魔物の正体か…
見直してみたら、いろいろ設定とかちゃんと考えなきゃと後悔
読んでいて、ここおかしいと思うところあれば教えてください
素人なので、温かい目で読み続けて欲しいです
それでは記念すべき、10回目の投稿お楽しみください。
【王都シャハラ】の城。
王顕が王都を出て2日後、苛立ちを抑えられず、自室でヌイグルミに拳を振り下ろすのは、シャハラの建国者にして、勇者の元仲間だったシャーラ。
「何で出て行ってんの!?、会ってくれるって言ってたのに!?」
「何度同じこと言ってんの?、諦めなさいシャーラ、良い機会よあいつの事は忘れなさい」
「そんな事できる訳ないだろ!?」
椅子にもたれ掛け、ペンを走らせ手紙を書きながらシャーラに語りかけるのは、勇者の元仲間にして、最強の魔法使いベアトリクス。
手紙は他の仲間達に向けての物で、内容は王顕と言う危険な存在が現れた事を、警戒して欲しいと言うものだ。
「あ~もう、こんな事なら国なんて造るんじゃなかった、王顕を探しに行けないよ」
「じゃ、お願いね」
シャーラが自分がやった事を後悔している内に、ベアトリクスは手紙を書き終え、ベビードラゴンに持たせ各国にいる仲間達の元に運ばせる。
「ベア、あんたシャーラの変わりにこの国を支えない?」
「無理よ、そんな才能は私に無いから、それに私他人と関わりたくないの」
「は~、影武者でも用意して置けばよかった」
「あなたはこの国の平和を維持しなさい、私も今日ここを発つから」
「…どこ行くの?」
「故郷に帰るの、奴を倒すには力不足を実感したから…」
部屋の中に魔法陣を書き、その中央に立つ、箒をかざすと光りだす。
ベアトリクスの体が透け始める。
「……また来なさいよ」
「ええ、またね」
完全に消えて部屋に1人になる。
「待ってるから…」
グリゴラと部下の傭兵達が泊まっている宿、その玄関前でモヒカン達が集まっていた。
王顕に絡んだ奴らだ。
「何度も言わせるな、おぬしらの依頼は受けん」
「何でだ、俺らは一方的に攻撃され大怪我を負った奴も居る、そんな奴の敵を討ちたいと思って依頼してんだよ」
「イヴィル殿がそんな事をするはずが無い!!、これ以上イヴィル殿を侮辱するようなら!!、わしらが黙っておかんぞ!!」
「「…」」
後ろに控えている傭兵達も、睨みを利かせている。
たじろぐモヒカン達、数では勝っているもの相手はレベルも場数もまったく違う、赤子と大人の差があるだろう。
モヒカン達は悪態を付きながら、去っていく。
「まったく!、しつこい奴らだったな」
娘どころか、旅に出る前に、グリゴラの傷を癒すポーションまで置いていった人間が、何の理由も無く人を傷つける訳が無いと、彼らは信じている。
たとえ王顕が魔王だったとしても、彼の側に付くくらいの覚悟があった。
「そうだ!部屋に残してきたシータが、恐がってるかもしれんな」
「隊長はあれから娘さんにべったりですね」
「嬉しいのも分かるが、我等が隊長として、外ではしっかりしてもらわないと」
「う、うむ、だがな…」
「パパ!」
「シータ、パパに会いに来てくれたか!!」
娘にデレデレの隊長を見て、苦笑いする部下達だった。
凶暴な魔物が巣くうと言う森。
この森のどこかに、忘れられた館がある。
そこの主人は戦争に出向き、帰って来る事は無かった…、残されたのは屋敷で勤めていたメイド達だけで、メイド達は主人の帰りを待った、何日も何ヶ月も何年も待ち続けた、最後の1人になるまで…。
「…ん…、俺は確か…」
目を覚まし体の調子を確認、麻痺も消えていた。
「ここは…」
王顕は椅子の上で寝かされていた。
部屋は広く、目の前には長いテーブルに複数の椅子が並んでいた。
どれも古くなって傷だらけだが、ホコリなどは無い、誰かが手入れをしている。
「お客様、お目覚めですか」
「うおわぁ!、ビックリした!」
後ろから声を掛けられ、振り向くと声の主が立っていた。
緑色の髪は前髪パッツンで、横は肩の少し下まで伸ばし、後髪は肩より少し上で切られている。
顔は目の上に昆虫の様に単眼があり、口にも横に鋏状の顎?触覚?がある。
体は節足動物らしく目立つ節があり、脇腹から普通の腕とは別に長さの違う腕が伸び、肩甲骨からは太い鋏が付いている。
極めつけは蠍の尾が生えている。
服は胸元からへそまで開けた、フリフリでボロボロのメイド服。
彼女は頭を下げる。
「いらっしゃいませお客様、手荒な歓迎お許しください、なにぶん久方ぶりの来客者で、嬉しかったもので…」
「そ、そうか、君は?てかここどこ?」
「申し送れました私は、ルカ・エミーリアと申します、そしてここは魔術師ゼノ様のお屋敷になります」
「へ~、そのゼノ様って今どこに居るの?」
「目の前に居らしゃいますが?」
「…」
もちろん振り向いても、目の前には誰1人居ない、だがルカは本気でそこに居ると思っている。
何かめんどくさい事になっている様だ。
彼女は料理を持ってくると言い、部屋を後にした。
王顕は索敵を使う、回りにはルカ以外の反応は無い、地図で確認してみるとテントを張っている場所から30キロは離れている。
どうするか悩んでいるが、悩んでいるうちにルカが戻ってきた。
「お待たせいたしました」
「おっ美味そうだな」
「どうぞ、召し上がりください」
料理は2人分俺の前と、誰も居ない席に並べている、ゼノの分らしい。
香辛料の効いた肉に、甘く瑞々しい野菜、香り高い果実酒。
どれも美味しかった。
「この食材ってどうしてるの?」
「肉は森で調達しており、香辛料と野菜は屋敷の庭で育て、果実酒も庭の果実を用い地下で造っております」
「ホント美味しいよ、凄いなルカさん」
「ありがとうございます」
料理を自分の分を食べてしまうと、ルカは誰も手を付けていない料理と一緒に片付けてしまう。
窓の外は暗い。
ルカは客室を準備しているとの事で、案内してくれる。
部屋の中央に大きなベットがあり、鏡台とクローゼットだけのある部屋、ここも古いが掃除が行き届いている。
浴場の準備もしてくれたので入る。
「叉夜は大丈夫だよな?心配してっかな、それにあのルカさん…」
王顕は他者の把握で、ルカのステータスを確認していた。
【ルカ・エミーリア】
種族 蟲人
役職 メイド
レベル 63
HP 1830/1830
MP 2070/2070
攻撃力 180
防御力 150
特攻力 150
特防力 130
「メイドなのは確かだろうけど、ステータスがまあまあ高い、リリーや騎士団長より高いし…、彼女に何があったのやら」
王顕がお湯を掬い顔を洗う。
「失礼しますお客様、体を洗わせて頂きます」
「ぬうっはっ」
何か入ってきた。
彼女の事を考えていたので余計ビックリした。
ルカは服を脱いでいて、その特徴的な身体が良く分かる。
人間と蠍がいい感じに混ざった体、スレンダーであるが出るところは出ている。
「え、何、俺の体洗うの?」
「はい、メイドとして当然の仕事ですから」
「そうなの?」
「はい」
今までにも叉夜に、背中を流してもらったりしていたので、背中だけと言う条件で洗ってもらう。
無言の時間が続くのが、もどかしくて話しをふる。
「ゼノさんってどんな人なんだ?」
「ゼノ様は魔術を極める為に、人里を離れてこの屋敷にて実験を繰り返される方です」
「へ~、努力家なんだな、じゃあ他の使用人は?」
「私を残し、皆居なくなってしまいました」
「…そっか、悪い事聞いたな」
「いえ、お客様に非はありません」
ルカは洗い終わると、何事もなかったように出て行った。
王顕は湯船に浸かり、体を温めてから用意してくれた部屋に向う。
数日ぶりのベットに入ると、その心地よさにすぐに寝入ってしまった。
…まだ暗い時間に目が覚める。
「ルカさんは…」
使用人室に居るようなので、王顕は屋敷の中を回る。
1階は食事を取った広い部屋に、浴場、応接室などがあり、2階にこの屋敷の主の書斎、客室、使用人の部屋が並ぶ、地下は保管庫になっていた。
王顕は主の書斎に入る。
「こりゃあ」
部屋中に所狭しと紙が貼ってある。
手紙と戦争の記事、生存者の名前と死傷者の名前が載ってる。
その中にゼノの名前を見つける、死傷者の記事の方に…。
「やっぱ死んでんだな、そしてルカはその死を受け入れられず、ああなったと…」
部屋を出て外に、話に聞いたように広い畑があったがその奥に、森に続く道があることに気づく。
「…行ってみるか」
細い道を進むと、開けた場所に沢山の十字架があった。
墓場、100は立っているのか、夜の森にこんな場所があるのはかなり不気味だ。
「使用人は皆居なくなったか…」
使用人達の墓、だが使用人だけではこの数にならないだろう。
墓には名前が書いてあったが、半分以上に同じ文字が書かれていた。
部屋に戻り、今までに集めた情報をまとめる。
(魔物がいる森に、1人屋敷の管理を続けるメイド、行方不明になった人達、墓…)
考えているうちに朝になる。
ノックをし、部屋に入ってくるルカ。
「おめざめでしたか、朝食の準備が出来ております」
「ルカさん、これってなんて読むんだ」
それは墓石に書いてあった文字だ。
「”お客様”ですが?」
「…へ、へ~~あ、あのさ俺、今日ここを発とうと思ってるんだけど…」
「お客様?何か私に至らぬ点がありましたでしょうか?」
「そんな事無いんだが…」
「でしたら残ってもらえないでしょうか、ゼノ様も外の方と久しぶりに話したいようですし」
「そ、そうか…」
「朝食の準備も出来ていますし」
「…分かった、もう少し居るよ」
「ありがとうございます」
昨日食事をした場所で朝食を頂く、胡桃のパンにジャム、甘めの温かいスープ、分厚いベーコンと朝から豪華な食事、もちろん準備されたのは2人分だ。
ルカは俺が食べ終わるまで、ただただジッと後ろの方で立っていた。
自分だけが食べるのは申し訳なく思い、話しかける。
「ルカさん、一緒に食べないのか?」
「私はメイドですので、ご一緒する権利がありません」
「…」
食べにくい中、時間を掛け食べ終える。
片付けるルカ、王顕は部屋を出て行く彼女を確認し、暗殺者の面を装備し、書斎に向う。
「客の墓を作ってるって事は、この屋敷に俺みたいに強制的に連れて来られて、ここで死んでいったってことか」
前ここに来たときは暗くて見えなかったが、ここには戦争の記事だけでなく、屋敷に連れて来られた者達の残した手紙も張られていた。
手紙の内容としては、誰もが最初は不満は無かったようだが、帰る事は許されず、逃げようとしても連れ戻されの繰り返し、死ぬまでここで暮らしたらしい。
「こいつらは、レベルの差で逃げることも出来なかったと」
バァンッ
後ろの扉が勢い良く開け放たれる。
冷静な顔をして、物事を坦々とこなしていたルカとは思えないくらい、焦り必死な顔をしていた。
「お客様!、どこに!」
「…」
「また、独り…」
部屋の中を探しているが、暗殺者の面を装備している俺には気付けない。
ひとしきり探した後、部屋を出て行く。
必死に探している姿を見て、心の中で謝る。
「外に出てったな」
このまま黙って出て行くのは簡単だし、力で押さえ込む事も出来るろう。
だが世話になったし、何より王顕自信がルカを気に入っていた。
昼を過ぎ、日が傾き始めた頃に、ルカが屋敷へと帰ってきた。
「よう…」
「お客様!、どこに行かれていたんですか、森には危険なモンスターも数多く生息していましたし、怪我はなされて無いようですね、良かったです」
「…」
「お客様?」
森から戻って来ると、屋敷の玄関に座り込んでいた王顕に気付き、怪我の確認をする。
黙っている俺に違和感を感じている。
「屋敷にお戻りください、ここなら安全ですから」
「ゼノさんが死んでるの、理解してるだろ?」
「…」
無言。
ルカの体が震え始める。
自分の主が死んでいるのをちゃんと理解して、彼女は壊れたフリをしている。
精神を病んで、居ないはずの主の分の食事を作っているのでなく、病んだフリをして料理を準備していた。
「使用人も故郷に帰ったり、身寄りが無くゼノさんの帰りを待っていた人も、あんたを残し死んでいった」
「…」
「あんたは孤独に耐えられなくなって、森に入ってくる人を襲い屋敷で客として接した」
「…て…い」
「客達は最初のうちは居心地の良さに、喜んで居ただろう」
「…めて…さい」
「だが、あんたは国に帰りたいと言った人達を屋敷から出さなかった、死ぬまでな」
「やめてください!!」
「…」
叫ぶ、握り拳を作り、肩を震えさせながら、俺はそれ以上何も言わなかった。
攻撃される事も警戒する。
ルカは口を開き。
「お客様、屋敷にお戻り…」
「ルカ、俺と来ないか?」
「え…」
あれだけの事を言われ、なおも屋敷に入れようとする彼女に王顕が先に問いかける。
呆気にとられるルカ。
「お前がちゃんと過ちを理解し、償いたいと思うのなら、俺も一緒に背負ってやる」
「あ…」
「俺は、お前が気に入ったからな」
「何もかも、お分かりなんですね…」
「ああ、んで返事は?」
「…私は」
彼女は待っていたのだ、主の居なくなった屋敷から一緒に出てくれる人を、新しい主を…。
ルカは涙を流し、差し伸べられた手を掴む。
泣いてはいたが、しっかりと笑い。
「よろしくお願いします、主様」
「おう」
こうして新しい仲間が増えた。
旅の準備をして屋敷を出る、ルカは屋敷に深々と頭を下げる。
思い出の詰まった場所へ、別れを告げる。
「今までお世話になりました」
頭を上げ荷物を手に、彼女は新しい主と共に旅に出る。
王顕とルカはテントの張ってある方を目指す。
歩いて向うのはなんとなくだ。
ルカは一定の距離で付いて来る。
「主様はどこに向っているのですか?」
「王顕で良いぞ、向っているのは竜人の村がある山岳地帯だ、その後は村に着いてから考える」
「…危険を感じたら、私を盾にお使いください」
「女の子を盾に出来るかよ」
「…お、女の子ですか」
「ん、そういやルカ歳は…」
「153です」
「…」
まさかの年齢に言葉を失う。
蟲人の寿命は800歳だと言う。
ルカは全然若い方だった。
テントに着くと叉夜の姿は無かった。
「チャットが使えないのは不便だ」
「チャット?」
「何でもない」
待つことにして焚き火を始める。
狼煙にもなって、気付いてもくれるだろう。
ダダダダダダダダダダ…バァ
「ご~~しゅ~~じ~~ん~~さ~~~ま~~~~~!!!」
「おうおう」
森から飛び出してきた。
受け止め、泣きじゃくる叉夜の頭を撫でる。
「うえええええええええん、ご主人様ああぁぁぁ、ボクッ、ボクッ、心配でええぇぇぇ」
「よしよし」
「主様、その方は?」
「ははは…」
ルカにはまだ、叉夜の話しをしていなかったので、叉夜が落ち着くまで、紹介するのは待ってもらう事にした。
好き嫌いの分かれそうなキャラを出したかったので、蟲娘をだしました
メイドって響き良いですよね~
次回は村を越え、山岳地帯に入る感じで書かせていただきます
読んでくれた人は、出来れば評価のほうお願いします




