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火の国の物語  作者: たくぼあき


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3/3

女王カレナ

カーレヌ姫が、初めて絢爛豪華な炎と黄金に守られた火の国の王の居城ラーダ宮殿に迎え入れられたのは3歳の頃であった。

その待遇は、推定王位継承者ケイシー王子の娘としての待遇だった。


しかし、その時期のカーレヌは水の国を恋しがって泣くばかりのわずか3歳の幼児であり、それまで動きやすい(ひとえ)の水の国のさらりとした衣装だったものが突然火の国の黄金を散りばめたずしりとした民族衣装に着替えさせられ、父に手を引かれて沢山の武官や文官が居並ぶ玉座のまえに連れ出された。


これは正式な「対面の儀」と呼ばれる王位継承者が生まれた時におこわなれる儀式の一つである。


女王の後継と目されていた娘のエマとその子が亡くなったため、国体をはっきりと示す為に、女王の息子のケイシーに第一王位継承権が移行し、さらにその娘である幼いカーレヌにも継承権がみとめられ姫殿下の継承が与えられることになったのだ。


はじめて父方の祖母に当たるカレナ国王の御前にでる正装に身を固めた幼い少女。


「カーレヌか」


黄金色の王冠を被り赤地にびっしりと金色の刺繍が施された美しいかっちりとしたドレスをまとったカレナ女王が、玉座に腰掛けたままいすくめるように孫娘を見つめた。

女性にしては低い声であった。


「カレナ女王陛下に対してご挨拶をなさい」

畏まった父の言葉に何も反応できず萎縮するカーレヌ。

カレナ女王はこの中で最も豪華なドレスをまとい手には燃え上がる炎を模した王笏を握っていた。


腰を下ろす王座の傍には炎が噴き出す金管があり女王は時折そこに炎をキセルで吸い込む仕草を繰り返しながら静かに息子が連れ帰った幼い孫娘を無言で見つめている。


女王はじっくりとカーレヌを見つめていた。


火の精の特質をはっきりと現す金色の髪と瞳、幼い頃のケイシーやエマにもよくにている。

間違いなく我が孫である、ほっとした様子で息を吐く女王カレナ。


「火の国のケイシーの子カーレヌです。初めまして。カレナ女王陛下」

そしてカーレヌの方からたどたどしくだが何度も練習した言葉がやっと口をついて出てくる。


そその言葉はまさしく火の国の言葉であった。

ケイシー王子が、呼び寄せた水の国の言葉を流暢に操るフレディ・ローズという若手親衛隊員が、カーレヌに手を変え品を変え幼子の機嫌をとりながら必死で語り聞かせ覚え込ませた言葉であると知るものはケイシー王子のみだった。


周りのもの達から静かに感嘆の声が湧き上がる。

最も感動していたのは女王本人であった。


「異国生まれとはいえきちんと言葉がわかるのだな。こちらにおいで」

カレナ女王は王笏を近侍のものに預けて立ち上がり自分に寄ってきたカーレヌを抱き上げた。


「可愛らしい我が孫よ。どうか健やかに」


娘と孫を同時に亡くした直後でありカレナ女王は感傷的になっていたのか涙ぐみ、思わず力を込めてカーレヌを抱きしめ、カーレヌも祖母にぎゅっとだきついた。

「ケイシーの娘に幸あれ」


そして、女王に最も近い位置に侍っていた女王の次に煌びやかな衣装を纏う武官にも引き合わされた。


「私の弟のエドとその息子達だ。仲良くしなさい」


エドと呼ばれた壮年の武官はカーレヌにうやうやしく頭を下げた。


「ようこそ火の国へ。カーレヌ姫殿下」


エドと呼ばれた壮年の武官の傍には金髪の若い男性達が数人いてエドの息子達だった。

そのうち1番年下のレザノフという少年が後にカーレヌの夫に決められる運命を持つがこの時はまだ何も決まってはいなかった。

しかし、この出会いをレザノフ少年は後々まで印象的に覚えていて幼いカーレヌの姿に「懐かしさ」を感じて特別な相手だと感じた、という。




火の国は油田や火山がいくつもあり、全て国家と王室が所有して、そうやって燃え盛る炎を火の精霊達に分け与えている。


 火の国の精霊達に炎を授与する事が火の国の王の最大の役目とされており王族の義務は炎を供給する王の責務を常に支えることである。


火の精は若いうちは兎も角歳をとればとるほどに炎で身体をみたして置かねば身体を維持できなくなってしまい火の精霊にとって王家に仕えて炎を下賜されることは非常に重要なことだった。


それはまさに火の精の大切な命の源、社会的エネルギーの供給源でもあった。

炎の供給者として火の精の生活を守るのが国王としての役割。


 カレナ女王は、そんな炎の供給者として母である先代の女王の後を襲い若くして火の国の王位につき、立派に任を果たしてきた。


炎を絶やさないためには資源が必要であり、燃える石や燃える水を求めて水の国や地の国との領土争いという紛争も起きやすく、かといってそう易々と国家間で武力衝突をしてはならないとも言われている。



そんな中最愛の娘の死去という後継者問題、息子の水の国の王女との結婚問題などなど難局をいくつも抱えてきた。


領土争いなどは本格的武力衝突するとなると経済活動がほうかいすることから、睨み合いと話し合いで政治的解決を図ってきたのだが、その日々はカレナの、心身をすり減らすもので、それを弟のエドともども乗り越えた。


また後継者問題も彼女の深い悩みであった。

たった1人の娘を失ってかなり気落ちしていたのが周囲からもよく分かっていたが可愛らしい孫娘の登場で、カレナ女王は火力をやや取り戻せたのだった。


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