われる面が飾られている。

かなり不気味な見た目だった。

急に相手の服装が変わり、王顕を囲んでいた奴らがどよめく。

その姿を見た光照が叫ぶ。


「下がるんじゃ陽禅っ」

「ああ、分かってる」

「へぇ…攻撃しないんだな」

「なぜその防具が…、お主は本当に何者じゃ」

「なるほどなるほど、この防具を知ってるなら攻撃しないわな」

「忘れもせん、その防具の名は”摩可不可思議(まかふかしぎ)”、キョウトの悪将・(たいらの) 正盛(まさもり)のものじゃ、そして奴の死後に奴と共に燃やされたはずじゃ」

「防具の名前は合ってるな、平 正盛ってのは知らないが」


摩可不可思議の効果は、攻撃を当てたものに超強力な呪いと毒を与える。

呪いはMP減少と、魔法もしくは武法を数分間封じる。

毒は通常の3倍強い毒だ。

互いに動かない。

木曽の2人は鎧兜で警戒している。

王顕にとっては取るに足らない相手だろうが、さっき手を落とされている、今の王顕の体にそんな事が出来るのは、レベルが上位ボス級、もしくは特殊なスキル、武器による攻撃だ。


「オヤジ、俺がここでこいつを抑える、オヤジは夕日を連れて先を急げ」

「駄目じゃ、奴の防具が本物なら、お前1人では時間を稼いだとて数分じゃろう、儂が残る」

「だが」

「老い先短い老人が先に死ぬべきじゃ」

「…気を付けろよオヤジ」


陽禅は部下を連れて進み始める。

牛車からは、最後まで誰も顔を出さなかった。

先に動いたのは王顕で、真正面から走り近付き殴りかかる。

武法は使わず普通に殴りかかる。


光一閃(こういっせん)

「お…おお、またかよ」

「ぬうぅ」


王顕はさっきと同じところを斬り落とされ、光照は攻撃により毒と呪いを受けた。


「やはり、この呪いに毒…本物じゃったようじゃのう、陽禅には荷が重かろう」

「うーん、その刀の能力かな」


この状況なら、光照のHPは数秒で0になるだろう。

だが光照のHPが半分を過ぎた辺りで毒が消える。

スキル”毒抜き”の効果で毒を消したようだ。

毒抜きは毒による効果でHPが半分になると自動で毒を消し、HPが半分の間は毒を受けない。


「その刀を見せてくれない」


王顕は再生途中の腕を伸ばす。

光照は一歩大きく踏み込んで刀を抜く、その動きはまさに神速。

だが、残念な事はその攻撃を王顕が1度見ていること。


「神速十三刃」

「ほい」

「なんじゃと」

「その技は見たよ」


王顕はそのまま刀を奪い取る。

直刀の名は数珠丸(じゅずまる)、効果は物理法則無視の切断のダメージ貫通だ。

武器を奪われ戦意を失うと思っていたが、無手のまま向ってきた。

懐に入ると顎紐(あごひも)を掴み、勢い良く投げ地面に叩きつけると、そのまま関節技で固められる。

上手に固められ、力が入らなかった。


「こりゃ驚いたな、このままじゃ立てないぞ」

「そうじゃ、お主は息子達が安全な場所まで行くまで、ここでジッとしていて貰おうかのう」

「…」


王顕は地面に突っ伏したまま黙った。

その沈黙に不信感を抱きながらも、力は一切緩めない。

数秒後、王顕が口を開く。


「木曽 朝日って知ってる?」

「!!その名は」

「ビンゴだな」


朝日の名前に一瞬だけ動揺を見せたが、達人として王顕を固めている力を緩めはしない。

そう、力を緩めては居ないのに王顕は立ち上がった。

スキル変身により、体を子供の大きさに変え関節技を抜け出したのだ。


「ほら返すよ、またどこかで会おうな」

「逃がさんぞ」

「バイバ~イ」

「むっ」


王顕は数珠丸を投げ渡し、光照は王顕をもう1度捕らえようと駆け出すが遅かった。

テレポートを使い仲間の待つテントに向った。

少し書いてなかったので、前の内容を読み直してこんな感じになりました

今回はレベル上げと、木曽家の話

次回はヒノモト最初の大きな都についてですな

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