不穏な動きをみせる国がある
朝、寒いです
頭痛くなってくるし、もう最悪ですね
妄想を書いていっている割には、以外に続いていて自分でもビックリしてるッス
リッドテム大陸にある最南端の町ブフ、その町の外れ森に盗賊のアジトだった。
木々の上に造られた小屋で、それなりに高い位置にある。
傷を負った仲間達の手当てを、1人の獣人の少女が足を使い器用にこなしている。
蝙蝠の獣人の少女。
茶髪の髪に頭と大きさが同じくらいある尖った耳、目は常に閉じている。
灰色がかった肌に、腕は膜による翼が肩から脇腹にかけ広がり、指も親指以外は細長く伸び膜があり翼の一部になっている。
体はかなり痩せていて、胸は多少あるが肋骨が浮き出ている。
そして脚は細長く、足から先は人間の手のひらの様になって、実際の手の代わりになっている。
「みんな…、私がもっと速く駆けつけていれば」
「…」
やられた奴らは、気絶したまま意識が戻らない。
ヒナは夜に力を発揮できる種で、朝はあまり得意ではなかったが、今はそうも言ってられない。
小屋の外、少し離れた監視小屋へと向う。
「たぶん他のみんなは捕まっちゃってる、明日にはここに攻めて来るかもしれない、その時は私が家族を守る」
木に逆さにぶら下がり、耳を澄ませ音による情報を逃さないようにする。
彼女は生まれつき目がほとんど見えないため、聴覚か優れて発達している。
体力を温存する為、浅い睡眠を取る。
風の音、川の流れる音、動物達の息遣いの音、眠りながらも音による情報を正確に聞き取る。
朝日が森を照らし始めたとき、複数の足音に気付く。
「来た」
ヒナは音のする方へ飛ぶ。
運良く今日は森に霧がかかり視界が悪かった。
森に入って来たのは3人。
叉夜にイジェメドそして盗賊のリーダーだ。
「たぶんヒナは既にこちらに気付いているだろう」
「視界が悪いけど、貴方をそのヒナが攻撃したりはしないよね」
「それはない、ヒナの音を聞き分ける能力は、既にどんな生物が近付いているのか分かっているからな」
生物が動けば、身体中からあらゆる音が鳴る。
それにより体格、体重、性別などを一瞬で把握する。
さらに、それぞれの癖による音も覚えているので、個人の特定もできる。
索敵の効果範囲の端に反応があった。
「来たみたいだね」
「森の中を飛んでるにしては速いな、吾より飛行能力は上かもしれん」
2人はいつでも迎撃できるように動き出す。
叉夜は盗賊リーダーの近くに、イジェメドは空高く飛ぶ。
煙玉を使ってくるかもしれないので、その対抗策だ。
ほどなくして、反応が一定の距離で回るように飛ぶ。
「…同じ手は通用しないか」
ヒナは相手の動きで、何を考えているのか察する。
常に動き回る事で、狙われにくくもしている。
相手との実力差をちゃんと理解した動きだった。
「まぁ動き回ったところで、ここら辺一帯を焼けば同じなんだけど」
「被害が森全体になるから却下、リーダーさん貴方から説得してください」
「う、うむ」
盗賊のリーダーは叉夜の前に出ると語り始める。
叉夜は、先止めをいつでも発動できるように意識を集中させている。
「聞いてくれヒナ、俺たちはブフで働く事になったんだ、もちろん今までの罪を償った後だが、他のみんなも了承してるし怪我だってちゃんと治療してもらえるん、だからそっちに居る奴らも町に入れたいんだ、分かってくれるな?」
「…分かった」
リーダーの説得に答えるヒナ。
動きを止めて姿を現す。
力を抜く3人。
「…リーダーが決めたのなら従う」
「ヒナ…、ありがとうな」
洞窟に倒れていた残りの盗賊たちを、イジェメドがドラゴンの姿になり町まで運ぶ。
叉夜はリーダーとヒナの3人で別行動をし、ヒナに向かい1つの提案をする。
「ヒナ、ボク達と旅をしない?」
「何を言っているのか意味が分からない」
「キミは彼らとは違うし、彼らはキミを扱いきれてない」
「…」
叉夜の言葉に、トゲのある返しをした。
リーダーは顔を伏せて何も言わない。
叉夜は、それぞれ違う色の目を光らせる。
「ボクのご主人様ならキミを扱いきれるし、この世界を旅できるよ」
「世界を旅…」
「まぁ決めるのはヒナで強制はしないし、でもこちらにも都合があってね、今日の午後12時までに決めてくれるかな」
「私は…」
話は終わりと、それから3人は町までは無言のままだった。
ヒナには2人が借りている場所の記された紙を渡しておいて、付いて来るなら12時までに訪ねてもらい、残るのなら来なくていいと伝えた。
叉夜とイジェメドは、旅の準備に道具を買いに出る。
回復や状態異常を治す薬を買いあさる。
どれも単一の効果の物しかなく荷物が増えるばかりだったが、王顕が居ないと合成も出来ない。
その頃、盗賊たちは大きめの施設に集められていた。
更正として、各自低い賃金で3ヶ月間働いてもらい、3ヶ月後には町人として正式に働いてもらい、仕事に見合った賃金が支給される事を説明され、暮らす場所も提供してもらえる事になった。
ヒナは叉夜の提案に悩んでいた。
彼女が他のみんなと違うのは知っている。
だが、家族として育ててくれた恩義もある。
そして彼女自身、他のまだ見ぬ世界に大きな興味が幼い頃からあった。
「私は…」
「少しいいか」
「はっはい!」
そんな時、リーダーが話し掛けて来た。
他の仲間は席を外してもらっている。
リーダーは、真剣な顔で話し出す。
「お前を拾い、今まで娘のように育ててきた」
「はい」
「仲間たちも家族だと言ってくれてる、だがヒナお前は俺たちと根本的違った、身体能力、スキル、魔法、どれも俺たちでは逆立ちしても届かない領域にお前は居る」
「…うん」
「お前は、盗賊と言う籠の中に居るには狭すぎる」
「…」
話の途中から知らず知らずの内に、涙が頬を流れる。
それは育ての親であるリーダーも同じ。
「…それだけだ、後は好きにしろ」
涙を拭い、建物の外に出ようと扉の取っ手を掴む。
背中越しに聞こえた。
「ありがとう、お父さん」
リーダーは振り向くことなく、少し頭を上げるとそのまま外へと出ていった。
扉に背中を預け、手で目を被う。
「行ってこい、バカ娘」
午前11時、叉夜たちが仮住まいしていた場所に来てみると、入り口にヒナが逆さにぶら下がっていた。
「時間前だけど、決まったみたいだね」
「ええ、一緒に行くわ」
「仲間が増えるのは良いが、このことを王顕はなんと言うか」
「大丈夫だよ、ボクのご主人様だよ」
「答えになっとらんわ」
ヒナは仲間になる相手だが、家族を怪我させた事もあり、警戒をしている。
叉夜はマイペースな意見を言うだけで、イジェメドは頭を抱える。
「それじゃあ、お互い改めて自己紹介かな、ギクシャクするのも嫌だしね」
叉夜はヒナの警戒をどうにかしようと、自己紹介を提案する。
提案したからには自分から、手をあげて自分の事を話す。
「私は叉夜、人猫で嫌われ者の黒猫だった、元は奴隷として売られて、今のご主人様に買われたの、それからはご主人様と一緒に旅をしているかな」
「…」
叉夜の自己紹介に、ヒナは少し呆気にとられている。
奴隷が買われた後、どのような扱いを受けるかを知っていたからこそ、今の叉夜の有り様が驚きだったからだ。
叉夜は自分の自己紹介を終えると、イジェメドに次と言わんばかりに背中を押す。
イジェメドはあーーと頬を掻くと、自分の事を話す。
「火焔竜王・イジェメド、神に封印されていたところを、その封印を解き自由にしてくれた友と今は旅の共をしている」
「竜王…」
そして、伝説の四大竜王だ。
ヒナは幼い頃から知識欲が凄まじく、商人の荷物から奪った本を片っ端から読み漁っていた。
その為この地域から出たことが無くとも、外の世界の事には一般人より知識があったりもする。
なのでイジェメドの現状にも驚いていた
最後に叉夜は、ヒナに自己紹介を求めるように視線を向ける。
「私はヒナと呼ばれていたけど、さっき本当の名を教えてもらった…」
「?」
「本当の名だと」
ヒナは盗賊のリーダーが付けた名だったが、彼女を拾った際に名前の書かれた紙が1枚入っていたらしい。
「…私は元盗賊ヒナ、改めエリザノーラ…、エリザノーラ・レトロコレクション・ブラットウェポンだ」
「なっが!」
(ブラットウェポン…、確か数少ない吸血鬼の一族の名だっだか…)
【エリザノーラ・レトロコレクション・ブラットウェポン】
種族 蝙蝠人、吸血鬼
役職 冒険者
レベル 21
HP 580
MP 470
攻撃力 57
防御力 82
特攻力 64
特防力 100
「そうだな、これでは呼びにくいし、エリザと呼べばいい」
「あ、そうだね、これからよろしくねエリザ!」
「これでまた変なのが増えたわけだ」
叉夜が手を差し伸べると、握手を交わした。
今度は、エリザが最も気になっていた事を質問する。
それはこんな2人が一緒にいる理由、ご主人様や友と言われる者の事だ。
「貴女たちの主ないしは友の事を聞かせてもらえる?」
「「…」」
漂う雰囲気か変わったのを感じる。
まずい質問をしたのかと、不安が冷や汗となり頬を流れる。
フルフルと震える叉夜。
「う、うううわーーーーん、ご主人様あああぁぁ」
「はぁ~…」
「な、なに」
叉夜が大声で泣き出し、イジェメドがやれやれとため息。
エリザは何が何だか分からずオロオロする。
叉夜が落ち着くまでに、イジェメドが王顕の事をエリザに話した。
「そんな人が存在するなんて…」
「まっ実際に自分で確認をすればいいさ」
「う、ううう…」
3人はヒノモトのクシ島を目指し、イジェメドの背中に乗って空を飛ぶ。
その頃、ルカとミクトルンは立ち寄った村で竜車を借りて港町に向かっている途中だ。
手綱を握るルカと、荷台でスライムの体を試すミクトルン。
「―見て見て、デロデロになる」
「ミク様のスキルは、主様に匹敵するものがありますね」
「―…お兄ちゃんはもっともっと凄い」
「そうですね、あの方の役にたちたいと思いながらも、役にたつどころかお側に居ることすらできていない…」
「―ルカは頼りになってる」
「…ありがとうございます」
後悔し落ち込み始めたルカを、ミクトルンがふとこぼした言葉が支える。
そんな中、一本道の反対側からある一団が見えた。
旗を掲げているが、見たことの無い旗模様だ。
まぁ森の館で閉鎖的だった彼女が、知らない内に生まれた国かもしれない。
「騎士のようですね、ミク様は荷台の奥に」
アックウーノ大陸はデスカドリポカの居る大陸だ、こんなところで騒ぎを起こす訳にはいかない。
ミクトルンは荷台に有った木箱の中に隠れる。
「すまないが君ぃ、少し聞きたい事があるんだがぁ?」
「…何でしょうか?」
先頭を歩いていた、いかにも良い家系出のロン毛騎士が話し掛けてきた。
内心は無視して先を急ぎたいが、返事をする。
「そう警戒しなくていいぞぉ、私は宗教国家【グリモワール】の最高機関【十の罪源】が1人ぃ、傲慢の【ディネルコン】、聞きたいのはぁイヴィルと言う人物の情報さぁ」
「イヴィルですか、聞いたことがありませんね」
「ホントにぃ」
「はい」
「「…」」
視線を外さず数秒。
髪をかき上げ、ほくそ笑むディネルコン。
「そおぉ、ありがと、先を急ぐわよ」
後に並んでいた騎士たちは、整列を崩す事無く同じ歩幅で歩き出す。
ルカは頭を下げ先を急ぐ。
(彼らは主様を探している?、いったい何故、無事合流できたらすぐに知らせなければ)
「―今の人じゃなかった」
「ミク様?、それはどう言うことですか」
「―あれはミクに近しい存在」
「ミク様に…、まさか神」
「―ううん逆」
「悪魔…」
「―そう」
「嫌な感じです、急ぎましょう」
箱から出て来たミクトルンの言葉には重みがある。
ルカは手綱を握る手に、力が自然と篭る。
宗教国家グリモワール、ヌー大陸に聖地を置く世界最大の悪魔による国。
今日は王顕の仲間達の話をメインにしました、新しい仲間は蝙蝠吸血鬼の女の子…、我ながら好き勝手やってます
次回は王顕とヒノモトのお話かな、合流はすぐ出来るといいな~




