第38話 自由都市の影と新たな依頼
自由都市ヴァレクの夜は深く、街灯に照らされる石畳に影が揺れる。翼、セリア、リリアの三人は、地下迷宮での戦いの疲れを引きずりながらも、情報を集めるため街の中心部に向かっていた。
街の喧騒は、昼間の市場の活気と打って変わり、夜には犯罪や陰謀の匂いを漂わせる。翼は杖を握り、周囲に目を配る。
「昨夜の迷宮……奴ら、まだ生きている可能性が高いわ」
セリアは短剣を軽く握りしめ、耳を澄ます。
「地下迷宮の管理者……黒衣の男の影も消えていない」
リリアは地図とメモを確認しながら呟く。
「情報を集めるなら、まずは表向きのギルドだね。あそこなら冒険者や商人の噂も聞ける」
三人は自由都市の冒険者ギルドへ足を運ぶ。夜のギルドは昼とは違う顔を見せ、依頼人や冒険者たちの緊張感が漂う。
「……ここも裏と表が混ざってる街だな」
翼は心中で呟き、周囲を警戒する。
ギルドに入ると、受付嬢が慌てた様子で迎えた。
「翼殿、あなたですか! 昨夜の戦闘、噂で聞きました!」
「……いや、昨日のことはもういい」
翼は軽く微笑むが、心は警戒していた。
セリアが小声で囁く。
「こういう場所、情報は集まるけど、裏も多い……気をつけて」
受付嬢は依頼表を差し出した。翼たちはそれを受け取り、依頼の中から目に留まったものを選ぶ。
「“廃墟の警護と探索”……地下迷宮の延長上での依頼ね」
リリアは慎重に確認する。
「報酬も悪くない……経験値も得られる」
準備を整え、翼たちは夜の廃墟へ向かう。街の光が届かない路地を抜けると、古びた建物群が立ち並ぶ区域に到着する。建物は長年放置され、壁は崩れ、窓ガラスは粉々になっている。静寂と共に漂う異臭が、冒険者たちの警戒心を高める。
「翼、あの廃墟……何か感じる」
セリアが杖の先端で空気を探る。
「魔力が濃い……誰かがここを監視している」
翼は魔力感知を広げ、仲間の体力と周囲の魔力を確認する。
「……間違いない、魔獣の痕跡もある。慎重に進む」
廃墟内部は複雑で、階段や細い通路が入り組む迷路のようだ。突然、天井の隙間から影が落ち、数体の小型魔獣が襲いかかる。
「翼、前方!」
リリアが剣を振り、魔獣の攻撃を防ぐ。
「セリア、側面から!」
矢が影を貫き、翼は回復術で仲間を補助する。
戦闘は瞬く間に激化した。小型魔獣の背後には黒衣の傭兵が現れ、翼たちを囲む。
「翼殿、ここでの力を見せてもらおう」
黒衣の男が現れ、魔力を解放する。
翼は冷静に対応する。
「リリア、前衛。セリア、側面警戒。僕は支援と回復」
仲間の連携で攻撃を分散させ、翼の回復術が戦線を維持する。
だが、黒衣の男はさらに巧妙な魔法陣を展開し、魔力干渉で翼の回復術を一時的に封じる。
「このままでは……!」
翼は瞬時に全体補助魔法を展開し、仲間の力を最大限引き出す。リリアの剣が魔法陣を斬り、セリアの矢が封印魔法を打ち破る。
戦闘終了後、廃墟の奥には古代魔導書と秘薬が残されていた。翼は慎重に確認する。
「この魔導書……回復術の応用魔法が記されている。効果は倍増するはずだ」
リリアも驚きの声を上げる。
「翼、これを使えば、さらに前線でも戦えるわね」
だが、背後で冷たい視線を感じる。
「翼殿……興味深い力だ。今度は逃がさない」
黒衣の男が再び現れ、傭兵を伴って迫る。
三人は再度防御姿勢を取り、地下廃墟での戦闘が始まる。翼は支援魔法と回復術で仲間を支え、リリアの剣が敵の攻撃を遮り、セリアの矢が正確に敵の弱点を突く。
戦闘が長引く中、翼は周囲の魔力を解析し、敵の弱点を見抜く。
「封印魔法の起点を断て!」
リリアとセリアが攻撃を集中させ、黒衣の男は遂に後退を余儀なくされる。
戦闘終了後、翼は息を整えながら呟く。
「……仲間と共にいれば、どんな闇でも乗り越えられる」
リリアとセリアも微笑み、三人は廃墟を後にする。
夜空に浮かぶ自由都市ヴァレクの灯りが、彼らの決意を映し出す。街の裏側には、まだ見えない敵や危険が潜む。だが、仲間と共に歩む翼の冒険は、ますます加速していくのだった。




