Prologue
【~Interlude~】
~Side/セイギノミカタを目指す者《少年》
少年は正義の味方に憧れていた。
弱き人々を助け、強き悪を挫く。
それは少年にとって辿り着きたい目標であり、遠過ぎる理想。
少年は正義の味方を信じていた。
弱者たる自分を、いつか助けにきてくれると。
それは少年にとって必然であり、唯一の願望。
そしてカシコイ少年は気づいてしまった。
正義の味方というのは矛盾の塊で、救いを求める全てに手を差し伸べるわけではないのだと。
決して全ての人を救うことが出来ない存在。
助けを求める10の人がいる中で、1という犠牲を以って9を助けるのだと。
ああ、なんてことはない。
僕は切り捨てられた1の存在だったのだ。
それは最も合理的で、最も効率的な手段。
故に、その在り方を理解してしまった。
だから、僕は正義の味方を認めない。
助けられた9にとってはそれがハッピーエンドだったとしても、
切り捨てられた1にとってはバッドエンドだ。
誰も救いに来ないなら、僕がなる。
切り捨てられる1を救う、セイギノミカタに…!
~Side.Out/セイギノミカタを目指す者
~Side/正義の味方にされた者《少女》
少女は普通の女の子だった。
少しだけ勘が良く、少しだけ運が良い、普通の女の子だった。
ただ普通じゃなかったのは、彼女を取り巻く別のものだったのだろう。
少女は普通に暮らしたかった。
勉学に励み、友達と遊び、異性に恋をするという、普通の暮らしをしたかった。
ただそれが出来なかったのは、誰のせいでもなく。
しいて言うなら…運命がそれを拒んだとでも言うのだろう…。
少女の行動には、必ず"結果"が付いてきた。
それは必ず数多くの人を幸せにし、数少ない人を不幸にした。
そうして彼女は、"正義の味方"として敬われて過ごしてきた。
ただ思ったことを口にしていただけなんです。
ただやりたいって思ったことをしただけなんです。
誰かを救いたいなんて、そんな大それたことを考えたことないし、
見返りを求めるなんて、打算が働いたことなんてない。
私が何かをすると、誰かからはお礼を言われ、そして誰かからは罵倒される。
お礼を言われるようなことをしたつもりはないし、
罵倒されるようなこともしたつもりはない。
普通に勉強して、普通に友達と遊んで、普通に恋をして…。
私はただ、普通でありたかった。
私はただ、普通に暮らしたかった。
そうやって、自分のことだけを考えてた…自分勝手な人間なんです。
だから…お願い…。
私を…"正義の味方"なんて…呼ばないで…!
~Side.Out/正義の味方にされた者
【~Interlude Out~】
更新は不定期です、多分…。