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第50話 永劫回廊の真実

 光が収束し、世界が静止した。

 次の瞬間、翼たちは漆黒の空間に立っていた。


 地平も天もなく、ただ無数の魔法陣が宙を漂っている。

 それらはゆっくりと回転しながら、青白い光を放っていた。


 「……ここ、どこ?」

 リリアの声が、空気を震わせた。


 「おそらく――遺跡都市カレイドの“深層”。

 外の地図には存在しない場所よ」

 セリアの言葉に、翼は無言で頷く。


 足元に浮かぶ透明な足場。

 そこに刻まれた古代文字を、リリアが解析していく。


 「《永劫回廊》。

 “神々の記録庫”って書いてある……」


 「神々……?」

 翼が目を細める。


 次の瞬間、空間に淡い人影が現れた。

 白銀の衣を纏い、瞳には虚無を宿した存在。

 声は性別を超え、どこか機械的。


 「――アクセスを確認。

 資格者、天城翼・セリア・リリア。

 遺跡アクセス権、仮承認」


 リリアが目を丸くした。

 「え、なんで私たちの名前を……!?」


 「記録情報、確認済。

 “監視者計画”関連個体――該当」


 翼の表情が変わる。

 「監視者……やっぱり関係あるのか」


 幻影がわずかに頷く。

 「説明を開始――」


 空間が淡く光り、古代の映像が浮かび上がる。


 それは、今よりも遥か昔。

 空を裂く巨大な都市群、空中を漂う無数の魔導船。

 そして――天から降り立つ光の存在たち。


 「これが……神々の時代?」

 セリアの声が震える。


 「彼らは“管理者”と呼ばれていた。

 世界を維持し、魔力を制御する存在。

 だが――ある時、異なる種が現れた」


 映像が切り替わる。

 人間たちが魔導技術を使い、神の力を再現し始める。

 その結果、神と人との境界が崩壊した。


 「人間は“模倣”を繰り返した。

 やがて管理者たちは、人を恐れた。

 そして――“監視者”を生み出した」


 「……つまり、監視者って、神々が人間を監視するために作った……?」

 リリアの声が震える。


 「肯定。

 監視者は神々の意志を継ぎ、世界の均衡を維持する。

 そのために――必要ならば、人間社会を“再構築”する」


 翼が拳を握りしめた。

 「再構築って……滅ぼすってことか」


 「訂正――浄化」


 淡々と告げる幻影の声に、背筋が凍る。


 「監視者の目的は“世界の循環”維持。

 破壊もまた、創造の一部」


 セリアが一歩前に出た。

 「そんな理屈、認められるわけない!」


 「感情的反応、想定内。

 だが、この世界は既に“終焉の周期”に突入している」


 「終焉……?」

 翼の視線が鋭くなる。


 「はい。

 魔力総量の臨界点突破。

 世界の基盤、二年以内に崩壊予定」


 空間全体が震え、無数の魔法陣がひとつに収束する。

 その中心に、巨大な球体――黒き魔核が現れた。


 「これが、《原初のコア》……」

 リリアが息を呑む。


 幻影が続ける。

 「この核を制御できるのは、かつて“神々に選ばれた者”――

 癒しの系譜を継ぐ者のみ」


 セリアが息を飲み、翼を見る。

 「癒しの……ってまさか」


 「天城翼――あなたは、“神々の系譜”の末裔。

 選定者ヒーラー・コード


 時が止まった。


 翼は言葉を失い、拳を震わせた。

 「俺が……神の系譜?」


 幻影が頷く。

 「あなたの癒しの力は、かつて“創造”を担った神の欠片。

 ゆえに、監視者たちはあなたを“観測対象”として監視してきた」


 「俺を……?」


 「あなたが覚醒すれば、世界の終焉を“拒否”できる。

 それは、監視者にとって最大の脅威」


 セリアが唇を噛み、リリアが叫んだ。

 「じゃあ……あいつら、翼を消そうとしてるってこと!?」


 「否定はしない」


 空間の光がゆっくりと弱まり、幻影の姿が揺らぐ。


 「……最後の忠告。

 “虚影騎士団”の次に現れるのは、“第一監視体”」


 「第一……?」


 「この世界の原初の監視者。

 神に最も近く、神をも殺した存在」


 光が完全に消え、空間は静寂に包まれた。


 しばらくの沈黙。


 リリアが震える声で言った。

 「ねえ、翼……どうするの? 神の末裔って、そんなの急に言われても……」


 翼はしばらく黙っていた。

 やがて、静かに笑った。


 「決まってる。――俺は“人間”として戦う」


 「え?」

 セリアが顔を上げる。


 「たとえ血がどうであろうと、今の俺はただの人間だ。

 仲間と旅して、怒って、笑って、生きてる。

 神だの監視者だの……そんなもんに、俺の生き方は決めさせない」


 その言葉に、セリアの表情が和らぐ。

 リリアも涙を拭いながら笑った。


 「まったく……そういうとこ、ずるいんだから」

 「うるさい。お前らが支えてくれなきゃ、俺だって折れてたよ」


 三人は顔を見合わせ、ゆっくりと笑った。

 けれど、その穏やかな時間を打ち砕くように、

 遠くの闇が蠢き始めた。


 巨大な魔力の波動。

 空間が歪み、光が一気に吸い込まれていく。


 リリアが叫ぶ。

 「やばい! 転移ゲートが暴走してる!」

 「逃げるぞ!」

 翼が二人の手を掴む。


 だが、その瞬間。

 闇の中から、一つの“声”が響いた。


 ――『ようやく、会えたな……《神の欠片》』


 低く、恐ろしく、どこまでも深い声。

 まるで空間そのものが喋っているようだった。


 「……来たか、第一監視体」

 翼の声に、戦慄と決意が同時に宿る。

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