この世界の魔王がこんな事するなら、魔王な俺は…
たまに思うんです、人外の女の子って良いなって
ちなみに、主人公の仲間に普通の人間が居ないのは、ここら辺が原因だろうな
いやでも、最初から人外が好きだった訳じゃなくて、友達のせいで…
この前70人の方にブックマークしてもらってたのに、急に90人になってるとビックリしますね
何か緊張してしまいます!!
王顕が朝目を覚まし、違和感に気付く。
「これは…」
スクト村で作ったアンデットの反応が全て消えていた。
アンデットは、作った際に自分のステータスに数が表示されるが、今現在0になっている。
嫌な予感がした。
アンデットは魔王を殺すように指示した奴と、村を護る奴に分けさせていた。
つまり、村に何かがあったと言う事だ。
「イジェ起きろ!」
「ぬあ、ああ、どうした…」
隣のベットで寝ていたイジェメドを起こす。
彼女は目を擦り、顔をこちらに向ける。
やや気だるそうだ。
「俺さ、ちょっと用事出来たから、船を離れるから、後のこと任せていいか?」
「は、何言って…」
「金は置いていく、必要な時に使え、キフォーカ大陸の港町に着いたら宿を取って、待っててくれ」
「…どうした、何を焦っている?」
「時間が惜しいんだ、今回はホントに頼む!!」
「…」
イジェメドは王顕の必死さに、驚き無言になる。
彼女はベットから起き上がり、座る。
頭を下げている彼の肩に手を置く。
「何があったのは分からんが、吾が友として力を貸すぞ」
「今回は俺のミスが原因なんだ、お前達に迷惑はかけれない」
「……そこまで決意が固いなら、吾は従うよ、だが必ず吾等の元へ戻れよ」
「あたりまえだろ」
いつにも無く真剣な眼差しに、根負けした彼女は、王顕の言うとおりにする事を約束した。
そして彼女からの約束も彼は笑顔で答えた。
隣の部屋には入らなかった。
眷属2人に話したら必ず付いて行くと言いかねないからだ。
船長に話しをつけ、後の護衛は3人に任せると告げた。
甲板に出て、装備を変える。
破魔の衣に軍神の金輪を防具として装備する。
見送りに来たイジェメドに、行く前に抱きしめるよう言われ、今回は断らずしっかりと抱きしめた。
「後のことは頼んだ、2人には謝っておいてくれ」
「これは貸しだからな、後で倍にして返してもらうぞ」
彼女から離れると、テレポートして船から姿を消した。
連続テレポートを使い数分後、スクト村までたどり着いた。
村に生き物の気配が無い。
注意を払いながら、中に入っていく。
外には村人達が血を流し、何人も倒れている。
「…」
建物の中に入る。
壁に3人家族が、鉄の棒で貼り付けにされていた。
「…」
村の中央に行く。
槍が幾つも立てられ、先端に大人達の頭が刺さっていた。
「…」
村の奥に在った、土壁の倉庫に向う。
扉を開くと、花冠を作ってくれた子供達がバラバラにされ、別々の体に縫い合わせられていた。
「…」
生命薬を使ったが、生き返ることは無かった。
この世界では確かに生命薬で生物が生き返る。
だがその効果は、死んでから1時間以内に使わないと生き返ら無い事をシャハラで教えてもらっていた。
王都・シャハラにテレポートした。
向ったのは、世話になった商人の家だ。
「誰ですか、こんな朝に…」
「…」
「イ、イヴィルさん!!、旅から帰ってこられたんですか」
「ちょっと寄っただけだ、ちょっと話しいいか?」
「は、はい、どうぞお入りください」
急に立ち去った王顕に対し、今までどおりに持て成してくれた。
家に入ると、見た事のある犬耳美女が居た。
王顕の顔を見るなり、近寄ってくる。
「あんたは店にいた…」
「はい、ご無沙汰しておりますイヴィル様」
奴隷市場にある、店の店員さんだった人だ。
礼儀正しく頭を下げ、客室に案内してくれ、お茶を用意してくれた。
今は正式に、この家で犬耳使用人として働いているとの事だ。
「急に出て行かれて驚きまし…、どうかなされたのですか?」
「…」
商人は笑顔で話し掛けてくれていたが、王顕の様子に気付き話しを途中で切り上げ、質問してくる。
今自分はどんな顔をしているのだろうか、あまり見れたものでは無いのは分かる。
互いに少し無言になり、数分。
王顕は静かに、今1番知りたい事を商人に尋ねる。
「魔王・ベルメスについて知りたい」
「ベルメスですか…」
「ああ」
商人は口を出されたお茶を口に含み、使用人を下げさせて、話してくれる。
「ベルメスは、アックウーノ大陸に存在する魔王の1人で、錬金術を使うと言われています」
「錬金術…」
(【ワールド・インフィニティ】に存在しないものだ、ゲームでは魔王は悪魔の中で、特別強い力を持って生まれた存在だったはずだったな)
「さらにベルメスには2人の魔将が付き従っているとか…」
「そっかぁ、居場所って分かるか?」
「確か北東の枯れ木の森に城を造り、そこを拠点に勢力を広げてるらしいです…」
「……ありがとう参考になったよ」
王顕は立ち上がり、出されたお茶に手も付けず、出口に向う。
慌てて追いかけてくる商人、犬耳使用人も後ろにピッタリ付いて来る。
玄関手前で立ち止まり、振り向く。
「すまないが、もう1つお願いがあるんだが、スクト村って場所がその魔王のせいで村人が殺されてるんだ、弔いに行ってくれないか?」
「え、スクト村が…、分かりましたイヴィルさんの頼みなら、そのお願い受けますよ」
「ありがとう、無茶言って悪い…」
ズッズズズズズアアアアアアアアアアアアアア
欲界の倉庫を開く、彼等だけで行かせて、もし悪魔が戻って来て襲われたら、本末転倒だ。
彼が、最も出したくなかったアイテムを取り出す。
ガシャン
「ヒイィッッ」
「ツッ!」
人型の物が、何も無い場所から落ちた事により、ビビル2人。
黒くサラサラとした、腰まである髪を持つ女の子のように見える。
薄く透け、下の方が短い白装束を着せてあり、腰に巻いた帯には小太刀が刺してある、露出した肌にはシミに皺が1つも無い。
だが生気は無く、作り物の印象を受ける。
カチャカチャ、ガシャ
硬い音を出しながら、ゆっくりと立ち上がる。
身長は180程、スレンダーな体つき、透けた白装束には中に着ている晒が見える。
顔には花魁の様に、目元と口を強調する化粧している。
そして独特な関節。
「ますたぁ、やっとぉうちを使ってくれるんやなぁ、嬉しいわぁ」
(自分で考え動けるんだな…、俺のことも主として認識している)
ニッコリと微笑む姿はそれなりに可愛い。
アイテムの名は、”霊魂球体関節人形”。
【ワールド・インフィニティ】期間限定クエスト【人形劇】の、参加者の成績トップ30人にだけ与えられたアイテムだ。
自分のレベルを任意で譲り、自分好みの設定と見た目にでき、主の陣地を自動防衛するアイテムだったが、彼は設定をミスった。
名は艶魅、しゃべり方はおっとりな感じだが、王顕を溺愛し、彼以外をゴミだとしか考えられず、他を処理しようとする。
その設定が、この世界でどの様に作用するか分から無かった為に、今まで出さなかった。
艶魅のステータスを確認する。
【艶魅】(アイテム)
種族 霊魂球体関節人形
役職 王顕補佐
レベル 規格外
HP 規格外
MP 規格外
攻撃力 規格外
防御力 規格外
特攻力 規格外
特防力 規格外
これまた、予想の斜め上なステータスになっていた。
「どうしたんかぁ、早ようぅ、うちを使ってえなぁ、…その前にぃゴミ掃除でもやろかぁ」
「「!!」」
商人達の方を見て、ニッコリと口は笑うが、目は笑ってない。
王顕が間に入る。
彼女は笑顔から、キョトンとした顔に変わる。
「艶魅、その人達を護ってくれないか?」
「…ますたぁは、うちに塵屑を護らせるんかぁ、いけずやわぁ」
「…」
(こいつは駄目か…)
彼女は露骨に嫌な顔をし、口元に手の甲を持ってくる。
王顕は、彼女を出した事を後悔し始めた。
その時、クスクスと急に笑った。
「ふふふ、そんな顔せんとぉ、うちはますたぁの物やからなぁ、ますたぁの命令は絶対やわぁ、安心してええよぉ」
「……頼むぞ」
「ふふふふふ、任せてやぁ、それとなぁますたぁ、こっちも1つええやろかぁ?」
「何だ?」
「これが終わったんならぁ、愛でて褒めてくれんかなぁ」
「分かった、約束しよう」
「ふふ、楽しみに待っとりますぅ」
彼女に対し、一抹の不安があるものの、今回はあまり人を巻き込む訳にもいかず、艶魅を信じるしか無い。
王顕は艶魅に近付き、瓶を5つ手渡す。
差し出された瓶を、球体関節の指で受け取る。
「これは、生命薬やなぁ、何でうちにぃ?」
「もしもの時の保険だ」
「ますたぁは心配性やなぁ、一応は貰っておきますわぁ、使う機会はあらへんやろうけどぉ」
白装束の袖に瓶を入る。
後ろに控えていた商人に向き直る。
「すまない、こいつの性格は少し、いやかなり捻じ曲がってるから、でも俺の言う事はちゃんと聞くから安心してくれ」
「は、はぁ」
「イヴィル様、スクト村の者が全員死んでいるのなら、私たちだけでは…」
「そうだな、シャーラにも手を貸してくれるように頼むよ」
「ありがとうございます」
テレポートして、シャーラの城に入り、王様が居るはずの広い部屋に向う。
暗殺者の面のお陰で、誰にも見つかる事無く、目的の部屋の前まで到着した。
扉の前には、門番が2人。
「ふん!」
「がっ」
「ど、どうした!」
「はっ!」
「ゲボォ」
速攻で気絶させると、扉を開け中に入る。
中には王と王妃、騎士の1人が2人の前で跪いていた、何かを報告しているようだ。
扉が勝手に開いた事に気付く王。
王顕は仮面を外す。
ガタッ
王は玉座から驚き立ち上がる
「イ、イヴィル殿…、ですか?」
「まずは急な訪問をわびよう、そして王にお願いがあってきた」
「あ、ああ構わんよ、そうだシャーラを呼んで…」
「呼ばなくていいですよ」
王様の前で跪いていた人は、王にスクト村の報告に来たらしい。
冒険者の1人がたまたまスクト村に寄ったら、村人が全滅していて、使い魔を使いこの王都に伝えて今まさに報告していたとの事だ。
騎士を下がらせた後、王顕は王に、商人と一緒に騎士団をスクト村に向わせてくれる様に頼んだ。
王は少し考えていたが、首を縦に振ってくれた。
バンッ
後ろの扉が開かれシャーラが駆け込んできた。
「王顕!!」
「シャーラ、すまんが今お前の相手をしている暇は無くてな」
「待って…」
「また会えるさ」
シャーラに捕まる前に、テレポートして商人の家へと戻る。
商人に騎士団が動いてくれる事を告げて、艶魅に後のことを任せる。
「艶魅、しっかり護ってやってくれ、全員無事に事を済ませられれば、お前の望み通り褒めてやるから」
「任せときぃなぁ、うちは約束を守る女やわぁ、そや、前払いに髪を少しといてくれんかなぁ」
「ああ、良いぞ」
「ん…、ああぁ…、気持ち良わぁ」
王顕は隠蔽を使っている為、艶魅より背が低くなっているので、椅子に座ってもらう。
手櫛で髪をといてやる。
触り心地は柔らかい印象を受け、手入れが行き届いている感じだ。
気持ち良さげに顔を和ませる。
数回とぐと満足したのか、椅子から立ち上がる。
「おおきになぁ、後は帰ってからのお楽しみやわぁ」
「ああ、俺もなるべく早くスクト村に向う」
商人に仕事料として金貨を50枚渡し家の外にでて、装備を変える。
相手が魔法でなく錬金術を使うなら、破魔の衣をしていても意味が無い、代わりに取り出したのは、飛翔のマントと黒騎士の鎧だ。
商人が見送りに来る。
「イヴィルさん、私は金欲しさにこの依頼を受けた訳ではありません、このお金は受け取れません」
「オーナー、あんたも頑固だな…、正当な報酬だろ」
「ですが…」
「スクト村から帰ってきたら、騎士団と店の奴らに美味いもんでも食わせてやってくれれば良いさ」
「分かりました、ありがたく頂戴します、イヴィルさんどうかご無事で…」
王顕は無言で頷くと、宙に軽く浮き、そのまま高速で北東の空に飛びだった。
彼が去った後、すぐに騎士団とシャーラが商人の家に訪ねてきた。
シャーラは取り逃がした事を悔しく思っていたが、商人と騎士の話しを聞き、スクト村に王顕が来る事を知り、護衛付きで一緒に向かう事にした。
魔王って人に害を与える存在として、村を1つ消しました
そして主人公はチートな力を持ちながら、自分の詰めの甘さで、1度救った命を救えなかった
今回はそんなお話でした
それでは次回、魔王ベルメスの陣地に殴りこみます




