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海を亡ぼす者

事情があり、今月は最後の投稿にします


クシ島の周りは、海が荒れ波が高く、大きな渦が幾つも出来ていた。


「…何であの人たちを殺した」

「それが、わたしの、そんざいりゆう、だからですからね、まぁ、わたしじしん、ころすのが、すきなのですが、ふふふ」

「仲間がやっとそろったと思えば、こんな奴が居る島だったなんてな」


王顕は拳を強く握る。

海亡はスッと手を前にかざすと、水で出来た巨大な腕が彼女の後ろに現れる。

腕は王顕たちを目掛け、振り落とされた。


「ふせげるかしら」

「防げるとも、災流し(さいながし)


災流しは防御の武法、立っているだけで、全属性の攻撃を(そら)らす。

水の巨腕(きょわん)は、左に反れて地面を(えぐ)り、山に穴を開けた。


「あなた、ひとでは、ないの…」

「叉夜とルカは欲界の倉庫(たけじざいてん)に入れ、イジェメドは竜化してミクトルンとエリザ、それと朝日を乗せて本土に向かえ」

「は、はい」

「かしこまりました」

「本土で待ってるぞ」

「―お兄ちゃん…」

「王顕様、死なれては困りますから」

「…」


王顕は海亡の問いを無視し、仲間達に指示を出す。

叉夜とルカの2人は、さすがに自分達が邪魔になると悟り、素直に従う。

イジェメドは指示通り竜化し他2人を背に乗せる。

ミクトルンは心配な顔を向けて、エリザは少しムッとしている。

朝日は意識を失う寸前だった。

飛び立とうとするイジェメドに、海亡は微笑みながら水の槍を何十と飛ばす。

王顕はさっきと違う、防御の武法を使う。


反射鏡(はんしゃきょう)っ」


光の武法、光と闇以外の攻撃を威力を半減し反射する。

それをイジェメドの前に発動させ、槍を反射させた。

海亡はその槍を避けようともしない、身体中に突き刺さるが、自身の体を水に変え、ダメージを軽減させている。


「あなたは、わたしが、こわくは、ないのですか、すくなからず、おなかまは、わたしに、きょうふ、していましたが」

「あいにくと俺は、そういうの(にぶ)くてな」


欲界の倉庫(たけじざいてん)から、次元闘技場と武具を取り出す。

武器は課金アイテムと伝説級ドロップアイテムを合わせて作った斧の武器、名は”サクリファイス”、紫色の両刃で、片方がもう片方の倍の大きさの斧、血管のような筋が全体に脈打っている。

効果は攻撃を当てるたびに、MPにもダメージを与える。

防具は破魔の衣を身に着ける。


(これで奴の攻撃は、ほぼ無効化で…)


ボキィッ

次元闘技場を使った瞬間、王顕の右腕が(ひしゃ)げた。


「あ、がああああああああああああぁぁぁぁ」

「あら?、うでを、ふきとばした、つもり、でしたけど、がんじょうですね、それに…、まわりの、けしきを、かえるなんて、おうけんさま、あなたは、かみなのですか?」


王顕の右腕は骨が何箇所も折れ、肉を裂き外に飛び出していた。

王顕が痛みで叫んでいるのに、普通に話しかけてくる。

右腕は自動回復(オートヒーリング)で、数秒で完治するはずだが、治らない。


「はぁはぁはぁ」

(何が起きた…、水の塊が飛んできたのは分かる、だが何故その攻撃が無効化されない…、魔法じゃないのか)


王顕は痛みの感覚を残したまま、防具を無量大数(むりょうたいすう)へと変える。


「そうそう、それって、どんなしくみ、なんでしょう、ものを、だしいれしたり、できるなんて、べんりですね」

「……」


王顕がこの世界に来て、初めて危機感を覚えている。

隠蔽を解き、魔王の姿に変える。

鎧兜も中身に合わせて、大きさが変ったし、滲(にじ)み出る魔力の質と量もレベルアップと共に、激変している。

もし次元闘技場を使っていなかったら、ヒノモト大陸に住む全ての生物が王顕の魔力に何らかの反応をしただろう。

そして、その魔力を今一番近くで感じている海亡は、肌を火照(ほて)らせ、自分の体を抱きしめ、股をキュッと閉じ、(うる)んだ目で王顕を見ていた。


「あぁ、あああぁ、わたしが、もとめて、やまない、ものを、やっっっっとぉ、みつけたぁ」

「ツッ」


海亡も魔力を溢れ出させると同時に、どす黒い水が彼女の足下から噴き出した。

それは一瞬で津波になり、王顕を呑み込んだが、回復するだけでダメージにはならない。

王顕は流されながらも、飛翔のマントを取りだし、宙に浮かび水から逃れる。

だが、次元闘技場の空間が崩壊していく。


「くっそぉ、空間を壊せるのかよ、電光切過(でんこうせっか)


レベル320で覚える武法、光速で電気を帯びた手刀を持って相手を両断する。

ゲームではそうなっているが、この世界での王顕が使うと…、海亡の左肩から入り、右腰までを切断するが、島の美しい山にも大きな亀裂が入り、山崩れを起こした。

実はこの攻撃は山を貫通し、後ろ数100キロに在ったヒノモトにまで届いていた。

ヒノモトの人達は、王顕の電光切過を半月が横切ったと語る。


「ふふふ、うふふふふふ、なんて、いりょくなの、わたしの、からだを、せつだんするなんて、かみでも、ふかのうなのに」

「あんな状態で生きてんのかよ、まぁHPはそんなに減ってないみたいだし」

「あなたは、わたしだけの、ものぉ」


海亡は切断面を液状化させ、くっつけて治す。

その間に王顕は、彼女より高く飛んだ。

両拳を強く握り、落下する。

対して海亡は両手を広げる。


「島ごと消えろ、悟れ、抗えぬ力に(ふかせつふかせつてん)

「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」


無数の突きと蹴りで、海亡と一緒にクシ島を破壊しにかかる王顕。

その無数の攻撃に対抗する為、海亡は黒い水で出来た巨碗を幾つも造りだし、悟れ、抗えぬ力に(ふかせつふかせつてん)にぶつけた。

2つの技の衝突はすさまじく、衝撃波で島が砕け始め、雲は散り、海の波も逆流した。


「ぬうううううぅ」

「ん、あら、これは…」


王顕の攻撃が海亡の手数を凌駕する。

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ

美しかった島は、跡形も無く失われた。

海にポッカリと開いた巨大な穴に、海水が流れていく。

王顕は目を凝らすが、海亡の姿は視認できない。


「索敵…」


穴の中心に反応が1つ。

ブワアアアアアァ

嫌な魔力が、穴からゆっくり噴出す。

姿を現した海亡の服は、ボロボロで左肩から左脇を失っていた。


「威力が弱まったか…」

「ふふ、ここまで、しょうめつしたら、さいせいに、じかんが、かかるわね」

「お前は、罪も無い人をたくさん殺した、お前も死ぬべきだ」

「ふふふふふふふ、わたしは、けっして、しなないし、あなたは、わたしの、もの、わたしだけの、だんなさま」

「ヤンデレなんて、求めてないわ…、邪手合掌」

「んん、あらあら」


王顕はで海亡を潰しにかかり、海亡はそれに耐えてはいるが、身動きがとれなくなっている。

その間に王顕は、次の行動に出る。

本日2回目の、悟れ、抗えぬ力に(ふかせつふかせつてん)を放つ。

今の海亡には防ぐ余裕はない。


「おらあ」

「あまいわぁ」


王顕の攻撃が始まって、すぐに彼女は体全体を液体化すると、海へと落ちていく。

海の色が、海亡が落ちた場所から黒く染まり、無数の手が王顕を掴もうと迫る。


「ぬおおおおお、数が…ぐっ」

「つかまえたわぁ、ふふふ」


1つの手が王顕の足を掴むと、他の手が一気に全身を包み込んだ。

黒い水は生物の(HP)を触れているだけで、減らし続ける。

そのスピードは、普通の人なら一滴(ひとしずく)体に付いただけで即死、上位神なら今の王顕の状態になったら即死するものだ。

だが王顕のHPは未だ測定不能のまま、だがHPが減っているのには変わりないので、痛みを(とも)う。


「ぶくぶくぶくぶく」

(痛い痛い痛い痛い、体が()けてるみたいだ)

「このまま、わたしの、なかで、えいえんに…」

(残念ながら却下で、こいつを倒すには、やっぱあれきゃないのか…、まぁ既に島を破壊しちまったし、使うか…)


王顕は痛みに耐えながら、ヴォーダンαを取り出した。


(滅せ、ヴォーダン!!!)

「!!!」


ボシャアアアアア

黒く染まった海に目掛け、放たれた終わらせる一撃。

ズアアアアアアアアアアアア

超巨大な渦潮が黒い水を躊躇(ちゅうちょ)無く、飲み込んで消滅させる。

消え行く最後まで、彼女の笑い声が途絶える事はなかった。


「あなたを、ぜったい、わたしの、ものにする、ふふふふふ」


索敵の反応から消える直前に聞こえた言葉。


「殺ったのか…、ヴォーダンαの効果は絶対だ、倒したと思うが最後のあの声…」


2人の戦いで島は消滅、周りの生物も死に絶えた。



クシ島が在った場所から10キロほど離れた海、そこに女の頭部が浮かんでいた。

彼女は頭だけを何とかヴォーダンαの効果範囲外まで、離脱させていたのだ。


「ふぅ、さすがに、しぬかと、おもったわ、はやく、からだを、もどして、だんなさまを、むかえに、いかなきゃ、ふふ、ふふふふふ」


海亡は笑いながら、誰にも知られる事なく、深海へと沈んでいった。



王顕はヒノモト本土に向かい飛び、途中でイジェメドを見つけた。

イジェメドも王顕に気付き、空で停止する。


「王顕、奴は倒したのか?」

「いや、倒しきれてないな、俺も深手を負ったしな」

「―お兄ちゃん、痛そう」


イジェメドの問いに、自分の拉げた腕を見せる。

ミクトルンがそっと怪我した腕を優しく握る。


「治らないのか?」

「ポーションを飲んでみたけど、HPは回復してる、ただ奴に付けられた傷が治らない」

「王顕様のあの力に匹敵する、ヒノモトに入ってすぐにとんでもない者に会ったな」

「俺もそう思うよ、まさかあそこまで脅威になる奴が居るなん…、てっおわぁ」


ミクトルンの手がドロッと溶けると、王顕の負傷した腕を包み込んだ。

ズズズウゥ

彼女の手が離れると、王顕の手は元通りに戻っていた。

ミクトルンのスキル、”譲渡(じょうと)”は自分の質量を他者に与え傷を治す、もしくは故障を直す。

王顕の傷を治すのに使った質量は、300キロちょっと使ったらしい、しかし王顕の重さは変わっていない。


「お、おおお、マジか…、これは便利だな」

「―褒めて」

「ああ、ありがとうな、よっと」


王顕はミクトルンを抱きかかえると、肩の上に座らせる。

あまり表情は変わらないが、嬉しそうだった。


「さて、朝日にいろいろ聞きたいが」

「…」

「その女は、イジェメドに乗せたときに気を失っている」

「みたいだな」


とりあえず、イジェメドに乗ったままヒノモトに向った。

飛んでから2時間と少し、陸地が見えてきた。

ヒノモトの大地に着いて、すぐに欲界の倉庫(たけじざいてん)から2人と出す。


「ご主人様、無事ですか、どこか怪我とかしてませんか」

「主様がそんな不覚を取る訳がありません、(わたくし)は信じておりました」

「そ、そうか」

「さて、友よ、これからどうするよ」

「ん~、ここがヒノモトのどの辺になるのか分からんしな、とりあえず北に向ってみるか」


王顕の提案で北に向かう事になり、進み始める。

夜になり、林道に入る前に入り口でテントを張り、一泊することにした

朝日には気が進まなかったが、気を失っている内に、眷属への分配を使いレベルを上げてやる。

叉夜とルカと同じ300程度まで上げたが、気を失っていても何かを感じたのか、目を覚ますと悶えて喘ぎ声をだし、また気絶した。

だが、これで王顕の所有物になったので、欲界の倉庫(たけじざいてん)に入れれるようになった。

他にも王顕がレベルを渡してなかった奴らにも、それぞれ分け与えて、全員を眷属にした。

正直、イジェメドとミクトルンは見た目が幼い感じなので、ほんとやってはいけない事をしているようで、いたたまれない気持ちになった。

次回の更新は12月になります


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