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魔導工兵  作者: 龍血
第1章 光の神子編
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第5話 ベレットによる寮説明(事後)

 

「ここって総本部だよね?」

「そうだよ!」

「それでその横が寮…」

「うん、そうだよ!」


 煌夜がベレットに連れられてやってきたのは見に覚えに新しい総本部のある場所だった。

 ベレットの話ではその左隣の5階建ての建物が寮らしい。

 というか、建物が似ている。


 総本部と寮はレンガ造でそれほど珍しくもないだが、一言で言うなら「赤い」。

 赤レンガは主流の一つだけど、目の前にあるのは鮮やかな真紅色。

 鮮やか過ぎて赤身みたいな色味をしている。


「因みにあっちは?」


 煌夜は総本部の右側の建物に指差す。

 その建物も同じ色をしていた。


「あっちは宿屋みたいなものかなぁ?ここはアングロ・サクソン連合王国の魔導工兵総本部だから連合王国中の魔導工兵や職員が来る時の泊まる場所になってるんだよ」

「アングロ・サクソン連合王国中って、遠い国は大変そうですね。関所とかはどうしているんですか?」

「魔導工兵は特別待遇で、簡単な検査で通して貰えるよ。それ以外は大変だと思うけどね」


 アングロ・サクソン連合王国はそもそもリィーズに対抗するためにブリテン島とアイルランド島の各国が協力して建国した連合王国である。

 だから実際は魔導工兵の戦力と魔導工兵やリィーズの関連の外交が主となり、エスラが魔導工兵のトップとして、外交のトップとしての外交大臣の2トップでやっている。


 因みに今回の煌夜の件は魔導工兵に関連したことなのでアングロ・サクソン連合王国が外交している訳だけど、西洋ではアングロ・サクソン連合王国とブリテン島やアイルランド島の各国は別物という認識を持っていて、やまとはマーシア王国からの外交を受け、今回のアングロ・サクソン連合王国からの外交も受けながらもはっきりした違いは認識できていない。

 ただ、アングロ・サクソン連合王国は連合王国内の各国に繋がりを持っているため、他国からすれば一国に対して紹介してくれるよりも連合王国に紹介してくれる方が円滑に事を運ぶことができる。


 まぁお互い連邦制を採用しながらも、帝をトップにした王たちの上に立つ皇帝がトップとする後の帝国のような国家体制のやまとと魔導工兵やリィーズのための国家を樹立した国家というよりも1つの組織のようなアングロ・サクソン連合王国。

 認識違いができるのは仕方のないことでもある。


「私はまだマーシア王国から出たことがないから分からないんだけどね」

「そう言えばベレットは田舎って言いましたけど、ここから近いんですか?」

「そうだよ。こことは違って森に近い村なんだけど、私が魔導を使用できるのを知って、両親がここにお願いをしたんだって」

「直談判…。こちらの国とは少し違いますね」

「違う?そっちだとどういう感じなの?」


 魔導の使用できる者は世界一多いアングロ・サクソン連合王国でも現在においても重宝されている。

 ただ見つけるのは容易できない。

 大抵は偶然発見されることの方が多い。


 その点で言うとやまとは少し違うらしい。


「元々こちらの国は教育が各地に行き届いています。それは村でも変わりません」

「え!?村でも!?」

「はい。子どもでも読み書きができる子は多くいます」

「私でもあんまりなのに……」


 やまとの識字率は世界的に見てもトップクラス。

 決して全員が、という訳ではないけど、最低限は持つべきものだと判断されている。

 一部の国では教育に力を入れているところもあるくらい。


 因みにアングロ・サクソン連合王国の識字率は世界的に見たらマシな方。

 基本的に学は貴族が持つべき特権である同時に平民以下は持つべきではないと判断されていた。

 現在ではそういう考えは薄れつつある。


「なので、魔導工兵の教育機関も割と早めに全国に行き渡るように努めていますが、そもそも魔導工兵の人はそれほど多くないので増やすことができないのです。ただ、魔導を持つ者が現れると報告するよう伝えています」


 実際は魔導がどういうモノなのか分からないため、「不思議な力を持つ者が現れたら報告するように」と伝えている。


 伝えた後に帝からの勅命という形で近場の魔導工兵の教育機関に入学するようにと言われる。


「へぇ。ウチの国だと識字率が低くかったからすぐに魔導工兵になれる訳じゃなかったんだけど、今は改善しつつあるんだって。まぁ私は苦労した方だけど」


 元々識字率が低いのは平民には必要がないという認識があったからだけど、魔導工兵は規則があるからそれを覚える必要があり、さらに交渉事も任せられることもある。


 だから、識字率向上を努めているけど、そう簡単に上がらない。

 貴族の古臭い考えや個人のやる気と素質で現在は識字率が上がっていてもあまり上手い事はいっていない。


 ベレットに関して素質として覚えづらいだけ。


「うん?ベレット、ここで何してるんだい?」


 寮の前で話していると声を掛けられた。

 見るとそこには気品溢れる男性がいた。


「ミックじゃん!ミックこそどうしたのこんな時間に?」

「質問に質問で返して欲しい訳じゃないんだが……」


 この男性がどうやら煌夜の同居人になるミックという人らしい。


「うん、そうだよね。今、この子の案内をしてて」

「随分と変わった服装をしているみたいだが…」


 煌夜は和服を着ている。

 ここでは違った服装として目立っていた。

 ある意味外国人という認識にはなりやすい。


「そう言えば私の同居人に遠く離れた国から人がなるって聞いてたけどもしかして……」

「そうだよ!コウヤだよ!」

「ご紹介に上がりましたコウヤ・カラスマと言います」

「これは丁寧に。私はミック・メディシーアと申します」


 優雅な所作で挨拶をするミック。

 これが貴族というものだろう。


「ベレットとは違って礼儀正しくて良かったよ」

「ははは……、それほどでもないですよ…」

「あ!バカにした!」

「これは皮肉だよ」


 ミックが言うようにこれは皮肉。

 ここでは「礼儀正しく」という訳ではなく、「もっと落ち着いた行動を」という意味で言っている。


 因みに煌夜は皮肉だと分かって苦笑いをした。


「それでミックさんは?」

「うん?あー、そうだったね」


 煌夜は話を変えて、ミックの用事を聞く。


「召集だよ」

「召集?」

「もしかして大型?」

「詳細は聞いてないから、今から聞く感じになると思う」


 ミックは優秀故に多人数による討伐に駆り出されることがある。

 ベレットはそういうのを何回か見ているのでそう聞いたけど、そこまでは聞かされていないらしい。


「だから、済まないけど寮はベレットに任せるよ。不安しかないけど」

「もう、みんなして私をバカして」


 エイダの時もそうだけど、ベレットは不安しか持たれないような気がする。


「それではまた後で」

「はい」

「ふん!」


 ミックは総本部に入っていた。

 ベレットは顔を背けたけど。


「それじゃあ、私も行こう」


 ベレットは煌夜の手をまたもや取り、無理やり連れて行く。




 数分後、ベレットの案内は終わった。

 正直言ってエイダとミックの不安は的中していた。


 まず、1階。

 1階はロビーになっており、休憩場にもなっている。


 受付は外部からの訪問者が寮の者に取り次ぐ際と寮の者が外部の本部や支部に連絡したい場合に取り次いで貰うためにいる。


 休憩場は喫茶店と似ていて、お茶(紅茶やコーヒー)も良し、食事も良しで、打ち合わせの際に使われることもある。



 ここで軽食をするためにパンとスープを頼み、食べていたのだけど、ベレットの食事はとにかくうるさい。


 スープを掬う際にカランカランと皿にスプーンを当てる音、スープを飲む際のズルズル音。


 事前にこちらでの礼儀作法を覚えていた煌夜にとっては淑女としてどうなんだと思ってしまった。

 逆にベレットには煌夜の礼儀作法に驚いていたけど。


 食事を終えて2階に移動。


 2階と3階は男性寮、4階と5階は女性寮ということらしい。


 広めの廊下に左右に扉が並ぶ。

 煌夜とミックの部屋は3階で、チラッと部屋を見ると違和感ありまくりの間取りをしていた。


 少し広めの廊下の左右に玄関から下駄箱、トイレの扉、キッチン、リビング、奥に寝室の扉が2つ。

 簡単に言えば左右対称で同じ物が置かれていた。


 ベレットが言うには「魔導には色々あるから」ということらしいけど、煌夜にはその意味を分かっていた。


 魔導とは主に神を素とする力で、リィーズに対抗するためなのか、基本的に火を使う者が多い。

 そして、この魔導は人にも影響するということ。


 普通は発動しなければ魔導を使用することはできないけど、魔導によっては無意識のうちに発動してしまう場合や人体に影響する特性を持つこともある。

 ただ火が付くとかならそれほど問題ないけど、例えば火系統の熱を使う魔導がいるとしたら、常に熱を発することになり、室温や熱に耐えれる素材の家具の変更など対策を取る必要がある。

 対策をとった上で住み続けることが可能であれば良いのだけど、場合によって建物すら除外させる可能性もあったりする。


 とにかく分けているのはどんな魔導の人でもそれに対応した改築をするためにある。



 部屋にはミックの物とは別に煌夜が持ってきた荷物があった。

 事前に置いといてくれたのだろう。



 最後に4、5階の女性寮について。

 4階に来ると何故か受付があった。


 ベレットと(主に)受付の女性の話では男性と外部の者は受付の前までは来ることはできるけど、その先を進むには受付で手続きをする必要がある。


 階段を上がると受付があり、左側には壁と両扉になっている。

 扉はどういう仕様が分からないけど、寮の女性だけが開けれることなっていて、それ以外は開くことができない。


 受付でどの人がどの人を入れるのかを署名して貰い、一緒に入って貰う。

 外部の者は1階の受付にて身元確認をしているため、ここでの対応はそれだけ。


 もちろん、所在確認と問い合わせもしてくれる。


 それでここで問題になったのはベレットが自分の部屋に招待したいと言ってきたからだ。


 本人が許可しているなら問題ないように思えるけど、そもそも初対面ですることでもなさそうだし、2人部屋であるため、ベレットに同居人がいると言うから流石に少し経ってから方が良いと煌夜はベレットに言った。


 これには煌夜が遠く離れた国の人であるからいきなり会うべきではないと判断したのもあるけど、ベレット自体がその同居人にどのように説明して理解されているかも分からないというのもある。



 一先ず4階受付前で案内を終了。

 ベレットと別れ、煌夜は自室に戻り、荷物を整理することにした。


「ベレットさんって壁がないから最初驚いちゃったけど、正直助かるんだよね。この国でやまと人に会うことなんて難しいし、東洋人すらも難しいと思う。一応技術を学ぶために留学生が来てるらしいけど、会えるか分からないし」


 煌夜は魔導工兵になって初任務。

 その初任務が遠く離れた国で魔導工兵を学ぶこと。

 それがどれだけの重要かつ荷の重い任務、しかも帝から勅命。

 煌夜は平然としていたが、知らない土地に住むことや魔導工兵としてやっていけるかへの不安はあった。


 だけど、ベレットの存在がこれからやっていけるような気がした。


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