第3話 魔導工兵の現最強
煌夜はセントラルに着き、魔導工兵総本部に到着する。
「大きいですね」
「そうね。一応総本部だから」
目の前には5階建ての建物が建っている。
周りの建物よりも横幅が大きく、5階というのは周りの建物にも見られるため、それほど珍しくはない。
しかし、エイダの話では0の形になっていて、中央は修練場になっているらしい。
煌夜はエイダの案内の下、建物に入ってエイダが受付で話をして、階段を上がり、5階のある扉の前に止まる。
「情報課のエイダです。倭の国から来た魔導工兵の方をお連れしました」
「入れ」
中から低い女性の声がした。
エイダが扉を開け、エイダと一緒に中に入るとそこには初老の女性がいた。
「エイダ、しばらくそこで待機していろ」
「はい」
エイダはその人に言われて少し下がった。
「それじゃあ、自己紹介からだな。私はこの魔導工兵総本部の総長をしているエスラ・モナークと言う。よろしく頼む」
「自分は倭の国から来ました、コウヤ・カラスマと申します」
その人はどこかサバサバしていて、内務系の上司というより軍人の上官のような感じで、ある意味総長という名前の役職が合っているような気がする。
「今回お前を呼んだのは私の要請だ」
「え?我が国は魔導工兵の情報の関して徹底している。個人名までは…」
「あー、そういうことじゃない」
総長は頭を掻きながら、否定する。
「単純に若い奴を寄越してくれって言っただけだ」
「若い奴?」
「そうだ。歳を食うと頭が固くなるからな。若い方が学んでくれる」
「なるほど…」
総長はこちらの情報を知らないのだろう。
こちらは秘密主義だから情報が少ない。
そうなるとそれなりの実力者であればリィーズへの対処は普段と変わらない。
問題なのはアングロ・サクソン連合王国としての決まり事がある。
それを覚えるには歳高い者は難しい。
歳若い者なら頭が柔くて覚えやすいと思ったのだろう。
あとはもしかすると実力さえよければ引き込む可能性もあるかもしれない。
それは煌夜も帝も理解している。
それでもその務めを煌夜に任せた。
この辺は倭の内情の話になるけど、内部の国によっては魔導工兵の育成機関が存在し、その国の特色が根付きやすい。
その点、煌夜は朝廷管轄の育成機関の出身で、卒業後が帝直属部隊になるのは決定事項。
ただ、帝から命令は「他国の魔導工兵について学んでくるといい」と言われただけだから、利害は成立している。
一応何も問題はない。
「それでだ。ウチの国にも規則がある訳だが、それについては追々学んでいけばいい」
「はい、分かりました」
アングロ・サクソン連合王国に限らず、倭にも他の国も規則は存在する。
それをこれから煌夜は従わないといけない。
その辺についてはやっていけば自ずと学んでいくだろう。
「早速で悪いが、現場に行って現場にいる魔導工兵の指導を受けてきてくれ。案内は引き続きエイダが行え」
「了解致しました」
そう言われてエイダは「失礼します」と言い、総長に一礼。
さらに煌夜に「行きましょうか」と言う。
煌夜も総長に「失礼します」と一礼をして、2人はその部屋から出る。
「どうでした?総長は?」
「トップに似合っているような似合っていないような感じですかね。サバサバしててちょっと驚きましたけど…」
「そうですね。でも、性格だけですよ。仕事はきっちりしてますし、魔導工兵としての実力も折り紙付き、何故なら国内の魔導工兵の中だとトップなのは事実ですから。ただ、現場というか実戦向き過ぎて魔導工兵の「工」の部分が疎かになることも多々あったという話です」
煌夜の偏見になるけど、魔導工兵のトップと言っても貴族気質な人だと思っていたからである。
実際はそんなことはなくて、そもそも現場好きというより実戦好きというのが事実で、総長という立場も実力者トップという実績によってそうなったもの。
まぁ今は少し落ち着き、総長としての仕事もしっかりとやるようになっていた。
昔は若気の至りという奴なのだろう。
もしかしたら元々はもっとイケイケだったのが落ち着いて今のサバサバした性格になったのかもしれないけど。