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第40話 暗闇を切り裂く光

 西の森を抜けた先に、翼たちが目指す新天地――自立都市ヴァレクの姉妹都市、アルカディアがあった。都市の門をくぐると、風に混じって活気ある街の匂いが届く。商人の呼び声、鍛冶屋の火花、そしてどこからか聞こえる冒険者たちの練習声。自由都市ヴァレクとは異なる、秩序と自由の絶妙なバランスがこの街の特徴だ。


 「うわ……さすがアルカディア、ヴァレク以上に人が多いし活気があるわね」

 セリアが目を輝かせる。

 「本当ね。冒険者が多いだけじゃなく、商人や傭兵も混ざっていて、情報網も複雑そう」

 リリアは荷物を軽く整えながら、笑みを浮かべた。

 「つまり、冒険も生活も、一筋縄ではいかないってことね」


 翼は背筋を伸ばし、地図を確認する。

 「まずはギルドに登録して、街の情報を集める。だが……今回はちょっと慎重に行動する」

 「どうして?」

 セリアが首を傾げる。

 「この街はヴァレク以上に危険だ。情報戦や派閥争い、暗殺者までもがうろついている。回復術が万能とはいえ、油断は禁物だ」


 三人は市内の冒険者ギルドに向かう。入口をくぐると、室内は活気に満ちていた。冒険者たちの声、情報屋や依頼人のやり取り、そして武器や防具を手入れする音――五感すべてを刺激する。翼は深呼吸をして、仲間に目配せを送る。


 「翼、気を抜かないで。ここは……面白そうで危険な香りがする」

 セリアが杖を握り直す。


 ギルド受付で登録を済ませると、いきなり派手な依頼の掲示板が目に入った。大文字で「古代魔導遺跡探索」と書かれており、報酬は莫大な金貨と希少な魔導素材。だが、その傍らには小さな注意書きが添えられていた。


 「探索者は死亡・失踪しても責任を負いません――アルカディア市」


 リリアが掲示板を指差し、眉をひそめる。

 「うん……さすがに怖いわね」

 「でも、行く価値はある」

 翼の目は真剣そのものだった。


 その時、背後で低い声が響いた。

 「……翼殿?」

 振り返ると、黒いローブの男が静かに立っていた。闇を纏ったような存在感、鋭い瞳が翼たちを見据える。

 「黒衣……またか」

 翼は軽く息を吐き、仲間の方に視線を向ける。

 「気にするな。相手の動きは予測できる」


 ギルドを出て、三人は情報屋の元を訪れた。古代遺跡の位置、魔獣の生態、封印魔法の情報――アルカディアは情報の宝庫であると同時に、危険の巣窟でもあった。


 「翼、古代魔導書の応用をさらに広げるチャンスね」

 セリアが目を輝かせる。

 「うん……ただし、封印の力が強い。油断はできない」


 夕暮れ、三人は都市の外れにある遺跡への道を歩き始めた。森の奥に差し掛かると、突然の風とともに霧が立ち込める。翼の感覚が警告を発する。魔獣の気配、罠の兆候、そして何者かの視線――すべてが混ざり合う。


 「翼、気配が……多すぎる」

 リリアが剣を握りしめ、周囲を警戒する。

 「ここで油断したら、確実に危険だ」

 翼は回復術の魔力を自身と仲間に巡らせ、慎重に進む。


 霧の中、黒い影が飛び出してくる。魔獣か、はたまた人間か――。その瞬間、セリアの杖が閃き、光の矢が影を捕らえた。魔獣だった。複数体が森の奥から押し寄せる。


 翼は冷静に判断する。

 「リリア、正面保持! セリア、側面支援! 俺は回復と補助に集中する!」


 戦闘は熾烈を極めた。翼の回復術が仲間を支え、リリアの剣技とセリアの射撃が連携する。魔獣の数は多く、動きは予測不能だが、翼の冷静さと判断力が光る。


 戦闘の最中、翼は古代魔導書の魔力を感じ取った。封印の力が遺跡奥に存在し、魔獣たちはそれに反応して群れているのだ。

 「…ここを制御すれば、魔獣の行動を抑えられる」

 翼は魔力を集中させ、魔導書の封印を解き、魔獣を鎮める。


 戦いが終わると、三人は息を整え、森の奥にそびえる遺跡を見上げた。古代の石造りの門、無数の魔法陣、そして光の残滓が辺りを淡く照らしている。


 「翼、やっぱりあなたって最強ね……回復術師の域を超えてるわ」

 セリアは感嘆の声を漏らす。

 リリアも笑顔で頷き、剣の柄を握り直す。

 「この遺跡……絶対に奥まで行って、真価を確かめるわよ!」


 翼は杖を握りしめ、奥を見つめる。

 「よし、行こう。新天地の冒険はここから本番だ」


 影から黒衣の男の視線が消えず、森の奥に潜む危険がさらに広がる中、翼たちの冒険は、今まで以上に過酷で刺激的な局面へ突入する――。

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