天使が魔王を探す
台風の影響で大きな被害がでてますね
家をなるべく出ないで、安全な場所に篭った方が良いのかな
命あっての人生ですからね
アックウーノ大陸の西、【ノーマ村】。
太い木々の上に家が建てられて、村の周りに何十もの結界が張られ、少し離れた場所に綺麗な泉と川がある。
魔女と魔法使いが集う村。
英雄で・召喚師ベアトリクスの故郷でもある。
泉の上を飛びながら、踊るものが1人。
金髪碧眼に、頭に2つの環が浮かび、8枚の純白の羽が生えている。
「ふふふ、泉の上って涼しい…」
【ワールド・インフィニティ】で、王顕の代わりに彼の陣地を守ってきた女性、サンこと佐々原 シノだ。
種族や役職で特別に得られるスキルがある。
天使の特別なスキルは、”天使の様な女性”光と風を操るスキル、魔法やアイテムを使わなくても飛べたり、光の速度で移動出来たりする。
聖天使の特別なスキルは、”女神への昇格”自分で設定した女神に姿を変え、一時的に闇以外の属性を強化、全ての武器、防具に光の属性を付与する。
泉に近付く影が1つ。
「シノ、昼食の準備が出来たよ~」
「ありがとう、ベアさん」
ベアトリクスが迎えに来た。
彼女の家で暮らし始め、4日経っている。
彼女にはこの世界の事、勇者の事、今も魔王と戦っている事、そして少し前に王顕に出会った事を聞いた。
「ベアさん、私明日にここを出ようと思うの」
「…どうしたの?、ここでの暮らしが嫌かな?」
「そうじゃなくて、人を探したいの」
「それって、王顕の事かな?」
「…うん」
「物好きだね~、見つけて倒してくれると、こっちとしては楽できて良いんだけど」
「ふふふ、そんな事はしないわ」
食事をしながら、2人は明日事を話した。
ベアトリクスが王顕の事をシノに話したのは、シノのステータスが王顕とほぼ同じだったからだ。
【シノ】
種族 天使
役職 聖天使、神を超えし者
レベル 測定不能
HP 測定不能
MP 測定不能
攻撃力 測定不能
防御力 測定不能
特攻力 測定不能
特防力 測定不能
種族、役職は王顕と違い設定されている。
レベルからは、王顕と同じで測定不能に統一されていた。
食事を終えると、ベアトリクスに部屋に来るよう言われたので、足を運ぶ。
コンコン
2回扉をノックして、中に入る。
見るからに魔女の部屋、爬虫類のミイラ、マンドレイク、ドス黒い液体の入った容器、入るのには少し勇気がいる。
「来たねシノ、もうそっちの姿になってるのか」
「うん、この姿に慣れとかないと、あっちは目立つから…」
シノは、隠蔽を使い、人の姿に変えていた。
黒髪のサラサラとしたロングで、胸はそれなりに大きく、手足は細くて長い。
服は“適応服”旅人の装いで、場所によるバットステータスを受けなくなる。
つまり、火山地帯で熱によるHP減少が無くなったり、極寒地帯でのMP減少が無くなったりする。
「それでベアさん、話って何ですか?」
「うん、旅に出るなら、教えとこうって思ってね」
ベアトリクスは、部屋の中で召喚魔法を使う。
床に魔法陣が浮かび、中央に出て来たのは、黄色い小鳥。
「あ、可愛い」
「召喚魔法ね、貴女に教えてあげる」
「え、魔法って教えてもらえるの?」
「そうね、スキル”伝授”を使えば、貴女も召喚魔法が使えるはずよ」
スキル伝授はゲームで無かったスキルだが、その効果はスキルを使った者の魔法、武法かを他者に覚えさせるスキルだ。
シノは頭を傾げ、疑問を訪ねた。
「召喚魔法…、それって自分で召喚したいモンスターを召喚できるの?」
「そうね、任意で召喚できるわよ」
ベアトリクスはシノに近付くと、彼女の頭に自分の右手をソッと添えると、淡く光りだす。
頭の中に、何かが流れ込んでくる感覚。
「ほい、これで召喚魔法が使えるようになったはずだよ」
「あれ、これでもう終わり、あっさりしたものだね」
「そんなものだよ、さ、使ってみて」
「えっと…、えい…!」
魔法陣が現れ、その中から出て来たのは、猿人だった。
中国の舞踊に使いそうな赤い服に、毛深い体と少し尖った耳、背はあまり高くなく150程の男。
「…は?、何だお前ら、てかここ何所だ?」
「おおおおお、本当に出て来たよ」
「このモンスター…、普通のステータスじゃないんだけど~、それに文献に良く似た奴を見たことが…」
彼は面積が最大の【ヌー大陸】に封印されていたモンスター。
文献には、天に斉しい力を持った者で、神々に単身で挑み、大きな被害を与えた後、山深くの山頂に封印されていた。
そしてこのモンスターは、【ワールド・インフィニティ】にも存在して、その時は中級ボスで登場した。
【日鋼王】
種族 猿人
役職 斉天大聖、復讐者
レベル 590
HP 37600/37600
MP 35000/35000
攻撃力 2880
防御力 2000
特攻力 2500
特防力 2000
シノは日鋼王に手を差し伸べ、笑顔で言った。
「貴方は今日から、私と一緒に旅をしてもらうわ」
「…お前が俺をこの場所に連れてきたのか?」
「そうよ」
「…人間のくせに、普通じゃねぇな」
「人間?、ああ~そっか、今隠蔽を使ってるんだっけ」
「何言って…ぬあ」
シノは今の自分の姿を確認して、隠蔽を解いた。
眩い光が部屋を包み、シノの姿が天使へと変わる。
日鋼王はシノの姿、ステータスの変わりように愕然とする。
「な、な何者なんだ…」
「私はシノ、それ以外には言い表せないかな、それで返答は?」
「…一緒に旅だったか、お前に付いて行けば俺も…、旅には付き合う、そしてこれからあんたの事を師匠と呼ばせてくれ!!」
「え、えええぇぇぇえええぇぇ」
「本当に大丈夫、こんなのと一緒に旅なんて、シノに手を出しても返り討ちに出来るのは分かるけど~」
「う~、大丈夫だよ」
日鋼王のとんでも発言に、思わず大声を出してしまうシノ。
ベアトリクスも自分が教えた召喚魔法で、こんな事になるとは思っていなかったので、シノの事が心配になっていた。
何とか話はまとまり、明日に備え部屋に戻った。
「ふ~、何か疲れちゃったな、日鋼王が師匠って呼ぶなんて、それって玄奘三蔵の事だったよね」
外の小屋に日鋼王を隔離して、彼の元ネタになった話を思い出す。
中国の伝奇小説【西遊記】が元ネタで、三蔵法師が3人(孫悟空、沙悟浄、猪八戒)のお供を従え、天竺に経を取りに行く物語。
日鋼王は孫悟空(美猴王)の事だ。
翌日、シノは日鋼王を連れて、村を出るところだった。
そこに村人達が集まり、見送りに来ていた。
村の周りに居座っていた盗賊を捕らえ救ってくれていた。
この村には貴重な魔道書が数多くあるらしくそれを狙ってくるそうだ。
今回はただの盗賊ではなく、どっかの金持ちに雇われた特殊な奴らで人数も多く、ベアトリクスや他の魔法使いだけだと手が回らなかっただろう。
そこへシノが守護城壁を使い村の防御面を強化し、シノは魔法”底無沼”を使い村の周りを沼地に変え、敵のほとんどを無傷で捕獲、雇い主を聞きだし2度と村が狙われないように少し懲らしめていた。
「村を救ってくれてありがとうのう、少ないかも知れんが食料と水じゃ」
「いいのですか?」
「ああ、持って行ってくれ」
シノは戸惑いの笑みを浮かべる。
村長さんが手渡してくれた袋の中には、数日分の保存が効く食料と水が入っていた。
子供たちが近付いてきて、シノを囲んだ。
「シノ様どこに行くの~」
「ずっと遠い所だよ~」
「またノーマ村に来てくれる?」
「ええ、きっとまた一緒に遊びましょう」
「シノ様これあげるよぉ」
「まぁ、嬉しいありがとう」
無邪気な質問に、優しく答えるシノ。
子供たちは、みんなで集めた木の実を手渡してくれた。
貰った物を全て、欲界の倉庫に仕舞う。
最後にベアトリクスがアイテムを手渡す。
「これ持っていってね」
「これは…」
「ふふ、これはね~私が世界を旅して、記したグリモアよ~、きっと役に立つ」
それは辞書のように分厚い緑の本、ベアトリクスが世界で見てきた魔法や魔術アイテムを記してある。
「シノ、また会いましょう」
「ええ、数日間ありがとう」
そしてベアトリクスと握手を交わした。
日鋼王を連れ添い、村を離れる。
村人は自分達が見えなくなるまで、手を振ってくれていた。
「見送ってくれる人があんなに居ると凄く気分がいいね、そう思わない日鋼王」
「そうですか、俺にはその気持ちわらりませんね」
「無関心ね、あ、それと日鋼王じゃ言いにくいから、貴方これからサルね」
「さ、サル…、師匠がそう呼びたいなら…」
「よしよし」
最初に目指すは、ベアトリクスの紹介でノーマ村から南にあると言う、獣人達の国【アマリナ】に向う。
そこには勇者の元仲間で、獣人の重騎士【ガトラン】に会いに行く。
最近は小説を書く時間と体力が無くて困るにゃ~
今回はシノ側のお話、王顕を探す旅に出るまででした
次回もシノについてのお話にしようと思います
それでは次回も読んでくれる事を願っています
獣人、獣で強い生物か~、悩みますよね




