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第63話 新生都市ヴァレク

 朝陽が新しい都市の建物の隙間から差し込む。

 瓦礫が撤去され、簡易の市場や仮設の宿屋が並ぶ自由都市ヴァレクの中心。

 翼、ミーナ、セリア、リリアは、まだ混乱の残る街を歩きながら状況を確認していた。


 「街が、ずいぶん復活してきたな」

 翼は手を伸ばし、瓦礫の上に芽吹いた草を撫でる。


 ミーナが小声でつぶやいた。

 「でも……あの戦いの後、街の人々は、ゼロのこと、覚えているのかしら」


 セリアが肩をすくめる。

 「覚えていようがいまいが、あの人の残した光の痕跡は消えないわ」


 リリアも同意するように頷いた。

 「それに、翼たちが戦ったって話はすぐ広まるだろうし」


 街を歩く人々は、まだ恐怖と警戒の色を残しつつも、翼たちを見つけると笑顔で手を振った。

 「翼殿! ありがとう!」

 「また来てくれるんだろ?」

 ――追放回復術師として旅立ったあの日から、ここまでの道のりを誰もが知っている。


 その光景に、翼の胸に熱い感情がこみ上げた。

 ――守るべき人々がいる。

 ――守るべき場所がある。


 だが、街の復興はまだ序章にすぎなかった。


 ギルドに到着すると、復興支援と冒険者の再編成が行われていた。

 まだ瓦礫の残る中庭には、資材を運ぶ冒険者や傭兵たちが行き交う。


 「さて、次の任務は?」

 翼はマップを広げ、現状の依頼状況を確認する。


 セリアが指をさした。

 「市街地北側に、魔獣が残ってるって報告があるわ」


 リリアは拳を握りしめる。

 「……あれを掃討するのが先決ね」


 ミーナは肩をすくめた。

 「でも、その魔獣って……ゼロの残滓で作られた再生個体の可能性があるわ」


 翼は冷静に頷く。

 「なら、こちらも完全に準備をして向かうしかない」


 ギルド内では、既に新たな冒険者が数多く登録され、情報も入り乱れていた。

 街には新しい脅威が迫っている。ゼロの残した力が、少しずつこの都市に変化をもたらしているのだ。


 午後。街の北端、瓦礫の積み重なった崖の上に、翼たちは立っていた。

 崩れた建物の間に、黒い影が蠢く。


 「……やっぱり、再生個体だ」

 ミーナの声に、翼は頷く。


 リリアが両手に剣を構える。

 「準備はいい?」


 翼は回復術の紋章を展開しながら微笑んだ。

 「当然だ。今日も、俺たちの力を見せてやろう」


 影がゆらりと立ち上がり、巨大な姿を現す。

 再生個体は、ゼロの影響を受けた魔獣で、羽のような形状の骨格が背中から伸び、目は赤く輝く。


 「うわ……めちゃくちゃ強そう……」

 ミーナが息を呑む。


 翼は周囲を見渡し、回復と支援の魔法陣を同時に展開した。

 光の紋章が地面を覆い、味方の力を最大化する。


 「いくぞ!」

 リリアが叫び、先陣を切って魔獣に突撃。

 セリアは翼の背後で魔法攻撃を連打し、周囲の小型個体を瞬時に殲滅する。


 翼は腕を振り上げ、光の刃を飛ばした。

 「ヒール・ブレイド!」


 刃が魔獣に命中すると、衝撃と同時に再生個体の体内に波紋が広がり、弱体化する。


 「すごい……翼、直接攻撃もできるんだ」

 ミーナが驚きを隠せない。


 翼は微笑む。

 「俺の力は、“癒し”だけじゃない。

 傷ついた仲間も、倒れた敵も、必要なら救う」


 戦闘は激烈を極める。再生個体は驚異的な耐久力と攻撃力を持つが、翼たちの連携によって次第に追い詰められていく。


 翼が仲間の体力を回復しつつ、攻撃のタイミングを指示する。

 「リリア、右側から。セリア、魔法陣の隙間を狙え!」


 連携は完璧だった。

 攻撃と回復のバランスが保たれ、再生個体はついに後退を余儀なくされる。


 その時、翼の胸にゼロの残影がよぎる。

 ――この戦いも、ゼロが創った“もう一つの世界”の影響下にあるのかもしれない。


 だが、翼は迷わず声を上げる。

 「誰のためでもない! 俺たちの力で、この世界を守る!」


 再生個体は最後の力を振り絞り、咆哮した。

 だが、翼たちの連携と光の力の前に、ついに力尽き、崩れ落ちた。


 風が吹き抜け、瓦礫が揺れる。

 翼は胸を張り、仲間たちに微笑む。

 「これで一つ、街が安全になった」


 ミーナが翼の腕に手をかける。

 「次は……街全体の安全保障ね」


 リリアも笑った。

 「やっと、本格的な再建作業の始まりだ!」


 セリアは地図を広げ、次の任務を確認する。

 「まだまだ、やることは山積みね」


 翼は空を見上げる。

 ――ゼロの残影が消えたこの世界で、

 新しい物語が始まる。


 自由都市ヴァレク――再生の都市。

 ここから、翼たちの本当の冒険が幕を開けるのだった。

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