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港町って、リゾート地で休みます

最近疲れが溜まりやすいです、夏バテ…

温泉にでも行くか…

だが黙々と妄想だけは、広がるばかりですな


妖精の住む森に入り2日が経った。

妖精やモンスターに会ったのは、最初に出くわしただけだ。


(イジェメドのスキルは効き目抜群だが、ここまで何にも出会えないと、暇すぎるだろ…)

「ふあ~~」

「油断しすぎですよ」

「い、良いじゃないかな別に、何にも襲ってこないんだし…」

「もし強敵が現れ、主様にもしもの事があったら、どうする積もりですか」

「…ご主人様に傷を付けれる存在なんて、この世界に皆無ですから」

「「…」」

「グフッカハハ、王顕見ろ、あいつら無言で、火花を散らしとるわ」

「揺らすな揺らすな…」


言い合いが睨みあいに変わり、その様子を見て、笑いながら王顕を揺さぶる奴もいる。

その後は数分歩いたところで、何事もなく森を抜けた。

目の前には、青く広がる海と空。

そして、王都シャハラ並みの広さを誇る港町、【ウノルル】が見える。

門に続く道には、大量の荷物を載せた馬車や、巨大な虫の背中に荷物を載せた蟲車(むしぐるま)が並んでいた。

どうやらこの大陸にあって、他の大陸に無い物をこの港町に集め、船により輸出するのだろう。

王顕たちもその列に並び、門の前まで進む。


「ようこそウノルルへ、これから先は1人につき青貨5枚になります」


どうやら町に入るためには金が必要らしい、ポケットの手を突っ込み金貨を1枚だし、門番に渡す。


「4人分な、釣りは要らないから」

「え、あ、はぁ、ありがとうございます」


呆気にとられながらも、門番は金を受け取り、4人は門を(くぐ)り町の中に入る。

町の建物は、大理石のように綺麗な石を使った建築物で、屋根は青く塗ってある。

奥には港が在り、船も見える。


(エーゲ海に在りそうな風景だな、日本に居た時はパスポートすら持ってなかったのにな…)

「綺麗な町だな…、海も透き通った感じ出し、リゾート来たって感じだな!」

「ご主人様!、お魚です!!」

「魚か、海の近く出し魚介類は新鮮なんだろうな」

「ご主人様ぁ~~、お魚…」


叉夜が尻尾を振りながら、上目遣いでおねだりする。

ルカは頭を手で押さえ、首を振って呆れている。

イジェメドは浮かびながら、俺の頭に乗っかって来て笑っている。


「叉夜、貴女は我慢を覚えるべきです、主様の金銭は貴女の物では無いはずですよ」

「だ、だって~お魚…、ご主様…」

「…叉夜」

「う…」


ルカに強く名前を呼ばれ、さすがにこれ以上ねだって来なかったが、叉夜の頭をクシャクシャと撫でて言う。


「あっ…」

「宿を決めた後、ちゃんと腹いっぱい食わせてやるから、今は我慢しな」

「大好きです、ご主人様!!」

「主様は叉夜に甘いです」

「吾は魚より肉を食いたいぞ」

「港町まで来て、魚介類食わなくてどうすんだよ、スープとか絶対美味いぞ」

「物足りんと思うがな…」

「主様、宿はビーチの近くにあるようです」

「お、そうか、んじゃあ行くか」


ビーチの方へと向う。

建ち並ぶ店は料理屋、魚屋、宝石店、他の大陸から輸入した商品の店が多い。

宿に着くとそこは、白い砂浜ビーチに、透き通る青色の海が一望できる宿だった。

貴族や金持ちが、よく使う場所だとか…。


「4人部屋ですね、1泊銀貨10枚の青貨80枚になります」


カウンターの兄ちゃんが金額を伝えると、ルカが耳打ちする。


「主様、周りの宿にはもう少し安い宿がありますが…」

「ここで良いよ、旅の中テント生活が続いたからな、お前達にも、過ごしやすい環境で疲れを癒して欲しいし、こういう時しか金は使わないしな」

「…私は、そのお心遣いで十分です」

「ルカはもっと自分の欲に素直になって欲しいな」

「お側で仕えているだけで、私は…」

「はは」


本気でそう思い口にしたのだが、それを聞いて、珍しく照れた顔をしたルカを見た気がした。

他の2人は…。


「吾は沸いた風呂に入りたいな」

「お魚、お魚!」


清々(すがすが)しいほど、欲に忠実だった。


「これで5日間泊めてくれ」

「金貨1枚ですね、では銀貨64枚お返しします」

「どうも」


カウンターで手続きを終え、先に飯を食ってから、他の事をやることにした。

叉夜は、黒猫として差別を受ける可能性があるので、帽子で耳を隠させる。

宿を出て、町の中央に向かう、適当に飲食店に入る。

メニューは見たところで、全く字が読め無かったので、どんな料理か解説してもらった。

そして選んだ料理。

巨大海老の丸焼き、魚介のスープ、数種の刺身盛り合わせ、煮魚などなど。


「この海老は良いな、肉より劣るが食感が良い」

「やっぱり魚は、生が美味しいです」

「このスープは、とても深い味です、ぜひレシピを教えて欲しいですね」


皆ウノルルの食事に満足してくれた。

この後は各自別行動をとる為、4人とも別れ、このとき3人には、好きに使うよう王顕が、それぞれ金貨10枚ずつ預けた。

別行動を告げると、叉夜は町の中央へ、ルカは市場に、イジェメドはビーチへと自分の気になる場所に向った。

ちなみに王顕は港に向う。


「でっけぇ船が並んでるな…」


港には大小数10隻の船が並び、その内の5隻が大型船だった。

木造の船ながら見た目は豪華客船だ。


「木で出来てるのに強度は鉄を超え、魔法で決して沈まない…か」


近くに船員の集まっているバーを見つけ、そこで話を聞いていた。

酒は度数は低いが、深みと甘味のある物を飲む。

1日1隻のペースで大型船は出向し、向こうの大陸から1隻やって来る、それの繰り返し。

船に乗るには、人数分と載せる荷物分の金を払わなければならない。


「ん、あれは…」

「おう、あんちゃんも参加するかい」


店の隅では樽の上で腕相撲をしている男達が、周りの奴らはどちらが勝つか賭けをしている。

勝てば負けた相手から、酒を奢ってもらえるらしい。

当然参加、海の男達はノリが良く、挑戦者を拒まなかった。

相手はレベル18、種族人で役職は船員。


「そんな細っちい体だ、手加減はしてやるぜ」

「心配しなくて大丈夫だ、これでもいろんな修羅場を超えて来たからな」

「はははは、分かったいいぜ、本気でやろうか」


本気と言ってるが、未だに相手はヘラヘラ笑って油断しきっている。

身長差、体格差が違いすぎて、相手にならないと思っている顔だ。


「それでは…GO!!」


審判が手を握り、開始の合図をした。

ダン


「「…」」


周りは無言になり、相手は笑顔のまま負けていた。

王顕は手を放し、酒を飲む。


「「おおおおおおおお!!!」」

「あんちゃんスゲーな!」

「おい、何やってんだお前、酒飲み過ぎてたか!?ははははは」

「いや、あいつ無茶苦茶強いぞ」

「おい、にーちゃん、次は俺が相手だ」

「ん、勝ったら酒な」

「いくらでも奢ってやるぜ」


その後、何人もの相手をし、全て瞬殺。

彼らは不審がることも無く、王顕の実力を認め、一緒に酒盛りが始まった。

彼らのボスである、船長とも仲良くなった。


「ぬはははは、あんたの腕っ節なら、是非うちで働いてほしいくらいだ」

「誘いは嬉しいが、仲間達と旅をする身でね、すまんが断らせてもらう」

「そうか、残念だなあ〜」


互いに小さい樽で乾杯し、一気に飲む。

この体は酒に強く、ほどよく酔える感じだ。


「この場所に来てるんなら、キフォーカ大陸に行くんだろ、良かったら俺の船に乗って行かないか?」

「ん?別に良いけど」

「そこで、相談なんだが、金は要らんから、護衛として雇われちゃくれねーか?」

「護衛?何から?」

「海賊だよ…」

(…山賊の次は、海賊か)


話によると、ある海域に海賊がアジトにしている小さな島が在るらしく、その近くを通る際に襲ってくるとのことだ。

丁度、宿に宿泊する日数と、彼の船が出航する日が一緒だった事もあり、その話に乗ることにした。


「じゃ、頼んだぜ!!」

「俺こそ当日はよろしくな」


店を3つほど回り、彼らと別れる。

王顕が宿に戻ると、先にルカが戻っていた。


「お帰りなさいませ、主様」

「ただいま」


彼女は、渡しておいたお金を自分の為に一切使わず、旅に必要な物を買い込んでいた。


「はぁ~~、あの金は、自由に使っていいと言っただろうに…」

「ですから、自由に使わせていただきました」

「自分の為に使えって事だよ」

「主様の為になる事が私の為です」


彼女は王顕に会うまで屋敷で、主の身の回りの世話と客人のもてなしばかりで、それは主が居なくなっても変わらなかった。

なので、自分の為に何かをする事が、極端に苦手だった。


「ルカちょっとこっちに来い」

「はい」


王顕が手招きし、素直に従って近付いてきたところを、そっと抱きしめた。


「あ、ありゅ、主…様…」


抱きしめられ、彼女は動揺し体を強張らせ、アワアワしている。

鋏は閉じたり開いたりして、尻尾は力なく垂れ下がる。

頭を撫でながら、王顕が話す。


「お前は人に甘える事を覚えないとな」

「あ、主様、わ、私は…」


俺の胸に顔を(うず)め、一言。


「…今日は私だけを…、愛してもらえないでしょうか?」

「…………あ、ああ、良いとも」

「…嬉しいです」


王顕は主導権を奪われ、精根尽きるまで愛し合った事を思い出し、言葉に詰まったが、ルカの数少ない自分の願いを(ないがし)ろに出来ないと、自分に言い聞かせ了承する。

他の2人が帰って来ない内に、終わらせようと、一緒にシャワーを浴び、寝室に向った。


(いや、嬉しいですよ、こんな綺麗で可愛い娘と…、今回は手加減してくれるかな…)


数時間後。


「ご主人様!、ただいま!!」

「あ…、ああ…、お帰り叉夜…」


叉夜が宿に帰ってきて、リビングに入ってくる。

王顕の顔を見るなり、ビックリして小走りで駆け寄ってきた


「どうしたんですか!、何か凄くやつれてますけど」

「な…、何でもないよ…、今日は楽しめたか…?」

「え、あ、はい、新しいお洋服に水着も買っちゃって」

「そうか…、それは良かった…」

「本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ…、そうだ…、外を回って疲れただろう…、お風呂に入ってきなさい…、ここの風呂は温泉を使って…、しかも広いぞ…」

「あ、それじゃあご主人様一緒に入ろうよ」

「俺はさっき入ったばっかりだから…」

(まだ、ルカは入ってるが…)

「そっか…」


叉夜は不安そうに王顕の顔色を(うかが)いながらも、浴場へと歩いて行く。

彼女が立ち去り、見えなくなると、ソファに倒れこむ。

クッションに頭を押し付け、目を閉じる。


(戦いより疲れてないか…、MPやHPが減らなくても、やっぱ疲労感は感じるか…、ならHPが減らなくても死ぬ事もあるのだろうか)


そんな事を考えていると、イジェメドも帰ってきた。

顔だけ動かすと、彼女の手には網を持ち、その中には大量の海老が入っていた。

ビーチに向っておきながら、泳いで遊ぶのではなく、潜って食料確保していたらしい。


「その海老気に入ってんのな」

「肉の代用品だな、王顕も食うか?」バリバリ

(生の殻ごとだと…)

「も、貰おうか」

「ん」


投げられた海老は生きていて、ビチビチ跳ねている。

見た目は伊勢海老だが、色は青く、食欲を無くす色だ。

殻を剥ぎ、中の身を出すと、透き通った白い身が出てきた。


「あ、うめぇ」

「うん、それなら良かった、ルカに早速調理してもらうか」

「ルカなら風呂だぞ、ついでに叉夜も…」

「そうか、なら吾も入るとしようか、海水でベトベトだ、そうだ友よ」

「どうした?」

「ルカとまぐわうなら、今度は吾の相手もしろよ、吾に見合う者が今まで居なかったからな、王顕になら初めてを捧げても良いぞ」

「………」

(観られてたーーーーー、恥ずいんだけど)


彼女はスキップしながら、浴場に向っていった。

王顕は海老を1匹食い終わると、フラフラとテラスに出た。

海はどこまでも広く、月の光が反射して、夜にもかかわらず明るい。

綺麗な光景を見ながら、椅子に座っていると、眠気が一気に襲ってきた。


「…」zzz


そのまま外で眠ってしまう。

昼間、船員達と飲んだ大量の酒と、ルカの相手で眠気はMAXだ。



少し時間は(さかの)り浴場。


「♪~~♪♪~♪~♪~♪♪~~」


浴室は広く、銭湯くらいはある。

その中で、ご機嫌に鼻歌交じりで、湯船に肩まで浸かるルカ。


(主様、ああ、私の主様)


下腹部を下2本の手で撫でながら、上2本の手で頬に手を当て、(とろ)けた顔をする。

ガチャ


「ツッ!!」


急に後ろの扉が開いたので、肩をビクつかせる。

入ってきたのは、汗を流しにやって来た叉夜だ。


「あれ?ルカ入ってたの」

「…叉夜ですか」

「あっ!お風呂、広ーーい」


叉夜は根本的に水は嫌いだが、広い風呂場に、温泉という事でテンションが上がっている。

頭を洗い始める。

耳の中に泡と水が入らないように、耳を閉じ洗う。


「はぁ子供ですか…」

「ん、何か言った?」

「何も言ってませんよ」

「そっか~」

「…♪~~♪♪~♪~」

「鼻歌なんか歌ったちゃって、珍しく機嫌良いね」

「…別に温泉が気持良くて、無意識で歌っていただけです」

「そっか~」

「…」


素っ気無い返しをされるが、深く追求されるより良いので、黙っておく。

程なくして、体を洗い終えて、浴槽に入ってきた。

横目でルカが見つめる。


「どうかした?ボクの体に何か付いてた?」

「いえ、何でも」

「?」

(彼女の体はバランスが良く、人猫(じんびょう)で私と違って、見た目は人とそう変わらない…、主様は私の体も綺麗と言ってくれているので、気にはしないのですが………)


自分の胸を見る。ペッタン

叉夜のを見る。ボインッ


(私の方が年上なのに、何故…)

「はっは~ん」

「な、何ですか」

「ふふん」


叉夜はルカの視線に気付き、髪を掻き揚げ胸を強調するセクシーな姿勢をとる。

自慢げな顔をしている。

だが…。

ガチャ

真打登場である。


「邪魔するぞ、おお、なかなか良い風呂ではないか」ブルルン

「「…」」


ロリ巨乳襲来。

デカイのに形も完璧。

セクシーポーズしていた叉夜は静かに湯船に肩まで浸かる。

ルカは眉間に皺を寄せ、現時点の最大の敵と判断した。


「ガハハ、こうやって女だけで集まるなんて初めてだな」

「そういえば、いつもはご主様も一緒だったよね」

「実際は、眠る際にいつも一緒だったでしょう」

「だが、こうやって話す事は無かっただろ、親睦(しんぼく)を深める為に話しをしよう」

「でも、何の話しをするの?」

「うむ、お前らは王顕をどう思っている?」


王顕が居ないからこそ出来る話。

2人はその質問に対し、考え込む。

先に答えたのは叉夜だ。


「奴隷だったボクを自由にしてくれた、優しくて強いご主人様で、神様かな」

「ふむ、ルカは?」

「私の新しい主様で、一生を捧げるに値する慈悲深く、偉大な方です…」

「ふむふむ、では最後は吾だな、王顕は吾の友だな、そして未知で不気味で不思議な存在だな」

「「…」」


イジェメドの言葉で黙り込む。

それは思っていながらも、考えないようにしていた事だった。

温かい湯に浸かっているからじゃない、嫌な汗が流れる。


「あれだけの力を持っておきながら、今までの歴史に残らず、無知で文字すら読めない、悪魔のような姿をしている、これだけそろえば怪しすぎるだろ」

「だから何、ご主様はご主様です」

「これ以上、主様を侮辱(ぶじょく)する事は許しません」

「お前ら2人がかりでも、吾には遠く及ばんぞ」

「「…」」


険悪な空気が流れる。

レベルの差と経験の差どちらも敵わない相手だが、自分達の主を悪く言われ、ここで引くような女達ではない。


「ガハハ、すまんすまん、怒らせる積もりは無かったのだ、吾もこの数日の旅で、王顕が悪い奴ではないのは感じているからな」

「…ご主人様の前では、ひどい事を言わないでください」

「ああ、そうだな、よし、話題を変えようか」

「今度は何ですか…」

「お前ら吾が友とは、何回まぐわったのだ?」

「ふにゃ!にゃにゃにゃ」

「ゴホ、ゴホホ、ケホケホ」

「おうおう、若い反応だな、ガァハハハハハハハハハ」


空気が一変、薄暗い空気が、イジェメドの一言でピンクな空気に変わった。

まさか、そんな事を聞いて来るとは思っていなかった2人は、動揺する。

その反応だけで満足したのか、イジェメドはご満悦だ。

そして質問に1番動揺しているのはルカだった。

さっきまでとは違う、嫌な汗を噴出している。


「…………どうして急にそんな話になるのですか?」

「そ、そうだよ、にゃ、にゃんでそんな話題が出てくるの」

「ん、だってルカ、お前さっきまでやってただろ」

「え…」

「…何のことでしょう…」


叉夜はイジェメドからルカへと視線を移す。

ルカはいつもの冷静な表情で白を切るが、鋏は背中の方でピクピク震えている。


「どういう事かな」

「この女な、お前が帰って来るちょっと前までな、リビングで吾が友と愛し合っててな」

「な、なぜその事を!」

「観てたからな」

「…」

「はっ、ボクが帰ってきたとき、ご主人様がグッタリしてたのは…」

「そう言う事だな、ガハハ」


この後、女同士での話し合いをし、抜け駆けはしない事になった。

エーゲ海いいですね、行きたいです

今回はリゾート地での、ひと時でした

次回は数日たって、船に乗り、海に出ます

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