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課金厨魔王と邪神の、ちょっとした戦い

ただただ暑い

カラッとした太陽光に、自分の汗で蒸す感じ

頭がボーーーーーーっとしてんな


とうとう20話目、これも読んでくれている皆様のお陰です

ふぅ次の話を考えないと!!

【ミクトルン・テクノウトリ】

かつてアックウーノ大陸の地下深くあった、冥府(めいふ)の女王にして、死の神。

冥府は、アンデットやスケルトンなど、死にまつわる者の流れ着く場所。

そしてこの大陸の原初を知る者。

彼女の敵になる者は居らず、他の神々すら恐れる存在だった。

それでも彼女の元に(つど)い、力を得ようとする神も居たが、たいていは彼女の発する魔力に当てられ、自我(じが)崩壊(ほうかい)するか、肉体が()えられず、死んではアンデット化していった。

彼女は孤独だった。



そんな時、アックウーノ大陸の地上では、種族間による大きな戦争があり、大部分が滅んでしまった。

その為、黒曜神(こくようしん)デスカドリポカは、滅んだ者達を再生させる事にした。

再生に必要なものに、滅んだ者達の骨が必要だったが、アックウーノ大陸で死んだ者の骨は、全て冥府に送られてしまっていた為、冥府に(おもむ)かなければならなかった。

そこで選ばれたのが、デスカドリポカの親友で文明神(ぶんめいしん)ケッツアンコアトルだった。

彼は1人で冥府へと向った、ミクトルンに会い事情を説明して骨を譲ってくれる様に願い出た。

彼女は彼に1つ条件を出した。


「―ミクと遊ぼう」

「…」


彼女は、純粋(じゅんすい)に他者とふれあいたかったのだ。

条件を問われたケッツアンコアトルは、1度地上に戻り、神々と話し合いで、3日後条件を()んだ。

それから4年の間、片や軽い遊び程度、片や命がけで冥府を駆け回った。

その4年の間で、地上は運ばれた骨により、再生された者達が平和に暮らし始めたので、遊び相手をしていた彼は、冥府を去ることにした。

だが、遊び足りないミクトルンは彼を追いかけて来た。

その際、彼女が少し本気になってしまったせいで、ついケッツアンコアトルを殺してしまった。


「―死んじゃったの?」


(しゃべ)らなくなった彼を、固有スキル”(しょく)”で自分の中に取り込んだ。

能力は死体を取り込み、生前のHPとMP、そして体と質量を自分のものにする。


「―また(ひと)り」


数日が経ち、親友が死んだ事を知り激怒したデスカドリポカは、総力を挙げミクトルンを討ち果たす事にした。

彼を筆頭に3人の使徒、7人の中級神と60人の下級神が集められ、彼等はすぐに冥府に向った。

冥府の一番奥で、彼女は体育座りをしていた。

ただ座っているだけで、大量の妖気(ようき)を、湧き水のように垂れ流していた。

レベルが2桁程度の者なら、一瞬で溶けて消えるだろう。


「―遊ぼぉ」

「「…」」


ミクトルンの問いかけに、無言で答える。

相手は1人だが、冥府に来てからある違和感を抱いていた。

彼女の居るこの場所までに、何者とも出会うことなく、ここまで来たのだ。


「我が友の(かたき)だ、死んでもらう」

「―新しい、―遊び相手」


地面に手を付き、立ち上がる。

手は地面に沈み、立った時の両足も重みで足の形に沈む。

ケッツアンコアトルに会った際と、質量が桁違(けたちが)いになっている。

冥府に存在した者を全て殺し、その身に取り込んだのだ。

殺したと言っても彼女にはそのつもりが無く、ただ遊び相手が居なくなったから、代わりを探した結果に過ぎなかった。

その後、半年かけてミクトルンのHPとMPを3分の1まで削り、封印魔法”断絶封印(だんぜつふういん)”で冥府の奥に封印された。

効果は火焔竜王を封印したものより強力で、こちらから干渉は出来なくなるが、封印された者は当然魔法、スキルは使えなくなり、レベルを日に日に下げられる。

彼女が封印されるまでに、下級神47人と中級神3人が死んで取り込まれた。

封印される前に、最後に残した言葉。


「―独りになるの?、―嫌だよ~」


今から約13億年前の話。



現在、ジャンクの森に建つ城。

1人の魔王の欲により、復活を果たした最強最悪の神。

王顕は彼女の過去を知らない為、どう対処していいのか分かっていない。


「―あなたは…」


体育座りのまま、話しかけられた。

頭をちょっと傾けて、見た目どおりの幼い声を発する。


「―力が欲しいの?、―ミクと遊んでくれるの?」


彼女の事を知っている者なら、究極の2択だ。

レベル3桁でなければ、どちらを選んでも即死。

そして王顕の答えは…。


「よし、お兄さんで良ければ、遊んであげよう!」


スクト村の事もまだ割り切れていないが、それでもここで目の前の彼女を放置はできなかった。

ステータスを見て、危険だと感じたから、と言うのもあるが、それよりも彼女がとても悲しそうな顔をしているのが、引っ掛かったからだ。

その答えを聞いたミクトルンは、分かりにくいが、少しだけ驚いているようにも見えた。

驚くのは無理もないだろう。

彼女の問い掛けに即答出来る者は、決まって力を得ようとする者だけで、遊ぶ方を選ぶ者は、今までどれだけ過去を(さかのぼ)っても存在しなかった。


「―アハッ」


ニコッと、可愛く微笑み、前屈みになりながら立ち上がると、ゆっくりと歩み近付いてくる。

歩く度に、地面には足跡がくっきりと残っていた。

王顕の目の前までやって来た。

彼女の遊びはいたって単純、ルール無用の戦いだ。

彼女は、魔法もスキルも一切使わずに、戦う事を遊びとしている。

だが目の前の彼は、自分の遊び相手を、快く受け入れてくれた初めての相手で、つい最初から本気を出した。

スキル”質量操作(しつりょうそうさ)”。

効果は自分の取り込んだ者を体の表面に出す事で、攻撃範囲を広げる。


「―ン!」

「え…おっワァ!」


ミクトルンの右腕が何倍にも膨れ上がる。

腕には男に女、子供から年寄り、人間や獣人など様々な者達の体が浮き出している。

今までに彼女が取り込んだ者が、形となって表面に出てきたのだ。

右腕だけで、王顕の身長を超えた。

遊びの内容を知らなかった王顕は、その腕で殴られて、吹き飛ぶ。

下から上に殴られた為、城の屋根を破壊し、天高く飛んでいく。


「ぬうううううううぅぅぅぅぅ」


無量大数の効果でダメージ0だが、だからと言って攻撃によって吹き飛ばない訳ではない。


「ぬうあぁ、やっと止まった、おいおい、これ遊びの領域(りょういき)超えてるだろ」

「―あははは」

「!!」


雲の上まで飛ばされると、後を追ってきた彼女が、今度は右脚を巨大化させ踵落(かかとおと)しをくらわせる。

王顕はとっさに両腕をクロスさせ、頭を庇う姿勢になり、腕に衝撃が伝わると地上に落とされた。

ドッバババババババババババアアアアアア

ベルメスの城を完全に消し飛ばし、ジャンクの森の木々を倒した。

まるで巨大な隕石が落ちた後、クレーターのようになってしまった。


「おっもいなぁ」

「―フッ!」

「ゴフッ」


ズシンッビシッ

空から落ちてきたミクトルンが、王顕の腹に蹴りを入れた。

地面に体が深くめり込む。

彼女の腕を掴み、次元闘技場(じげんとうぎじょう)を使う。


「ここなら迷惑かけないだろ」

「!!」


何かを感じたように、ミクトルンは王顕の手を振りほどき離れた。


「おとなしくなれ、拳神(けんじん)無常正拳(むじょうせいけん)

「―あ、…え」


ゴシャアアアアアアアアァァァ

拳による衝撃は、ミクトルンのすぐ横を(かす)め、大地を消し去り、空間をも断絶させた。

彼女は遊びだ、自分が死ぬ事は想定していない。

なのでこれが、彼女にとって初めての恐怖と後悔だった。


「―あ、…ああ、…あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

「くっ、何だぁ」


初めての感情にパニックになり、質量操作を最大限に発動し暴走。

見る見る巨大化し、特に下半身が1番変わる。

それを直立して、見上げる王顕。

額からは髪を()き分け、1本の角が生え、背中には沢山の突起物が()り出し。

肩には翡翠(ひすい)の仮面が張り付き、両腕は様々な種族の頭部が浮き出て、人間の骨のような形の腕に変わった。

脚は4足で、前の2本は虫の様な節足の脚で、足先は人間の手の平状になって、後ろ2本は爬虫類(はちゅうるい)の様に黒い鱗に(おお)われ、足先は(ひづめ)になっていた。

長く緑の鱗が並ぶ尻尾も生え、尻尾に鳥の羽と先端には蛇の頭がこちらを威嚇する。

大きく変わっていないのは、胴回りと顔くらいでアンバランスな体になってしまっていた。

それでも大きさは、20メートルを超える。


「RPGの裏ボスみたいになったな…」

「―…だ…ぉ、……てぇ、……り…しな…ぇ、……み…よぉ」

「ん?」


良く見ると、何かを(つぶや)いている事に気付く。

ドガガガガガガガガガガガ

襲ってきた。

王顕は前足に()かれて、宙に浮いたところを思いっきり殴られた。

吹き飛びながらも、飛翔のマントで態勢を整え、反撃に出る。


「はああああああぁ」

「―あああああああ」


正宗(まさむね)骸切(むくろきり)で何度も斬りつけるが、腕で防がれ傷が付くがすぐに再生する。

ダメージも負ってはいない。


「本気でバグかよ!」

「―がああああああ」


背中の突起が鞭の様にしなりながら伸びて、王顕を襲う。


触手(しょくしゅ)ゲーに興味はねぇよっ!」


襲い来る無数の触手を、斬り(きざ)むが(さば)ききれずに捕まる。

完全に捕まる前に、刀を2本とも投げつけると、1本が腕の隙間を通り過ぎ、彼女の腹に()さる。

HPが微かに減った。


(…そういう事か、あの体に攻撃を当てないと、ダメージが通らねぇ訳か)


触手が、全身に巻き付く様に、王顕を包み込む。

切り刻まれた触手も再生し、()めつかれる。

ミシミシと、鎧から嫌な音が聞こえた。


(おいおいおいおいおい、”慈恩(じおん)”)


罠やモンスターに捕まった時に効果を発揮(はっき)する武法。

任意でMPを減らして、減らした分のMPを体から放出し、罠やモンスターから(のが)れる、だが相手のレベルに合わせてMPを減らさないと、逃げれられないまま、ただ無駄にMPを減らしただけになる。

王顕が今回使ったMPは3兆だった。

バラバラに飛び散る触手。

無量大数には、小さなヒビが入っていた。


「―…嫌だよぉ」

「お前…」

「―…助けてぇ、独りに、しないでぇ、さみしいよぉ」


目の前の彼女は血の涙を流しながら、本音を呟いていた。

王顕は決意を固めた。

無量大数を外して、欲界の倉庫(たけじざいてん)から取り出したのは聖剣・エクスカリバーだ。


「俺が救って、一生お前の(そば)に居てやるよ」


聖剣・エクスカリバーは【ワールド・インフィニティ】の高難度(こうなんど)イベント【泉の妖精の願い】で得た武器だ。

両刃でちょうど半分で、銀と金に色が分かれている。

効果は、フィールド全体に居る自分と味方以外に攻撃、ヴォーダンαみたくフィールドまでは破壊しない、そして攻撃を受けた相手は即死しない、必ずHPが2000残る。

不殺(ふさつ)の剣で、この武器ではまず相手のHPを0にする事はできない。

なので連続使用する事はできるが、装備している間、ランダムにスキルが10個使えなくなる。


「うおおおおおお」


エクスカリバーを、上段から縦に降り下ろす。

降り下ろした先から、巨大な竜巻が幾つも発生する。竜巻がミクトルンを囲み、呑み込むと、彼女の再生力を上回るスピードで、体がバラバラに千切れていく。


「―あ、ああぁぁ…」


とうとう、本体だけになってしまった。

ここまでHPを削られたのは、初めてだろう。

意識は有るが、動けずに倒れこんでいた。

王顕が近付くと、体を震わせる。

生まれたての小動物のようだ。


「―…う、うぅ、お願い、殺さないでぇ、ヒック、ううう、ミクは、…うえ〜〜ん」

(うわぁ、幼女泣かせてるみたいで罪悪感が…)

「あ~~、安心しろ、殺す積もりは無いから」

「―…ヒ、ヒック、…ほん、とうに?」

「ああ、ほら」


王顕はギガポーションを飲ませた。

ミクトルンは最初に出会った時のように体育座りして、顔を()してしまった。


「はぁ~、さっきも行ったが、俺がお前の側に一生居てやるから、そうだな友達、家族になろう」

「―――」


その言葉に反応して、彼女は顔を上げる。

泣いていたせいか、目元が少し腫れている。


「―殺さない?」

「ああ」

「―(そば)に居てくれる」

「ああ」


彼女の質問にYESで答えと、笑顔になる。

立ち上がり、抱きつかれた。

ズンッ

王顕の足元が沈む。


「お、おおおお」

(普通の人間なら、ペシャンコだぞ)

「―お兄ちゃん!」

「お、お兄ちゃん、なんで」

「―家族だから、ミクのお兄ちゃん!」

「お、おおう」


こうして、邪神と言われた上級神が仲間に加わった。

彼女には、王顕以外と遊びをしない事を約束させた。



王顕はミクトルンを連れて、連続テレポートを(もち)いスクト村に向った。

スクト村には、商人、騎士、艶魅(えんみ)とシャーラが待っていた。

シャーラと艶魅はすぐに王顕に気付くが、ミクトルンには暗殺者(あんさつしゃ)(めん)を渡していたので気付かれていない。


「待っていたぞイヴィル!、ベルメスを倒しに行ったと聞いたぞ、無茶をして…」

「ますたぁ遅いわぁ、何にも襲ってきいひんしぃ、暇しとったわぁ」

「ごめんな2人とも、心配と苦労を掛けた」

「し、心配などしていない!」

「うちは、ご褒美待ちやわぁ」

「すまんが、もうちょっと待ってれるか」

「お願いされたら、待ちますわぁ」


王顕は彼女達から離れると、商人に話しかける。



「苦労かけたな」

「イヴィルさん、スクト村の方達は丁重に(とむら)いました」

「ああ、ありがとう、彼等は…」

「こちらです」


案内された場所には、村人全員分の墓が建てられていた。

墓1つ1つに頭を下げ、墓全体が見えるように前の方に座る。


「少し1人にしてくれないか?」

「…はい」


一緒に付き合ってくれた商人に、席を外してもらう。

離れたいた所に居たミクトルンが、小走りで近付いてくると、彼の膝の上にチョコンっと座る。

王顕は泣いていた。


「―お兄ちゃん?」

「ごめんな、ごめんなぁ」


右手で目を(おお)い、指から涙がこぼれる。


「俺のせいで、お前達を、死なせちまった、あの時に、俺自身が行っていれば…」

「―ん」


膝に乗った彼女が、王顕の頭を撫でてくれる。

日が沈み始めた頃に、泣き止み、待っていてくれた彼等の元へ戻る。

彼は決意する。

2度と目の前で、このような被害を出さない事を…。

ま、仲間になりますわな、

これで猫、蠍、竜、人形、邪神

賑やか賑やか、カオスだ…

次回は…2つ目の大陸、キフォーカ大陸のお話しに移ります

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