よくあるアレ
まさか本当にマンガのような事がおこるとは思わなかった。
「さて、困ったわね」
「困ったわねじゃない早くどうにかしろ」
鏡にうつる自分が抗議してくるように見えるが見た目が自分なので全然怖くないし。
元々男勝りの性格といわれてきたが、たしかに男っぽい口調だ。
そもそも私が喋っているわけだから怖がる必要も無いということだ。
「もうこのままでよくない?どっちみち元にもどれないし」
「もう一回試せ」
鏡の私は抗議してくるように、命令してくるが体の権利は私にあるし、今はなにも知らない人から見たら私は鏡に向かって独り言を喋っている状態だ。
まさか私があのマンガとかにある現象に巻き込まれるとは思わなかったが、せっかくのこの機会だから普段はできない女の子の格好をしようとすると、鏡の自分はわめいてくる。
「ほら女の子らしくしたほうが少しだけ可愛いわよ」
「俺にかわいらしさなんていらないんだよ」
「女の子なんだから別にかまわないでしょ、うわぁ傷だらけだし」
「それは勲章だ」
「嫁入りまえの女の子の体なんだから、すこしは気をつけて」
まだまだ真新しい膝や肘などのすりむいた箇所を消毒するべく、救急箱から消毒液と絆創膏で手当てを使用とするとまた鏡の自分は、絶叫してくる。
「やめろぉそんなものはツバつけとけば治る」
「静かにしてよ」
「なんだ女子きどりか、俺ごときが女子きどりか」
「女の子なんだから気取りということはないよ」
自分で自分を慰めるのがこんなに、面倒くさいとは思わなかった。
「いいから早く元戻るぞ準備しろ」
「無駄だと思うよ」
「やってみなきゃわかんないだろうが」
「じきにもとに戻るわよ」
「いいから」
鏡の自分に喚かれれ、あまりにもうるさいなので、もう一度だけ元に戻る方法を考えてみるが、やはりこんな状態になった原因である場所にむかうことにする。
近所の神社の階段を登りきり、階段を見下ろす。
私が陥っていったマンガの状況は、俺があいつであいつが俺で状態だ。
「うまく落ちろよあの時みたいに」
私の心のもう一つの人格はそう言うが、女の子の私としてはこの状況はとても無理なのだが恐る恐る転げ落ちてみる。
しかし元々二重人格の人がこの状況に陥るとめんどくさいとはマンガにはなかったなぁと思いつつ痛みだけが体を襲って特に変化はないようだ。
「だぁ勢いが足りない」
「私には無理だよ、とりあえず帰るからね」
どうやら元に戻るにはまだまだ先のようだ。
とりあえず、家に帰ったら消毒してお風呂にはいって主人格の自分では、普段やらない女の子の格好を元にもどるまで楽しむ事にした。
もしかしたらこのまま私が主人格になったりするということも期待しながら家へと帰った。