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第三話 隔離棟

隔離棟。

言葉の通り異世界症候群の患者が隔離されている場所である。

崩壊した病院を利用しているらしく、見てくれはなんかでそうな廃病院そのものだった。

レイリィに一体なんでどこもかしこもこんな状態なのか聞いてみたが、悲しそうな顔をする一方で教えてくれなかった。

隔離棟の中は人で溢れてる。みんな憔悴しきった表情だ。所々から泣いてる声も聞こえてくる。

帰りたいよな。そうだよな。

私とレイリィはそんな人と人の合間を縫って歩く。


「着きました彼女が例の変わり者です」

そう紹介されたのは、長い金髪を後ろに巻いている絶世の美女だった。

「こんにちは。ライアンさん。一体どうしたんですか?」

流した前髪がゆらりと揺れる。くるんとした髪先がまた格別の表情をもたせる。

しかしどう話せばいいのだろう。下手に話すと私がライアンじゃないってバレてしまうかもしれない。

私はレイリィの方をちらっと見る。

「ここでは明かして構いません。彼らが何を言っても狂人扱いされるだけなので」

狂人扱いって酷いな。

そう思いつつ私は金髪の彼女の方に向き直って言った。

「……実は私はライアンじゃないんだ。逢坂美咲都。高校生。平和な日本にいた。」

「逢坂さん!?犀川高校の?僕のこと覚えてる?国谷万樹。同じクラスの。」

予想外の反応に少しびっくりした。

国谷万樹(くにやまき)。私の同級生でいつも本を読んでいる地味な少年。あまり話したことはない。

確か二ヶ月前に異世界症候群になり休学中だった。

「国谷くんもこの世界に来てたんだ」

「ああ。二ヶ月くらい前にね。来たとき始めは面食らったけど。」

確かに冴えない少年がいきなり絶世の美女になったら面を食らうだろう。

「二ヶ月いて何か分かったことはある?」

「色んな人に聞いて回ったんだけど、みんなこっちに来る前に青い光を見てる。後は、皆性別が逆だ。」

性別が逆。薄々予想していたことだけどやっぱり。

「いやーしかしラノベみたいなことが本当に起こるなんて、さながらタイトルは異世界に移動したと思ったら性別が逆転していたかな」

などと国谷君は一人でぶつぶつ続けている。

せっかくの美女が台無しだ。

しかし研究すべきだとか言っているときいたから研究者か何かだと思ったのに、同級生だったとはこれからどうしよう。

「逢坂さんはこれからどうするの?」

「元に戻る方法を探す。どれくらいかかるかわからないけど何もしないよりはマシ」

どれくらいかかるか……

自分で言っておいてなんだが本当にわからない。

少なくともここにいる人たちは最長で半年、何もできずに何の手がかりも得れずにいたのだ。

泣いてしまうのも無理はない。私だって泣きたくなる。

するとそんな心情を察されたのか国谷くんが顔を覗きこんできた。美女に覗きこまれるのって照れる。

「ライアンさんってこの世界の重要人物でしょ。重要人物の回りには情報が集まるのがセオリーだ。手がかりはきっと向こうからやって来るよ。逢坂さんは安心して良い。それにライアンさんはレジスタンスのヒーロー。僕が察するに君が主人公だ。主人公は補正がつく。元に戻るだけじゃなくこの世界移動の仕組みすら分かるかもしれない」

よくわからない論理を並び立てられた。

どうやら物語に見立てているみたい。

「えっとつまり?」

「君といれば何か動くかもしれない。フラグは僕が見つけるから一緒に行動とらせてもらってもいいかな?」


こうして私は国谷くんとこの世界で行動することになった。

レイリィが少し渋い顔をしていたが、知人が傍に居た方が良いだろうと許可してくれた。

国谷くんもとい金髪美女が傍にいることで私もといライアンが周りの人から怪訝に思われないかと思ったが

国谷くんの体の人の名前はセルビアと言いライアンとは懇意だったので大丈夫だと言っていた。

そう言うレイリィはまた渋い顔をしていた。



「世界を自由に移動できたら、異世界旅行が可能になる!どんな世界があるんだろう今からワクワクするよ!」

異世界症候群になって泣いてる人もいるのに国谷くんもとい金髪美女は呑気なものだなあと思った。

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