第34話 自由都市の暗闇と新たな依頼
自由都市ヴァレクの朝は、昼間の光が差し込むことで一瞬だけ平和に見える。
だが、その光の下にも、影は確実に潜んでいる。
翼、セリア、リリアの三人は、昨夜の闇市での戦闘の余韻を感じながら、ギルドに向かって歩いていた。
「昨夜は疲れたわね……」
リリアが肩を伸ばす。
「でも、あれで少し街の裏側が分かったかも」
セリアは警戒を緩めず、辺りを見回す。
「甘く見すぎちゃいけないわ。自由都市には、まだまだ危険が隠れている」
翼は杖を握り直しながら、静かに言う。
「でも、少しずつでも情報を集めていかないと、この街では生き残れない」
三人がギルドに着くと、受付嬢が驚きの声をあげた。
「翼さん! また夜中に闇市で騒ぎを起こしていたんですって?!」
「……騒ぎ、ってほどでもないだろ」
翼は苦笑するが、受付嬢の目は輝いている。
「まさか回復術師が、あんな前線で戦うなんて!」
ギルド内部に入ると、さまざまな依頼掲示板が目に入る。
情報収集や護衛、討伐依頼など、多種多様な案件が並んでいた。
その中で、ひときわ目立つ依頼書に三人の視線が止まった。
「“古代遺跡の調査と秘宝回収”……」
リリアが指差す。
「文字通り危険度Aランクね……でも報酬が豪華すぎる」
翼は依頼書に目を走らせる。
「古代遺跡……以前にも似た話があったな。古代魔導書や強力なアイテムが眠っているって」
セリアが鋭く頷く。
「ここで手を抜けば、後で痛い目を見る。やるなら今しかないわ」
三人は依頼を受け、準備を整えることにした。
街の商人から食料や薬草を購入し、武具のチェックを済ませ、情報屋マルコの助言も受けた。
「遺跡内部はトラップだらけ。慎重に進め。特に入口付近には古代魔法が残っている可能性が高い」
翼は軽く頷く。
「了解。支援術と回復魔法で仲間を守る」
夜になり、三人は遺跡へ向かう。
遺跡は街の外れに位置し、昼間は荒れた丘陵と雑木林に隠れて見えにくい。
近づくにつれ、空気が冷たく変化し、地面からは微かに魔力の残滓が感じられた。
「……何かが潜んでいる気配がする」
セリアが周囲を警戒する。
リリアも剣の柄を握り直す。
「甘く見てはいけないわね」
入口に立つと、古代文字が刻まれた石扉が翼たちを待ち構えていた。
翼は杖を掲げ、慎重に魔力を流す。
魔法陣を解読し、扉が静かに開くと、暗闇の奥から冷たい風が流れ出した。
遺跡内部は、迷路のように入り組んでおり、至る所に罠や結界が施されている。
翼は魔力を集中させ、仲間に障害物や魔力の異変を伝えながら進む。
突然、床が沈み、敵の魔獣が姿を現す。
翼は即座に回復術と防御魔法を展開。
リリアは剣を振り、セリアは矢を放つ。
魔獣は強力だが、三人の連携は完璧で、次々に攻撃を凌ぎ、反撃する。
戦闘の最中、翼は自分の力に気づく。
「回復術師……だけじゃない。戦闘補助もここまでできる」
魔法で仲間の速度と攻撃力を上げ、さらに魔獣の動きを制限する。
リリアは翼の魔力補助で力強く一撃を放ち、セリアは連続攻撃で敵を翻弄する。
魔獣が倒れると、遺跡内部に静寂が戻る。
翼たちは息を整え、互いに軽く笑う。
「……これが自由都市での冒険か」
リリアが満足げに頷く。
「危険だけど、面白いわね」
セリアも微笑む。
「まだ序章に過ぎないけど……やりがいはある」
遺跡の奥には、古代の宝物とともに魔導書が置かれていた。
翼は慎重に手を伸ばし、光の加減を確認する。
「これで依頼は完了……」
だが、その瞬間、遺跡の奥深くから不意に声が響く。
「……やっと来たか、翼」
翼たちは身構える。
声の主は見えないが、確実に自分たちを知っている者の気配だった。
自由都市ヴァレクの闇は、まだまだ深く、彼らを待ち受けていることを告げていた。
翼は杖を握り直し、仲間に目を向ける。
「……この先、何が待っていようと、俺たちは進む」
セリアとリリアも頷き、三人は暗闇の奥へと歩みを進めた。




