第64話 再生都市の影
朝の光がヴァレクの街を照らす。
瓦礫が撤去され、再建作業が進む中、翼たちは今日の任務を確認するためギルドに向かっていた。
「今日の依頼は、街の北側の警備と、少し離れた廃墟での調査だそうよ」
セリアが地図を指でなぞる。
リリアは腕を組み、眉をひそめた。
「廃墟の調査って……まだ魔獣が潜んでる可能性があるんだろ?」
ミーナは小さくうなずいた。
「ゼロの残した力の影響は、瓦礫や土地の奥深くにも残っているかもしれないわ」
翼は深呼吸をし、回復術の紋章を確認する。
「俺たちは準備万端だ。どんな脅威も、乗り越えられる」
ギルドを出て街の北側へ向かう途中、翼たちは小さな子供たちに出会った。
「お兄ちゃんたち、魔獣はまだ出るの?」
子供たちの目は不安と期待が入り混じって輝いていた。
翼は優しく笑い、手を振る。
「心配するな。俺たちが守るから安心しろ」
子供たちは安心したように笑い、翼たちは北側の廃墟へと向かう。
廃墟はかつての王都の外郭に近く、瓦礫が山積みになった広場だ。
かつて戦った魔獣の残骸や、ゼロの力で変異した植物が混在していた。
リリアが先頭に立ち、剣を構える。
「警戒は怠らないで」
翼は光の魔法陣を展開し、セリアとミーナも周囲の安全を確認する。
「……何か、動いた」
ミーナの声に、翼が目を凝らす。
瓦礫の陰から黒い影が現れた。
小型の再生個体だ。ゼロの残滓で生まれた、まだ完全に制御されていない魔獣である。
リリアが剣を振り、前衛で迎撃する。
翼は光の刃を飛ばし、回復の魔法で仲間をサポートする。
セリアは魔法で影を封じ込め、効率的に敵を倒す。
しかし、この魔獣は通常の戦闘パターンとは異なり、急速に再生しながら攻撃してくる。
翼は眉をひそめる。
「こいつ……ゼロの残滓が不安定なまま残ってるな」
戦闘中、瓦礫の中から小さな光の塊が飛び出した。
それはゼロの残滓の一部で、魔獣の力を増幅させる源になっているようだ。
翼は瞬時に判断する。
「その塊を封じれば……!」
光の刃を魔獣の足元に送り、塊を破壊する。
塊が消えると、魔獣の再生が急速に止まり、力尽きて倒れた。
「やった……」
リリアが息を整え、肩で呼吸をする。
ミーナは不安そうに瓦礫の中を見渡す。
「でも……まだ何か残っているかもしれない」
翼は頷き、再び光の魔法陣を展開する。
「ゼロの残した力は完全に消してやる。そうすれば、この街も安心だ」
そのとき、瓦礫の奥から、微かな声が聞こえた。
「……誰か……助けて……」
翼たちは声のする方向へ走る。
瓦礫の隙間に、小さな少女が閉じ込められていた。
翼が光の魔法で瓦礫を浮かせ、少女を救い出す。
「大丈夫か?」
少女は涙を流しながら頷いた。
「ありがとう……助けてくれて……」
セリアが少女の手を取り、微笑む。
「怖かったね。でももう安全よ」
少女の背後で、不意に黒い影が立ち上がった。
翼は剣を構え、魔法陣を展開する。
「新たな敵……か?」
影の中から現れたのは、ゼロの残滓が意識を持ったかのような存在だった。
だがその瞳には、怒りや敵意よりも、迷いと悲しみが宿っている。
翼は静かに声をかける。
「お前……ゼロの力を持っているのか?」
影はうなずき、微かな声で答えた。
「……俺は、誰かを守りたいだけなのに……」
翼は微笑む。
「なら、俺たちと一緒に生きるんだ。力は、恐れるためじゃなく、守るために使う」
影の体が光に包まれ、瓦礫の上に静かに立つ。
翼たちは少女と影を見守り、新たな仲間として迎え入れる決意を固めた。
ミーナが翼に尋ねる。
「この子……影も、ヴァレクで一緒に暮らせる?」
翼は力強く頷く。
「もちろんだ。この街は、みんなの居場所になる」
リリアは笑みを浮かべる。
「さて……次は、街の全体安全保障だね」
セリアが地図を広げ、次の任務を確認する。
「まだまだ、やることは山積みね」
翼は空を見上げる。
ゼロの残影が消えた世界で、新たな物語が始まろうとしていた。
自由都市ヴァレク――再生の都市。
ここから、翼たちの新たな冒険が幕を開けるのだった。




