114王子無双「絵」
勝ち残れ。
眼前に蠢くのは、五万を超える腐肉の群れ。
圧倒的な死者の軍勢を前にして、エンメルカル王子は歓喜に打ち震えていた。
「俺一人で、全てを掃討する。」
「王子、無茶です!」
側近のガルデウスが慌てて制止する。だが、エンメルカルは振り返らない。
「俺なら勝てる。ガルデウス、お前の大剣を貸せ」
渋々差し出された身の丈ほどもある大剣を掴むと、エンメルカルは単騎、ゾンビの海へと飛び込んだ。
「ギャアア!」
首が飛ぶ。
「ゴァッ!」
胴体が両断される。
袈裟懸け、唐竹割り。一振りで複数のゾンビが肉塊へと変わる。
エンメルカルの戦い方は常軌を逸していた。
巨大な大剣を、前方の敵集団へ力任せにぶん投げる。
直後、彼の姿がブレた。
――瞬間移動。
空中で投げた大剣の柄を掴み、そのままの勢いで周囲のゾンビを蹂躙していく。
「な、なんだあの能力は……」
「何故、王子があそこまで強いんだ……」
ガルデウス達は、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
優雅な王子の衣服は、どす黒い返り血で染まっていく。
だが、エンメルカルの心はかつてないほど高揚していた。
退屈だった。平和な王宮での日々は、彼にとってただの牢獄だったのだ。
彼の本質は、誰よりも闘争を求めるバーサーカーである。
実父メスキアッガシェル王は「危険すぎる」と彼を遠ざけ、その狂気を檻に閉じ込めていた。
だが、その枷はもう無い。
あるのは、敵の肉を断ち切る快感だけ。
「ハハハハッ! 脆い、脆すぎるぞ!」
一万の死者を容易く塵に変え、エンメルカルは嗤う。
統率を失ったゾンビなど、彼にとってはただの肉の的でしかなかった。
――それが、油断だった。
残るゾンビが四万を切ったその時。空気が、変わった。
「……ん?」
ゾンビたちがピタリと動きを止め、泥のように溶け合い、一箇所へと集約していく。
それは、あまりにも奇怪な光景だった。
何万もの呪詛が重なり合い、巨大な肉塊を形成していく。
そして、現れた。
体長三メートル。悍ましい髑髏の顔を持つ、『それ』が。
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【個体名】 ゾンビ神
【種族】 神族 Lv. 400
【HP】 44,444,444 / 44,444,444
【MP】 44,444,444 / 44,444,444
【スタミナ】 44,444,444 / 44,444,444
【戦闘スキル】
・無明点睛(周囲12mに200万の絶対ダメージ)
・崩殺(拳による一撃必殺)
・デスブレス(ブレスによる一撃必殺)
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異常すぎるステータス。
先程までの狂気的な笑みは消え去り、エンメルカルの顔が引き攣った。
「こんなの聞いてねーぞ……。後は消化試合だけじゃなかったのかよ。」
額を冷や汗が伝う。
「王子。」
背後から、低く力強い声がした。
ガルデウスが大剣の予備を引き抜き、エンメルカルの隣に並び立つ。
「ここから先は、私も御供します。」
絶望の権化を前に、死闘の幕が再び上がろうとしていた。
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